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第3196号 2016年10月24日


Medical Library 書評・新刊案内


産み育てと助産の歴史
近代化の200年をふり返る

白井 千晶 編著
岩田 重則,大出 春江,小川 景子,河合 蘭,菊地 栄,沢山 美果子,鈴井 江三子,鈴木 由利子,田間 泰子,中山 まき子,伏見 裕子,松岡 悦子,村田 泰子 執筆

《評 者》大橋 一友(阪大大学院教授・保健学)

妊娠・出産という現象を俯瞰した一冊

 妊娠・出産は生命の再生産(リプロダクション)に直結する普遍の営みであるが,医学や助産学だけで解決する問題ではなく,習俗,伝統,社会制度などの社会的要因から大きな影響を受けている。本書の執筆者の研究領域のキーワードを列記すると,社会学,女性学,民俗学,文化人類学,歴史学,助産学など多岐にわたっており,妊娠・出産という現象を俯瞰した素晴らしい内容になっている。

 現在の妊娠・出産に対する考え方は先人の苦労の中から確立してきたものであり,研究者のみならず,出産や分娩に携わる方や興味がある方々には,本書が紹介している「助産の歴史」(第1部から第3部)をご一読いただきたい。新しく生まれる生命に対する価値観は時代によって異なり,社会体制の変化によって妊娠・出産・育児という事象がどのように変化してきたかを,詳細かつ平易に紹介している。

 第1部では今から200年前を振り返った江戸末期のお産事情が紹介されており,国家が妊娠・出産に関与しなかった時代の様子が興味深く描かれている。

 第2部では明治から昭和初期の産婆の歴史が描かれている。国家が掲げる近代化という旗印のもと,さまざまな人物が産婆という職業の確立に尽力し,同時に産婆がどのように活躍したかが描かれている。

 第3部は第二次世界大戦終了後の大きな社会体制の変革の中での妊娠・出産への価値観を,出産を支える医療従事者の視点だけでなく,妊娠・出産の当事者である女性の価値観の変化に踏み込んだ内容となっている。

 最終部の第4部では現代の妊娠・出産にかかわる社会的な問題点をまとめており,今後妊娠・出産を考える上での,示唆に富む内容が編集されている。

 本書で特筆すべきことは充実したコラムである。14のコラムが本文中の各章の間に絶妙に配置されている。それらは,当代の第一人者によって書かれている素晴らしい内容であり,評者もたくさんの知見を学習させていただいた。私は途上国での安全な出産に関する仕事のお手伝いをしているが,本書から得られた知見は今後の自分の活動にとって意義深いものであると確信している。

 本書は助産師や助産師をめざす学生だけでなく,女性としての基本的な教養として全ての女性に読んでいただくことが望ましい。また,本書の著者には男性が1人しか加わっていないが,妊娠や育児のもうひとりの当事者である男性(出産にも当事者意識は持っていただきたい)の視点から見た次回作を期待したい。

A5・頁320 定価:本体2,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02482-2


がん化学療法 レジメン管理マニュアル 第2版

濱 敏弘 監修
青山 剛,東 加奈子,池末 裕明,川上 和宜,佐藤 淳也,橋本 浩伸 編

《評 者》飯野 京子(国立看護大教授・成人看護学)

がん化学療法看護の臨床においても必須の書

 本書は,がん医療において最前線で活躍している薬剤師による,エビデンスに基づいたコンパクトながん化学療法の解説書です。著者らが検討を重ね頻度の高い標準レジメンについて,①支持療法を含む投与スケジュール,②処方鑑査とエビデンスに基づく減量・中止基準,③投与時の注意点,④副作用マネジメント,⑤薬学的ケアの実践例について専門的な内容を簡潔にまとめています(p.vi参照)。

 がん化学療法において,多くの薬は最終的に看護師が投与管理を担っていますが,この分野は新薬の開発が著しいために新たな投与管理,副作用マネジメントを実践するには,常に新しい知識や技術を獲得しようとする不断の努力が必要となってきています。そんなときに,ポケットサイズの本書は持ち歩き可能で,使いやすいサイズとなっています。

 特に,レジメンごとに支持療法を含む薬の投与の方法,順番,投与時間,副作用の発現時期と対策が一覧表になっているページは投与管理において重要な情報がコンパクトに整理されており,看護師にとって有用な部分であると思います。

 薬の確実・安全な投与管理のためには,看護師は投与前に正しい患者(Right Patient),正しい薬(Right Drug),正しい目的(Right Purpose),正しい用量(Right Dose),正しい用法/経路(Right Route),正しい投与時間(Right Time)の「6R」を確認することが推奨されています。これは看護師が,がん化学療法を受ける患者と治療を十分に理解しながらの「6R」でなければなりません。本書では,「抗がん薬の処方鑑査」の項目があり,安全に薬を用いるための必須ポイントである慎重投与の対象患者,減量基準など,薬理学的な視点で「6R」を確認するための知識が網羅されています。

 さらに,レジメンごとに実践例が掲載されています。薬剤師の視点で紹介されている実践例ですが,患者の副作用のアセスメント,アドヒアランスを高めるための指導,生活指導など看護ケアに薬理学的な視点をプラスするためのわかりやすい事例となっています。

 本書をひもとくと,チームにおいてどのような視点で薬剤師から情報を得るのか,薬剤師に何を情報提供すればより安全・確実な治療がもたらされるのか具体的に記述されています。

 がん化学療法看護の臨床においても必須の書であると感じました。

B6変型・頁506 定価:本体3,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02536-2

関連書
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