慢性低ナトリウム血症への積極的介入を(第21回日本病態栄養学会の話題から)
2018.02.05
慢性低ナトリウム血症への積極的介入を
第21回日本病態栄養学会の話題から
山田祐一郎会長 |
慢性低Na血症から骨粗鬆症,歩行障害,認知機能障害に
電解質異常症で最も頻度が高いのは低ナトリウム(Na)血症である。従来,急性低Na血症の場合は中枢神経症状を呈し重症化すれば死に至るため積極的な介入をするのに対し,慢性低Na血症の場合は治療介入せずに経過観察とされることも多かった。しかし近年になり,無症状あるいは症状が比較的軽度の慢性低Na血症の場合であっても,転倒・骨折やQOL低下,生命予後の悪化につながることが明らかにされつつある。
椙村氏らの研究グループは,米国50歳以上のデータのクロスセクション解析の結果,軽度低Na血症群では,Na正常群と比べ骨粗鬆症のリスクが有意に高くなることを報告(J Bone Miner Res. 2010[PMID:19751154])。本解析は肥満度・運動度や利尿薬の有無,血清25(OH)D濃度などで補正されており,無症候性と考えられる軽度な低Na血症が骨粗鬆症を引き起こすことが認められた。この論文は引用回数が既に260回を超えており,Na代謝と骨粗鬆症との関連を示す研究が進展している。
さらに椙村氏らは,SIADH(バゾプレシン分泌過剰症)モデルのラットを用いて,慢性低Na血症の歩行・行動への影響を検討。急性/慢性を問わず,低Na血症は中枢神経系に影響しており,歩行障害や認知機能障害につながる可能性が示唆された(J Am Soc Nephrol. 2016[PMID:26376860])。
低Na血症および転倒・骨折・骨粗鬆症といったイベントは,いずれも高齢者において頻度が高い。このことから椙村氏は「超高齢社会を迎える日本においてますます重要な問題となる」と訴え,低Na血症への積極的介入を呼び掛けた。
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