医学界新聞プラス

医学界新聞プラス

<<ジェネラリストBOOKS>>『診療ハック——知って得する臨床スキル 125』より

連載 前野哲博

2025.05.01

診療ハック——知って得する臨床スキル 125』は,毎日の診療がちょっとラクになる、そんな診療のライフハックを集めた一冊です。問診,診察,検査,治療・処方に留まらず,コミュニケーション,患者(家族)説明,マネジメント,看取り,研究・論文・学会で使える125ものスキルを紹介しています。
「医学界新聞プラス」では本書のうち,厳選した5つのハック「頭頚部の診察スキル」「予防接種時の診察スキル」「尿試験紙を使った検査スキル」「桔梗湯の処方スキル」「患者さんの話がなかなか終わらないときの対応」をご紹介します。



外来で,一度話し始めると,なかなか患者さんの話が終わらず,困った経験はありませんか。話をまとめようとしても一向に止まらず,こちらがわざとらしく時計に目線をやったり,積みあがったカルテの山を触ったりしてジェスチャーで意思表示しても,まったく効果がない……。そんなとき,患者さんの気分を害することなく,自然にクロージングにもっていくために,私がよく使っている方法を紹介します。

どんな診療ハックスキル?

「ところで,薬はきちんと飲めていますか」と聞く。

広告

用意するもの・準備するもの

特になし。

実際の方法

外来で,患者さんの話がなかなか終わらない場合,その背景に不安や疑問があり,それを理解してほしいという気持ちで繰り返し訴えるのであれば,その背景に焦点を当ててしっかりと傾聴する必要があります。しかし,同じ話の繰り返し,そのうち話が広がって近所のおばさんの話や果ては飼っているペットの話まで広がってきたら,そろそろお引き取りいただいて,長い時間待っている次の患者さんの診療に進みたいですよね。ところが,こちらが「そろそろ終わらせたいオーラ」を出してもいっこうに響かず,かといって急に話を打ち切るのも気が引ける……そういう経験はないでしょうか?

そんなときに私がよく使っているのは「ところで,薬はきちんと飲めていますか」という質問です。この質問であれば,患者さんが一生懸命話しているときに割り込んでも,それほど不自然にはなりません。そこで患者さんが「ちゃんと飲めています」「時々,夕方の薬を忘れることもあります」など,その質問に答えたら,すかさず電子カルテの処方オーダーの画面を開いてそれを見せながら,「いま飲んでいるのは,○と○と○ですね。お薬はまだ手元にありますか」と話しかけます。その流れのまま「次回の外来は1か月後の○月○日にしましょう。その日まで間に合うように,薬を出しておきますね。この日のご都合は大丈夫ですか」と話をもっていくと,スムーズに外来を終わらせることができるように思います。患者さんが話している途中で,急に次回の受診日の予約のことを持ち出すと唐突な感じがありますが,薬を飲めているかを尋ねる質問を間に挟むことにより,角を立てることなく,自然にクロージングに向けて主導権を握れるように思います。

ハックポイント
☞話がなかなか終わらない患者には「薬はきちんと飲めていますか」と聞く。
☞患者がその質問に答えたら,処方オーダーの画面を見せて次回処方について話し合い,そのまま次回予約日の設定に話をもっていく。
 

毎日の診療がちょっとラクになる、そんな診療のライフハックを集めました

毎日の診療がちょっとラクになる、そんな診療のライフハックを集めました。診療前の準備、問診のポイント、診察のワザ、検査のコツ、治療・処方のコツ、看取り時の心得、患者(家族)への説明の仕方、コミュニケーションスキル、マネジメントスキルなど、ここでしか読めない「臨床の知恵」が満載です。本書を読めば、その悩みが解決するかもしれません。

目次はこちらから

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook