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HOME週刊医学界新聞 > 第3181号 2016年07月04日



第3181号 2016年7月4日


Medical Library 書評・新刊案内


臨床研究の教科書
研究デザインとデータ処理のポイント

川村 孝 著

《評 者》村川 裕二(帝京大主任教授代行・循環器内科学)

作法は初心者のうちに学ぶべし

 今どきの〈愛想の良い本〉ではない。

 〈臨床研究をなぜやるか,どうやるか,ロジックは,統計処理は〉などを1 cmの厚さにまとめてある。

 論文を10本書いた人が本書を開けば,自分の研究計画がずさんだったとか,もっと理を詰めるべきだったなど思い至ることもあるかもしれぬ。しかし,多少でも研究の道を歩いてきたなら,自分の流儀が出来上がっていて,いまさらイチから習う気にはならぬもの。下手なゴルフを20年続けてきたのに,30回のレッスンを受けるために駅前のスクールに通う人は少ない。

 このテキストは研究の入り口か,そこをちょっと過ぎたあたりの読者に薦めたい。例えば,研究室の上司から「こんな研究を考えたらどうか」と〈おおざっぱな言葉〉で,〈それほど煮詰めてもないテーマ〉を提案された若手が購入すべきである。

 このテキストはテーマを与えた上司にとっても研究の成り立ちを手取り足取り教えなくて済むので,手間が省けるメリットがある。

 第1部は「研究の立案」,第2部は「研究の運営」,第3部は「データの整理と解析」。

 第1部で臨床研究とは何か,おぼろげに理解できてくる。何かの薬とプラセボをダブルブラインドで比較すれば一丁上がりだと思っている若者も「それなりに深い」と思うだろう。

 第3部は〈統計解析の本を一冊読むのはつらいから,このくらい理解したらどうか〉ということらしい。統計処理の個々のものを詳しく論じるのではなく,その性格がどんなものかヒントを与えている。

 第4部は論文の作法。brief and to the point。味がある。しぶい。

 第5部は具体的な研究の経過やその後を述べている。この第5部が一番おもしろい。Rejectされて別なジャーナルに送った経緯や,「肩こりに対する鍼治療の有効性」の研究で〈何がどうしてどうなった〉と,詳しく語られている。見たことがない趣である。

 「ぴったりタイミングが合えば,ぴったりくるテキストである」が書評子としての結論である。そこまで成長していない人や,もう出来上がった人には向いていない。作法は初心者のうちに学ぶべし。

 最初に手に取ったとき,表紙の色やデザインが医学書院らしくないなと感じたが,内容は装丁がどうであろうと関係がない本だ。

B5・頁248 定価:本体4,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02497-6


薬剤師レジデントの鉄則

橋田 亨,西岡 弘晶 編

《評 者》古川 裕之(山口大大学院教授・山口大病院薬剤部長/臨床研究センター長)

新人だけでなく病棟で活躍している全ての薬剤師へ

 当院に2013年から3年続けて,毎年7人のフレッシュ薬剤師が就職してきた。全員が,6年制薬学教育を終えた人たち。今年度の5人を加えると,本院の薬剤師のほぼ半数が,経験年数3年以下という状態である。

 多くのフレッシュ薬剤師を効率よく育て上げるにはどうしたらよいかと考え,副部長を中心とした教育ワーキンググループを立ち上げ,新人教育プログラムを作成した。その中で,『薬剤師レジデントマニュアル』(医学書院,2013)の活用が提案され,新人薬剤師一人ひとりに一冊ずつ用意することになった。われわれは,「あるものは活用する。ないものは作る」という姿勢を基本にしている。

 今年2月,本書編者の橋田亨先生(神戸市立医療センター中央市民病院院長補佐/薬剤部長)にお会いしたとき,「改訂版の予定はありますか?」とお尋ねしたところ,にっこり笑う橋田先生から予想していなかった答えが返ってきた。それが,手元にある『薬剤師レジデントの鉄則』である。「なるほど,こういう形できたか……」と驚いた。

 本書は,白衣のポケットに入る『薬剤師レジデントマニュアル』とは異なり,B5判という大きなもの。その表紙の帯には,「臨床の薬学的課題を解決する『実践力』を身につける!」と大きく書かれている。“課題を解決”と“実践力”というキーワードがぴたっと評者の好みに合った。

 ページを開いてみた。例えば,感染症関係の章。いきなり,「鉄則」が書かれた青色地の長方形が目の中に飛び込んできた。これは,エビデンスに基づいた薬物療法を実践するためのこつを新人薬剤師向けにまとめたもの。まず重要なポイントを知り,それから本文に入るという方法は,学習効果が大きいと思う。

