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第3109号 2015年1月19日


Medical Library 書評・新刊案内


運動療法の「なぜ?」がわかる超音波解剖
[Web動画付]

工藤 慎太郎 編著

《評 者》福井 勉(文京学院大大学院教授・理学療法学)

超音波画像で身体内部の動きを探り,理解を深める

 本書は,好評であった『運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学』(医学書院,2012年)の続編ともいうべき書籍である。本書の第一の特徴は超音波画像で身体内部の動きを探りながら,理解を深めようとするものである。近年の運動器分野において,超音波画像は非侵襲性と手軽さもあり徐々に重要な位置を占めてきていると考えられるが,著者のさまざまな読影上の工夫によって解剖学を深く理解し,さらに運動療法へ展開する試みである。実際の超音波画像は医学書院のウェブサイトから参照できる形になっている。頸椎症,片麻痺の肩関節痛,投球障害肩,テニス肘,肘関節脱臼,橈骨遠位端骨折,腰痛,片麻痺,変形性股関節症,ハムストリングスの肉ばなれ,膝蓋大腿関節症,変形性膝関節症,アキレス腱損傷,シンスプリントと多種類の疾患についてのポイントを供覧しながら,解剖学のポイントの記載がされている。

 さらに著者は運動療法の意味を超音波画像を通じて行うことで,頭で考えていたイメージとの違いについても記載が多くなされている。以前と比較して超音波画像を診療時間内に参照している理学療法士は増加していると考えられる。しかしながら,それを実際の臨床活動に活用可能な理学療法士はまだ限られていると考えられる。すなわち,多くの先駆者は試行錯誤をしながら有益性を得るまでに多くの時間を割いてきたことは間違いない。解剖学を構造としての視点からだけではなく,機能的観点へ広げることが,本書の大きな目的であろうし,また理学療法士のアドバンテージとなり得ると思うと本書の果たす役割は大きい。本書はデータを視覚的に得ることで,先駆者の得た情報を得るまでの時間を短縮可能とする貢献度が大きい。逆にそのプロセスをつかむための自学自習の題材として役立つと思われる。つまりはトレーニング書としての利用である。

 また特筆すべきことは,本書のイラストである。イラストと超音波画像の調和が素晴らしく,読者を引きつける魅力がある。本書のイラストは,超音波画像の理解を深めるとともに疾患の理解そのものにも寄与する。

 疾患ごとのページには限りがあるため,運動療法そのものの記述はストレッチングが多い。この辺りは,改版を期待して今後の著者の運動療法への展開を期待したい。読者は本書を実践的に使用しながら自らの創造性につなげていただきたい。そういう意味で読者自身にも新しい展開を予感させる良書である。

B5・頁224 定価:本体4,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02031-2


緩和ケアエッセンシャルドラッグ 第3版

恒藤 暁,岡本 禎晃 著

《評 者》加賀谷 肇(明治薬科大教授・臨床薬剤学)

緩和ケア実践の近道といえる全スタッフ必携の書

 わが国の緩和医療を牽引してきた医師の恒藤暁先生と,緩和薬物療法認定薬剤師第一号である岡本禎晃先生による待望の新版が上梓された。

 著者たちは症状マネジメントが緩和ケアの出発点というコンセプトの下,症状マネジメントの必須薬をこの本に集約している。すなわち本書を習得することが緩和ケア実践の近道ということができる。

 改訂ごとに分厚くなっていく書籍が多い中,第3改訂にもかかわらず従来のコンパクトなスリムボディーが変わらないことには敬意を表したい。

 評者は2008年の初版本をグリーンブック,2011年の第2版はオレンジブックとして愛用してきた。このたびの第3版は装丁がブルーに変わったのでブルーブックと呼称を変更しようと考えている。

