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[第15回]研修中に折れない心を鍛える!
外科研修のトリセツ
連載 高見秀樹
2025.06.02

ハル先生,元気がないけどどうしたんだい?


そうだったんですね。ちょっと時間を作るので一度お話しましょうか。
医師としてのキャリアを歩み始めると,指導医からの厳しい指導や患者さんから否定的な言葉を受ける場面も少なくありません。また,手術や周術期管理では,予期せぬ重大な合併症や患者さんの死など,精神的にショッキングな出来事に直面して落ち込んでしまう人が多いのも事実です。しかしながら,受け身ではなく自ら学びに向かう成人学習の文脈においては,こうした困難な経験を「振り返り,次につなげる」ことこそが成長を促すとされています(図1)1,2)。
そこで今回は,困難な状況を乗り越えるために必要な「レジリエンス(折れない心)」と「フィードバック・リテラシー(フィードバックを生かす力)」について解説します。

レジリエンス(立ち直る力)を鍛える
ストレスやプレッシャーに負けず,困難を乗り越える力のことをレジリエンスと言います。この力は生まれつきのものではなく,意識的に鍛えることができるとされ3,4),しなやかな竹のように折れずにしっかりと戻る姿に例えられます。以下にレジリエンスの鍛え方4,5)を紹介していきます。
●感情をクールダウンする
まずは高ぶった感情を鎮めることが大切です。呼吸を整えることには,気持ちを落ち着ける効果があります(図2)。

●自分の感情を認識する
不安や焦り,落ち込みといった感情に気づくだけでも心が整理されます。まずは「今どんな気持ちか」を言葉にしてみること(ラベリング)が効果的です。日記をつけたり,友人・家族と話したりするとよいでしょう。
●気晴らしをする
ネガティブな感情にとらわれすぎないよう,注意を別に向けることも有効です。軽い運動,音楽(鑑賞・演奏・カラオケ),散歩,ヨガ,日記や手紙など,自身にあった気晴らしを見つけてみてください。
●思い込みを理解し適応する
「もっとこうすべきだった」「自分はダメだ」といった否定的思考に気づき,認知を切り替える練習をしましょう。他の見方を探してみたり,「この考えに意味はあるか?」と自問したりなど,建設的な視点に置き換えることが有効です。
●社会的支援を得る
話を聞いてくれる人がいるだけで立ち直りは早くなります。信頼できる支援者(上司・同僚・家族・友人など)を普段から意識して見つけておきましょう。
●自己効力感を高める
「自分はやればできる」と信じる力(自己効力感)が高い人は,たとえ失敗しても「今回はたまたまできなかった」「次に生かすのが大事」とすぐに立ち直りやすいとされ,小さな成功体験を重ねることで自己効力感が高められると言われています。
フィードバック・リテラシーを身につける
フィードバック・リテラシーとは,フィードバックを正しく受け取り,理解し,それを自分の成長に生かす力です。医師として働いていると,時には厳しい・否定的なフィードバック(ネガティブ・フィードバック)を受けることもありますが,レジリエンスの高い人はその内容を建設的にとらえることができます6)。フィードバック・リテラシーを構成する能力は次の通りです。
●フィードバックの価値を理解する力
フィードバックを「評価」ではなく「成長の機会」として受け止める力を指します。一見ネガティブな内容に見えても,「改善のヒント」ととらえることができるかもしれません。
●フィードバックを解釈する力
内容や意図を正しく読み取る力を指します。あいまいな表現・指摘には「こういう意味ですか?」と確認しましょう。
●フィードバックを活用する力
得られた情報を行動につなげる力を指します。もらったフィードバックをどう生かすか,具体的に計画してみましょう。
●フィードバックを求める力
自分から積極的にフィードバックを求める力を指します。「どこを改善したらよくなりますか?」と聞く習慣を持つことも大事です。また,学習者同士でフィードバックを与え合い,共有することも,フィードバック・リテラシーを鍛える良いエクササイズとなります。
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髙見 秀樹(たかみ・ひでき)氏 名古屋大学医学部附属病院 卒後臨床研修・キャリア支援センター センター長補佐
2003年名大卒。名古屋記念病院,小牧市民病院にて外科修練の後,12年名大大学院消化器外科学にて博士課程に進むと同時に,肝胆膵外科の臨床に携わる。15年に大学院を修了後,同大の教育専任教員になったことで医学教育に注力するようになる。21年4月より現職。20年から2年間は文科省医学教育科の技術参与として出向もした。現在は臨床実習や研修医教育,肝胆膵外科医教育に携わるほか,病院全体の研修医指導や指導医講習会の講師も担う。
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