 続いて,Q&A方式で本文が始まる。エビデンスとなるガイドラインや論文の紹介や図表と写真も数多く掲載されている。そして,「最終チェック」で締めくくる。全体的に見て,文字だけが続くのではなく,図表が多いので圧迫感がない。実によく練られた構成である。「さすが……」と,感心した。

 本書は,新人薬剤師だけでなく,病棟で活躍している全ての薬剤師にとっても知識の更新,また専門領域以外の知識習得に役立つと思う。本院のスタッフ用に何冊か準備しなくてはならない。

 表紙の帯の最後には,「『薬剤師レジデントマニュアル』と併せて読みたい!」と,しっかり書かれている。まったくその通りなので,ぜひ,こちらの改訂もお願いしたい。執筆される皆さんには大変なご負担をお掛けすることになりますが……。

B5・頁292 定価:本体3,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02410-5


《眼科臨床エキスパート》
角結膜疾患の治療戦略
薬物治療と手術の最前線

吉村 長久,後藤 浩,谷原 秀信 シリーズ編集
島﨑 潤 編

《評 者》雑賀 司珠也(和歌山医大教授・眼科学)

日常診療の中の疑問に即座に,かつわかりやすく答えてくれる一冊

 医学書院から《眼科臨床エキスパートシリーズ》に『角結膜疾患の治療戦略――薬物治療と手術の最前線』が加わりました。編集ご担当は日本角膜学会理事長の島﨑潤教授(東京歯科大学市川総合病院)です。手に取ると厚さ2 cmで索引を入れると本文405ページから成るちょっと厚い教科書ですが,ひとたびページをめくると,検査法や疾患ごとに細かく段落が分かれているので,目次を見て関係するページを開くことで,日常診療の中の疑問に即座に,かつわかりやすく答えてくれる構成となっています。それぞれの項目も長文ではなく豊富に図を交え,細分化された項目構成なので,詳細な内容であるものの,多忙な中で効率よく読むことに適していると思います。さらに疾患のページの前に,それぞれに検査法に関する項目別の記載があり,眼科コメディカルの皆さまにも有益な情報が盛り込まれています。

 一方,角膜・眼表面を専門とする眼科医や角結膜専門医をめざす若手にとっては,日々の業務の合間を縫って通読することで,知識・経験の整理や新たな知識の習得に役立つことが大いに期待できる一冊でしょう。

 各項目の執筆者はどなたも角膜・眼表面を専門にして最前線で活躍する旬の眼科医です。私が角膜学会・角膜移植学会(いわゆる角膜カンファレンス)などでいつもお会いする先生ばかりで,執筆者の人選は,この学会で中心的な役割をしておられる島﨑教授ならではと思います。角膜学会・角膜移植学会の皆さまは指導層の教授陣と若手の眼科医の極めてフレンドリーな関係の中,国内外の学会などで頻繁に顔を合わせて昼夜を問わず意見交換を行っています。そのため,本書が項目ごとに各執筆者の所属施設が異なるにもかかわらず,施設独自の記載が見られず,スタンダードな記載とアップデートな側面が両立できているのがセールスポイントと思います。また,本に記載されているパスワードでウェブ上の手技動画を閲覧できることも大きなメリットです。

 角膜・眼表面の臨床についての成書は数多くあります。しかし,検査,結膜疾患,角膜疾患という読みやすい三領域の構成で,それぞれも項目ごとに分かれた,しかも,最前線で活躍の眼科医によるスタンダードとアップデートとのバランスの取れた記載ということで,本書は,若手,眼科専門医を問わず,ぜひ手の届く所に置いておきたい一冊だと思います。

B5・頁424 定価:本体17,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02504-1


脳卒中の下肢装具 第3版
病態に対応した装具の選択法

渡邉 英夫,平山 史朗,藤﨑 拡憲 著

《評 者》長倉 裕二(熊本保健科学大教授・理学療法学)

オールカラーになり,さらに臨床に沿った内容に

 『脳卒中治療ガイドライン2015』の歩行障害のリハビリテーションにおいて,「内反尖足がある患者に対して歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(グレードB)」として推奨されている。

 また,「歩行や歩行に関連する下肢訓練の量を多くすることは,歩行能力の改善のために強く勧められる(グレードA)」という推奨もあり,脳卒中のリハビリテーションにおいて歩行訓練は不可欠なものとなっている。

 さらに,日本理学療法士学会から出版されている『理学療法診療ガイドライン2011』において装具療法は推奨グレードA/エビデンスレベル2とされ,FIM得点の向上,歩行速度の向上やエネルギー消費の減少,転倒予防に効果があるとされている。いずれも推奨グレードが高いことから,脳卒中片麻痺の歩行再建やリハビリテーションの中で装具療法は大きな位置付けとなっていることがわかる。