 さて,今回の改訂で気付いたことを以下に列記してみたい。

・がんの症状マネジメントと緩和ケア薬剤情報を機能的にまとめたクイックリファレンスがこれまでと同様にとても使い勝手がよい。
・IV章「症状マネジメントの概説」は緩和医療関連ガイドラインの改訂に伴って大幅にアップデートされ,20項目に増加された。
・V章「エッセンシャルドラッグ」もアップデートされ,最新の薬剤を含め9製剤(アセトアミノフェン注射剤・オキシコドン注射剤・タペンタドール・フェンタニルバッカル錠・フェンタニル舌下錠・メサドン・デノスマブ・エスシタロプラム・セルトラリン)が新規に追加された。

 緩和ケアに携わる医師の処方設計,薬剤師の処方支援,看護師の症状マネジメントなどについて,簡潔で,わかりやすく,見やすい本書が威力を発揮することは間違いない。また,これから緩和ケアにかかわる医学生,薬学生,看護学生には臨床での必携の書としてお薦めしたい。

三五変型・頁334 定価:本体2,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02023-7


神経症状の診かた・考えかた
General Neurologyのすすめ

福武 敏夫 著

《評 者》河村 満(昭和大教授・神経内科学/附属東病院病院長)

ユニークな内容で広く長く読まれるべき一冊

 福武敏夫先生ご執筆の『神経症状の診かた・考えかた――General Neurologyのすすめ』が出版されました。福武先生でなくては書くことができないユニークな内容です。神経内科医であれば初心者から上級医まで,広い範囲の先生方に太鼓判を押してお薦めできます。一般内科の先生方や,リハビリテーション医,メディカル・スタッフにも有益な本であると思います。本来難しいことがわかりやすく表現されているのがこの本の最も大きな特徴です。

 全体は3つの部分から構成されています。すなわち,第I編「日常診療で遭遇する患者」,第II編「緊急処置が必要な患者」,第III編「神経診察のポイントと画像診断のピットフォール」からなっており,第I編の第7章はなんと「『奇妙』な症状」とされています。その前の第6章は,神経内科医があまり得意ではない「精神症状,高次脳機能障害」です。第I編の第1章・2章・3章が,「頭痛」「めまい」「しびれ」で,いわゆるコモン・ディジーズであり,この本では奇妙な症状もコモンな病態も同等に扱われて,平等に並んでいるのです。第II編の第3章は「急性球麻痺」そして第4章が「急性四肢麻痺」であり,その組み立ての特異さが際立っています。さらに,それぞれの章に多くの具体的症例が,病歴・診察内容・検査や診断の過程とともに掲載されていて,わかりやすい読み物をめざして執筆された著者の気持ちが伝わってきます。

 ごく最近,昭和大神経内科のカンファレンスで,カタレプシーを呈し,緊張病(カタトニア)症候群が疑われましたが,辺縁系脳炎も否定できない問題症例が提示されました。受け持ちグループは,内外の最新文献を読み,よく消化して解説してくれました。しかし,「カタレプシー」「緊張病症候群」の定義や実際の症候内容は本来なかなか難しい点があり,カンファレンスはさらに簡潔な解説が欲しい,という雰囲気になりました。私は本書評を書くために,偶然この本を持っていました。もしかしたら書かれているかもしれないと思い,ページをめくると,右頭頂葉皮質下出血の急性期にみられた左上肢のカタレプシー症例の診察風景と頭部CT所見がちゃんと掲載され,平易に解説されていました(p. 205)。 緊張病症候群を来す神経疾患も表できちんと示されており(p. 206),この中に辺縁系脳炎が確かに含まれていました。カンファレンスの最後,受け持ちグループの「考察」が述べられた後に,この本を紹介し,皆で回し読みして,私自身だけではなく医局員全員の理解が進みました。私たちの教室では,とても役に立つ本として,この本が認識されています。

