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第2955号 2011年11月28日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


介助にいかすバイオメカニクス

勝平 純司,山本 澄子,江原 義弘,櫻井 愛子,関川 伸哉 著

《評 者》市川 洌(福祉技術研究所代表)

人の動きを力学的に把握することにより,合理的な介助方法を考える

 人の動きを介助するということはとても難しい。介助の原則は,「自分でできることは自分でする」である。ところが,実際に介助支援の現場などで見ていると,本人がある動作を「できない」と見ると,介助者は直ちにすべてを介助してしまう。

 「何かができない」という事象に遭遇したとき,介助の原則で考えるなら,なぜできないかを考え,できない部分を福祉用具あるいは人手で補完することによってできるようにする,というのが原則である。ベッドからの立ち上がりなら,足を引き,体幹を前傾させ,ベッドを高くし,ベッド柵を利用して立ち上がる。これでも困難な場合には介助者が重心を前方に誘導したり,場合によって手を引いたり,という介助をする。一人一人の動きをアセスメントした結果に基づいて,必要な支援を行い,不要な支援は行わない。

 このような支援を行うためには,人の動作を科学的に把握することが必須である。障害のある人の動きを運動学的に,力学的に(すなわち,バイオメカニクス的に)把握することによって,客観性を伴った介助の方法が確立される。

 本書は,人の動きをバイオメカニクス的に把握することによって,合理的な介助の方法を考えようとするものである。介助にかかわるものであれば,必須のバックグラウンドであると考えられるが,力学的な考え方が苦手な人は多い。本書はこの力学的な考え方をわかりやすく記述して,理解を促している。力学的な説明が丁寧なことと,実際の人の動きに即して説明しているので,福祉系・医療系の方々にとって,わかりやすいものになっている。

 このバイオメカニクス的に把握した人の動きに基づいて,具体的に介助の方法はどのようにすべきかに関しても丁寧に記述されている。立ち上がりから,歩行,階段昇降など日常的に実行される具体的な動作に関して解説している。もとより,介助の方法は単数ではなく,人の状態に応じて,多数の介助方法が必要であり,単純に方法を覚えようとすると大変な作業になる。しかし,人の動きの原理(バイオメカニクス)が理解できていれば,一人一人の状況に応じて適切な方法を考えることはたやすいことである。ともすれば方法だけを考え,教えがちな介助の現場に対して,原理を考えることによって,合理的・科学的で適切な介助が可能となることを本書は教えてくれる。これまでこのような成書がなかったということが,わが国の介助技術の現状を示しているともいえよう。

 同様に,車いすなどの福祉用具の適合においても,人の動きを理解し,人と福祉用具のバイオメカニクス的な把握なくして適切な適合はあり得ないといえよう。これまでとかく感覚的に議論されてきた福祉用具の適合に関して,客観的な根拠を考えることの必要性を本書は示している。

 なお,本書の著者たちは今更言うまでもなく,歩行を中心とした動作解析に関しては国内だけではなく,国際的にも第一人者であり,パイオニアでもある。これらの知見が具体的な介助の領域に応用されてきたということは,すばらしい展開であるといえよう。

B5・頁216 定価4,095円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01223-2


消化器外科のエビデンス
気になる30誌から 第2版

安達 洋祐 著

《評 者》渡邊 昌彦(北里大教授・外科学)

考える外科医を育てる上でうってつけの楽しい「読み物」

 私は,外科に入局して1年目に長野県の小さな市立病院に出張した。生まれて初めて本格的な手術の手ほどきをしてくれた外科部長から,胃切除後や結腸切除でドレーンは不要,胃管は手術翌日に抜けと教わった。翌年,大都市の基幹病院に出張した私は,ドレーンは5日以上留置,胃管は排ガスがあるまで置くようにしつけられた。当時の私は疑うことを知らず「どちらも理屈は通っている」と自分を納得させ,しばらく,いや長年にわたって郷に入ったらそのまま郷に従ってきた。

 8年前現在の職に就いた。ところが新しい職場での術後管理の常識は,胃管,ドレーン,抗菌薬,包交(驚くなかれ,毎日毎日ドレーンや創のガーゼを交換していたのである)にはじまって,あらゆることが自分にとっての非常識であったのだ。こうなったら自分の常識を押し付け,近代化する以外に道はない。しかし若手に経験則を押し付けるだけでよいのだろうか。指導者として「彼らを理論的に納得させる義務がある」のである。しかし,「いちいち些細なことで文献など調べてはいられない」と自問自答を繰り返していた。

 ちょうどその頃,安達先生から本書の第1版をいただいた。ページをめくるごとに幾枚もの鱗が私の目からボロボロ落ちるではないか。回診時,「ネタ」を明かすことなく,術後管理はもとより治療法について,医局員を前に滔々と本書のエビデンスを唱えて歩いた。そのうちに,本書は考える外科医を育てる上でうってつけの楽しい「読み物」だということに気が付いた。日常診療の「なぜだろう……,なぜかしら」が研究,とりわけ臨床研究の萌芽である。ある日,私は正直にネタばらしをして,教室員に本書から興味ある話題を選び,その参考文献を実際に読むよう促した。

 第2版では第1版より内容が充実し,消化器外科の最新の知見が盛り込まれている。古くて新しい術前術後の素朴な疑問,さらには緩和医療や末期患者の心のケア,自殺企図に至るまで外科臨床の話題満載である。目次をめくるだけで安達ファンはワクワクすること請け合いである。

 本書のすごいところは癌告知や臨死ケアの現実についても,感情を抑えエビデンスに基づき淡々と記されていることである。ここに安達先生の科学者としての真髄がみてとれる。そればかりではない。今回加えられた「偉大な先人:私が選んだ30人」と「研究のヒント:私が書いた30編」は先生の先人への敬意,医学に対する情熱,そして学問から得られる喜びも知ることができる。

 安達先生の科学に向き合う真摯な態度,優れた教育者の資質,臨床家としての苦悩と優しさが随所に表れている本書は,外科学のみならず医学全般に対する限りない好奇心を読者にわき立たせる。

 今回,私のネタ本である本書を押し付けられた教室員は,後々私に感謝するに違いない。これも安達先生のおかげであり,この場をお借りして先生に感謝したい。

B5・頁532 定価9,975円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01376-5


臨床に活かす病理診断学
消化管・肝胆膵編 第2版

福嶋 敬宜,二村 聡 編

《評 者》角谷 眞澄(信州大教授・画像医学)

画期的な病理診断学の学習機会を与えてくれる一冊

 福嶋敬宣先生,二村聡先生編集による『診療・研究に活かす病理診断学――消化管・肝胆膵編』が,「より一層,臨床の現場に病理情報を届けるため」に改訂され,『臨床に活かす病理診断学――消化管・肝胆膵編(第2版)』として医学書院から上梓されました。B5判の300ページから成る病理診断学の解説書ですが,病理写真はオールカラーとなり,見出しにもカラーが加えられ,とても見やすい教科書に華麗に変身しました。

 改訂版は初版と同様に,入門編,基礎編,応用編,資料編に分かれています。入門編では,病理診断を概観した上で,病理検体の扱い方,病理組織診断から報告書の作成と進み,迅速病理診断や細胞診へと続きます。初版のコラムにあった「FAQ」がここに内包され,全体を30問のQ&A形式にし,病理診断を臨床に活かすポイントが「ざっくり」と書かれています。

 基礎編は2章に分割されました。基礎編(1)では,臓器・病変別に検体の取り扱いと病理学的アプローチが扱われていますが,疾患名の網羅ではなく,実臨床で遭遇度の高い疾患や重要度の高い疾患を中心に内容が厳選されています。臨床医として「知っていれば得する」,まさに本書のメインコンテンツです。基礎編(2)では特殊染色が扱われ,組織化学検査と免疫組織化学検査の基礎的知識が記載されていますが,ヘマトキシリン・エオシンによる病理組織診断に立脚して初めて特殊染色の威力が発揮できることが強調され,染色方法の選択と結果解釈も具体的に示されています。まさに「病理に強い臨床医」になれる内容で,読み応えがあります。応用編では,初版と同様,病理診断を研究に活かすポイントや学会発表・論文投稿に役立つ病理写真の見せ方まで伝授してくれています。最後の資料編では,「病理診断関連用語」数が125から158へとパワーアップしました。また,「正常組織像アトラス」がカラー写真となり,抗体早見表が新たに追加されています。折に触れ,多角的に知識を想起したり確認したりするのに,「ますます便利」になっています。

 随所に配置された4種類のコラムは,内容の大半が新しくなりました。「ここがホット」では各分野における最新事実や学術的争点がわかります。「耳より」ではちょっとした豆知識がゲットでき,得した気分になれます。「Coffee Break」でひと息つきましょう。「FAQ」に代わって「臨床と病理の架け橋」が新たに加わりました。どのコラムも楽しく読めて学習意欲をかき立ててくれます。