 しかし装具療法の担い手となる理学療法士の卒前教育の中で,装具療法に関する内容は教科書を見る限り,昔から使用されている両側支柱型のダブルクレンザックタイプや後方支柱型靴べら式短下肢装具などがいまだ代表格として掲載され,比較的わかりやすく解説されているものの,新しい材料や部品など日々開発されている装具に関しては,臨床場面で試してみないとわからないというのが現状である。そしてこれらの情報が不十分なために,新しい装具作製に躊躇することもしばしばである。

 本書『脳卒中の下肢装具』はこれらの問題に対し,初版から第2版へと具体的な個々の装具を挙げ,その適応や機能,特徴などをわかりやすく解説してきた。今回の第3版は,これに加えさらに臨床に沿った内容となっている。そして今回,2人の理学療法士が著者となっていることにより,理学療法介入へより具体的な方法が提示され,装具選択の一助になることが期待される。

 第2版から変わったところでわかりやすいのはオールカラーになったことであり,これによって装具そのものがイメージしやすくなった。この分野においては言葉で装具を表現されるよりも画像そのものを見たほうがよりわかりやすく,臨床場面では片麻痺患者に写真を提示できることによって,装具装着のイメージや生活の場面でのイメージも付きやすくなると考える。また新しく開発され,臨床での利用価値も高い装具も多く紹介されている。このように日々変わっていく装具材料や部品,機能などを新しくしていくことで多様化する片麻痺患者のニーズにも応えられるものだと考える。

 そして今回,理学療法士に対するアンケート調査を基にしたQ&Aである第24章「脳卒中歩行訓練と装具の選定・適応に関する理学療法士の質問」はガイドラインなどで用いられるクリニカルクエスチョンに対応するもので,特に臨床における問題に対する具体的な対応策や考え方などを知ることができる。理学療法介入場面では患者への装具作製前の装着による利点や問題点を説明する道具として,装具装着時に起こるさまざまな問題に対する解決の糸口となるであろう。

 初版ではCDを添付することも検討されていたようであるが,できれば装着時の画像に加えて動画などで説明が加わるとさらに利用価値が高まるものと考え,今後に期待したい。

A5・頁208 定価:本体4,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02488-4


皮膚がんバリエーションアトラス

田中 勝,安齋 眞一 編

《評 者》常深 祐一郎(東女医大准教授・皮膚科学)

暗黙知を身につけるために

 見たことのないアトラスが出版された。アトラスといえばさまざまな疾患の画像が収められているものというのが私の常識であった。頻度の高い疾患からあまりお目にかからない疾患まで広く網羅されているものである。それがこの『皮膚がんバリエーションアトラス』では,なんと基底細胞癌と有棘細胞癌,悪性黒色腫という三つの皮膚癌で全紙面の7割を占めているのである。基底細胞癌に95ページ,有棘細胞癌に70ページ,悪性黒色腫に71ページが費やされている。尋常ではない。

 どのようにしてこれだけのページ数が埋められているかというと,そこがバリエーションである。同じ疾患の膨大な数の症例写真が集められているのである。

 実臨床では,同じ疾患といっても,一つとしてまったく同じ臨床像はない。バリエーションそのものである。よって,皮膚科医は多くの症例を日々見続けて初めて実臨床で通用するようになる。経験がものを言うゆえんである。このアトラスには極めて多くのバリエーションが濃縮して詰まっている。本来なら何年もの期間を要するところを,短期間で効率よく経験してしまおうというのがこのアトラスの狙いであろう。臨床像とダーモスコピー像の写真が対になって提示され,簡潔な所見が添えられている。文字が少ないのでどんどん見ていくことができる。

 これは調べ物に使うアトラスではなく,読み通すアトラスである。そして怒濤の症例写真を読み進めているうちに気が付いたことがある。バリエーションを見ているはずなのに,極めて多くの症例を浴びていると,その中に共通する本質が見えて来るのである。文章でいくら説明されてもわからないひらめきのようなものが頭の中に形成されていく。言葉で説明するのは難しいが,画像を見た瞬間それが何なのか「わかる」のである。考える前に答えが出てくる,答えを思いついてからその理由を考える。これを暗黙知という。ベテラン皮膚科医はそのように診断している。

 皮膚科学は形態学である。本書の「序」にもそのように書かれているし,私も他誌で何度かそのように述べたことがある。形態学の神髄は暗黙知である。そこに至るためには,たくさん見るしかない。文字ではなく形態を見なければならない。百聞は一見にしかず,である。それを体現した究極のアトラスが本書である。ぜひ手に取ってバリエーションのシャワーを浴びていただきたい。そしてベテラン皮膚科医の眼力を手に入れてもらいたい。

A4・頁384 定価:本体15,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02472-3

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