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第32回総合リハビリテーション賞決定
取材記事
2025.01.17

第32回総合リハビリテーション賞贈呈式が2024年9月25日,医学書院(東京都文京区)にて行われた。本賞は,『総合リハビリテーション』誌編集顧問の上田敏氏が東大を退官する際(1993年)に金原一郎記念医学医療振興財団へ寄付した基金を原資として発足。2023年発行の同誌に掲載された全20編の投稿論文を対象に,最も優れた論文に賞が贈られた。
◆知覚探索アプローチが急性期脳卒中片麻痺患者の上肢機能・生活機能の改善に有用であることを示唆
受賞論文は,佐藤将人氏(橋本市民病院リハビリテーション科/作業療法士)他による「急性期脳卒中片麻痺者の上肢運動障害に対する知覚探索アプローチの効果――準ランダム化比較試験」[総合リハビリテーション.2023;51(12):1345-52.]である。
脳卒中後の上肢運動障害に対する急性期作業療法はアプローチの違いによってその効果の報告にばらつきがあり,エビデンスは蓄積段階とされている。本論文は,従来,急性期脳卒中片麻痺患者の上肢運動障害の改善を目的に行われてきた伝統的アプローチによる標準的な作業療法プログラムと,日常物品や道具を用いて課題遂行に不可欠な知覚情報を抽出し,運動スキルの発達を促通するという著者らが考案した知覚探索アプローチによる作業療法プログラムをそれぞれ行うことによって,上肢機能回復の促進に違いが生じるのかを考察したもの。研究デザインには準ランダム化比較試験が採用されており,対照群の181人には標準的な作業療法プログラムを,実験群の169人には知覚探索アプローチをそれぞれ1日40分,週5日実施した。実験の結果,全ての評価項目において実験群で有意な改善が示され,知覚探索アプローチは急性期脳卒中片麻痺患者の上肢機能に加え,生活機能の改善にも有用であることが示唆された。
『総合リハビリテーション』誌編集委員を代表して高岡徹氏(横浜市総合リハビリテーションセンター)は,上肢機能の回復を目的とした脳卒中後の治療アプローチの中でもエビデンスが少ない急性期に焦点を当てた本研究の着眼点と,準ランダム化比較試験を採用した研究デザインを評価した上で,「上肢機能に関する治療効果の最終的な結果は,実際の生活や社会活動の中でどれだけ使用できているかが重要となり,著者らもその点を課題の1つとして挙げている。ぜひ,長期縦断的な調査を継続して,本アプローチの長期的な効果についても明らかにしていただきたい」と講評した。
受賞のあいさつで佐藤氏は,自身の家族,職場の同僚や共著者,同誌編集委員に感謝の言葉を述べ,「20年間の臨床の中で,とにかく患者のために治療技術を向上させたいという思いで仲間たちと技術研さんに努めてきた。共著者からは急性期のリハビリテーションの効果を示すことは課題であるといつも問われてきたので,今回の受賞を本当にうれしく思う。これからも臨床推論から技術を発展させて,後輩たちに伝承していけるように取り組んでいくことが本賞を与えていただいたことによる使命と考えている」と今後の抱負を述べた。
『総合リハビリテーション』誌では2024年にも,同年に掲載された投稿論文から第33回総合リハビリテーション賞を選定する。同賞の詳細については同誌投稿規定を参照されたい。
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