医学界新聞

連載

2008.03.24


看護のアジェンダ
 看護・医療界の“いま”を見つめ直し,読み解き,
 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。
〈第39回〉
かんほれん

井部俊子
聖路加看護大学学長


前回よりつづく

 「かんほれん」は,「看保連」と書き,正しくは,「看護系学会等社会保険連合」となる。この組織は2005年7月に発足し,現在42の看護系学会と団体で構成されている。

 看保連は,「国民の健康の向上に寄与するために,科学的・学術的根拠に基づいて,看護の立場からわが国の社会保険の在り方を提言し,診療報酬体系および介護報酬体系等の評価・充実・適正化を促進することを目的」としている。

 看保連の組織は,「総会」の下に「役員会」があり,「看護技術検討委員会」と「診療報酬および介護報酬体系の在り方に関する検討委員会」を持つ。現在,看保連の代表は筆者である。

 診療報酬改定は2年毎に行われることになっており,2008年度がその年にあたる。中央社会保険医療協議会(中医協)はすでに診療報酬改定の結論を出しているが,改定のプロセスで看保連が何をしたかを記したい。

診療報酬改定の論議に向けて

 2007年6月27日に,看保連として,「医療技術評価提案書」を提出した。看護技術として評価を求めた10項目は,(1)CT・MRI検査のプレパレーション,(2)小児救急トリアージ,(3)不妊症外来指導料,(4)ハイリスク新生児に対する直母指導料,(5)退院時精神科家族相談指導料,(6)地域で暮らす精神障害者のための精神科看護師による電話相談,(7)高齢者退院支援,(8)初発乳がん患者を対象とした教育的グループ指導,(9)リンパ浮腫の予防と早期発見に関するセルフケア教育相談技術,(10)リンパ浮腫に対するリンパドレナージ,であった。

 ちなみにここでいう評価とは,点数をつけるということを意味する。医療技術評価提案書は高いエビデンスが求められる。関連して行われた保険局医療課のヒアリングでは,いかにエビデンスを示し主張するかが問われた。

 2007年8月1日には,「平成20年度診療報酬改定に関する要望書」を厚生労働省保険局医療課長に提出した。提出したといっても黙って置いてくるわけではなく,要望書の内容を説明し意見交換をする。看保連は6項目の要望を出した。

 1つめは,病院・施設における患者の退院にかかる調整機能において,多職種が共同で関わる体制を整えている病院の評価を求める「退院調整と地域連携の評価」である。

 2つめは,在宅患者の重症度に応じて,「在宅患者訪問看護・指導料」と「訪問看護基本療養費」を算定してほしいということと,医療保険制度における訪問看護の夜間等加算の新設を求めた「在宅療養における訪問看護の評価」である。これには当該学会からの研究データが参考になった。

 3つめは,在宅終末期の患者への在宅ケア開始期と臨死期における緊急電話による支援の評価を求めた「在宅における看取りに関する評価」である。これにも関連学会からの精力的な調査データがあった。

 4つめは,訪問看護ステーションで衛生材料等の取り扱いを可能にして,在宅療養者に対して必要十分な衛生材料等を保険適用により支給してほしいという「訪問看護における衛生材料の取り扱い」についてであり,訪問看護界が長年訴えていることである。

 5つめは,7対1入院基本料が認められる急性期病院の要件と,7対1看護を要する患者の判定基準としての看護必要度の課題に関連した「7対1入院基本料に関する要件」であった。これも看護管理者からのデータがあった。

 6つめは,小児病棟の看護師配置基準を高くすることを求めた「急性期小児病床の看護配置基準5対1の新設」であり,データのあと押しがあった。

看護アウトカム研究の必要性

 2008年度の診療報酬改定は,その他多くの攻防があり結着をみたのである。とりわけ中医協に看護の立場で正当性を主張した古橋美智子専門委員の健闘を称えたい。

 こうして,診療報酬の適正化に関連した看保連の活動がスタートした。臨床と学会が直結したアウトカム研究の必要性が急速に高まっていることを実感した1年であった。

つづく

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