 私は放射線診断専門医で,肝胆膵領域の画像診断を中心に診療・研究に携わっていますが,病理診断と画像診断は表裏一体で,診断への思考過程には相通ずるものがあります。本書の至るところに登場する「側注」に込められた病理診断医の本音やつぶやきも見逃せません。病理診断学の深い部分が語られているのですが,私にとっては画像診断学へのヒントが満載です。

 画像診断医にとって,病理診断を学び,その知識を画像診断に融合させることは,患者に貢献するために欠くことのできない作業です。しかし,学会や研究会で病理医の診断やコメントを拝聴しながら病理組織診断の知識を学び取っていく方法は,時間的制約が大きく,残念ながら効率が良くありませんでした。そんな私にとって,本書は「目からウロコ」であり,画期的な病理診断学の学習機会を与えてくれる至高の存在になっています。

 本書は,主に消化器系の診療と研究に携わる臨床医向けですが,短時間に実践的な消化器病理診断学の知識や手順を習得したい臨床検査技師,一般病理医,臨床実習中の医学生にもお薦めです。専門が異なれば利用法も違うでしょうが,本書はどなたにも十分満足のいく内容であると確信します。カラフルにバージョンアップされた改訂版で,魅力にあふれた病理診断学の世界に浸ってみましょう。

B5・頁300 定価8,925円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01095-5


《標準作業療法学 専門分野》
作業療法 臨床実習とケーススタディ 第2版

矢谷 令子 シリーズ監修
市川 和子 編
三沢 幸史 編集協力

《評 者》佐竹 真次(山形県立保健医療大教授・作業療法学)

羅針盤となる良質なケーススタディ

 臨床実習を間近に控えた作業療法学生の中には,各種の評価法のスキルを高めようと,仲間同士で復習や練習を集中的に行う人も多い。一方,臨床実習地訪問で実習指導者の先生から学生の力についてよく指摘されることは,対象者についての検査結果や各種の情報から対象者の状態像を的確にまとめた上で作業療法課題を抽出する統合力や,それに基づいて治療計画を立案する想像力と理論的な説明力の弱さである。さらに,自分が記述した情報についての考察力の弱さも指摘される。

 このような力は,養成校における講義・演習に加えて,実際の対象者との臨床活動の中でこそ培われるわけであるが,実習指導者の指導・助言と合わせて,羅針盤となるような良質なケーススタディが手元にあれば,その力の習得が飛躍的に促進されるのではないかと思われる。初めて論文を書くときに,いくら論文の書き方の本を読んでも書けるわけではなく,手本となるような尊敬する論文を見ながら自分のオリジナルデータについて書いていくうちに,結果として書けるようになることと類似しているように思われる。

 そのような意味でも,当代一流の作業療法臨床実習指導者の方々によって各領域にわたる多くのケーススタディが丁寧に執筆された本書は,臨床実習に臨む作業療法学生にとってまぎれもなく頼もしい座右の書になるものと信じる。また,各ケーススタディの後に付された「実習指導者からのアドバイス」を読むと,学生をもう一段階広い視野に導こうとする,実習指導者の知恵と愛情のようなものを感じさせられる。

 ところで,本書には「実習セルフチェック表」まで付加されている。これによれば,終了時の「お疲れさまでした」というあいさつは不適切とされている。大学から退勤する途中,私が学生に「さようなら」と言うと,学生たちの中には「お疲れさまでした」という言葉を返す人が少なくない。学生の中にはあいさつをしない人さえもまれにいるので,「お疲れさま」と言われても,私はあまり違和感を覚えずにいた。しかし,厳密に言えば,これは目上の人が目下の人の,あるいは同僚が同僚の疲労をねぎらう言葉であろうから,学生が教師に対して使う言葉としては確かに不適切ではある。本書にあるように,本当は「(ご指導)ありがとうございました」と言うのが適切であると思われ,それを確認できたことは私のひそかな喜びでもあった。

 本書の「実習セルフチェック表」や「臨床実習の準備と心構え」などには,そのような,現代日本人としての基本的な作法ともいえることまで詳細に示してあり,臨床実習に臨む作業療法学生にとっても指導する教師にとっても,さらには受け入れる実習指導者にとっても,極めて親切で的確な手引書となることは間違いない。

B5・頁360 定価4,410円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01142-6

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