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取材記事

2025.03.04

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写真 前列右から二人目が斎藤彰一氏

2023年『胃と腸』賞の授賞式が2024年9月18日にウェビナー形式で開催された。本賞は『胃と腸』誌に掲載された論文から,年間で最も優れた論文に贈られるもの。

今回,対象論文128本の中から,斎藤彰一氏(がん研究会有明病院下部消化管内科)らによる「癌併存大腸 SSL の内視鏡診断―画像強調観察の立場から:NBI の立場から」[胃と腸.2023;58(2):146-58.]が受賞した。斎藤氏には事前に賞状と盾,副賞のMedicalFinderが授与され,当日は『胃と腸』編集委員長の蔵原晃一氏(松山赤十字病院胃腸センター)から選考経過の説明と祝辞が述べられた。

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◆拡大観察を含めたNBIによって,病変の拾い上げおよびSSL由来の癌化病変の認識,深達度診断が可能

今回の斎藤氏らの論文は,癌が併存すると診断された大腸SSL(sessile serrated lesion,註)の内視鏡的特徴所見,特にNBI(narrow band imaging)所見を用いた画像強調観察の特徴所見について検討し,明らかにすることを目的としたもの。2013~22年の10年間に内視鏡的切除もしくは外科的切除された41症例,44病変を検討し,斎藤氏らは以下の特徴を見いだした。

①病変の発生部位は90%以上(40/44)が右側結腸であり,平均腫瘍径は深達度別の差がなくいずれも20mm前後であった。
②NBI非拡大所見では病変部全域に粘液が付着したred cap signを呈する病変が79.5%(35/44)でみられたこと。また癌化部位の肉眼型を隆起型と陥凹型に分け,その癌化部位が病変の中心部か辺縁部かを検討したところ,肉眼型では95.5%(42/44)と大部分で隆起型を呈し,癌化部位は79.5%(35/44)で病変辺縁部に認められた。
③NBI 拡大所見ではSSLの特徴的所見とされる腺管開口部の開大所見(II-dpit)が95.5%(42/44病変)で認められたこと。
④深達度別のJNET(the Japan NBI Expert Team)分類に基づく比較では,95.5%(42/44)で腫瘍性変化が確認でき,通常型の腺癌と同様に,深達度に応じて血管および表層の腺管構造に違いを認めた。

以上の結果から,NBI観察によって,病変の拾い上げおよびSSL由来の癌化病変の認識,深達度診断まで可能と結論付けた。

斎藤氏は受賞のあいさつで,本論文の共著者である河内洋氏(がん研究会有明病院病理部)をはじめチームメンバーらに感謝を述べ,喜びを語った。その後,斎藤氏から受賞論文のレビューがなされ,授賞式は終了した。

註:2019年にWHO分類 第5版にて提唱された呼称名で,鋸歯状構造を有する腺管を呈する病変の一亜型である。

*授賞式の模様は『胃と腸』誌(第60巻2号)にも掲載されています。

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