 福武先生と私は,千葉大神経内科で10年以上ご一緒しました。当時の教授は平山惠造先生で,私たちは平山先生に直接ご指導いただき,大きな影響を受けました。序文を読むと,福武先生はご自身の診療態度を名探偵シャーロック・ホームズの観察や推理と同様である,と考えていることがわかります。平山先生から神経症候学の神髄を伝授され,ホームズを意識して神経疾患を持つ患者さんの症状・病態に向き合われて,独自の診かた・考えかたを開拓なさった福武先生が一人でつくったこの本は,広く読まれ,長く残るに違いない,と私は考えております。

B5・頁360 定価:本体5,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01941-5


臨床医のための小児精神医療入門

日本精神神経学会 小児精神医療委員会 監修
齊藤 万比古,小平 雅基 編

《評 者》八木 淳子(岩手医大講師・神経精神科学/いわてこどもケアセンター副センター長)

子どもの心の診療の道標として

 時代の要請から子どもの心の診療に関心を抱く精神科医,小児科医は少なくない。さらには子どもの精神保健福祉,教育,司法などの分野にかかわるあらゆる専門職,支援者にも,児童精神医学と子どもの心の診療についての基礎知識と専門性を求められる機会が増してきている。

 しかし,日常業務に忙殺される臨床医にとって,児童精神科医療を学ぶことの重要性を理解してはいても,教科書を通読するには時間がかかりすぎ,地方では研修の機会すら得難い。現実には日々目の前の臨床に追われるうちに,どこから手を付けたらよいのか迷いながら,なんとなく苦手な領域として残ってしまうのが,子どもの心の診療に関する分野ではないだろうか。

 本書の編著者であり現代日本を代表する児童精神科医の一人である齊藤万比古氏は,子どもの心の躓き(精神障害)を,生物学的・心理的・社会(環境)的要因が均衡を保つことで成り立っている子どもの「自己システム」が,その平衡を保てなくなったときに引き起こされるものとしてとらえ,包括的な支援の大切さを一貫して強調されてきた。東日本大震災後に設立された児童精神科医療施設「いわてこどもケアセンター」(岩手医大)の開設記念講演においても,児童精神科医療の役割は,心の病気を改善するための手助けをし,環境を整え,学校(社会)と子どもをつなぎ,これらをまとめ上げながら熟成の時を待つことであり,子ども自身の成長を愚直なまでに見守り,付き合い続ける包括的・総合的な営みが大切であると説いておられた。本書中でも齊藤氏が提案する「三次元的な治療構造」は,東日本大震災で被災し,傷ついた子どもたちの長い長い心の復興の道のりを,共に歩み,見守り支え続けることにも相通ずる臨床哲学である。

 このような基本理念を背景として齊藤氏らが本書で提示するのは,子どもの心の診療に取り組む上で欠かすことのできない,臨床的専門性獲得のためのエッセンスである。総論では子どもの精神・神経発達,母子関係,エビデンスに基づく治療など基本的概念が示され,各論では児童青年期に見いだされる諸精神疾患の各病態がその分野のエキスパートによってコンパクトにわかりやすく解説されている。さらに,疾患概念ではとらえられない,虐待や不登校などの子どもの心の問題に特有の現象や,検査や診立てのためのケースフォーミュレーション,各種治療介入技法の解説,今後期待される新たな治療技法の紹介なども加わり,児童精神医学と子どもの心の臨床を取り巻く技術的側面が具体的かつ広範囲に網羅されている。各項目は理解度を自己点検するためのチェックリストを含み,めざすレベルに合わせた研修の達成目標が段階的に明示され,各治療技法の推奨の度合いも示される。項目ごとに文献や推薦図書が記載されていることも,より深い学びへの助けになる。初学者には研修のための道標に,児童精神科を専門分野とする医師にとっては自己の習熟度を点検しつつ,指導者としてなすべきことの指針となる。本書は子どもの心の診療にかかわるすべての人にとって,有用で実際的な示唆を与えてくれる貴重な手引書である。

B5・頁240 定価:本体3,600円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01906-4

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