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『肝胆膵画像診断の鉄則』より

連載 山下 康行

2024.12.04

肝胆膵画像診断の鉄則』は,部位・画像所見別の37のシナリオに沿って,主要疾患の症例を提示。肝胆膵脾の画像診断のポイントを“鉄則”形式でズバッと示した一冊です。各疾患の画像所見の解説に留まらず,所見をみた際にどのようにして鑑別診断を進めるかといった診断のプロセスについても言及しています。またモダリティの選択など,画像診断を進めるうえでの留意点についても適宜取り上げ,読影の腕試しができるWeb付録も収載しています。

「医学界新聞プラス」では本書のうち「Chapter1 肝臓 シナリオ1 多血性の腫瘤」の内容を4回に分けてご紹介します。

 

鑑別のポイントをまとめています.各症例(第1~3回)を振り返って復習しましょう.
鑑別のポイント
  • ● 画像所見では多くの疾患が類似の所見を呈する.臨床的データ(病歴,検査データ)を十分に吟味したうえで鑑別を進める.5つの代表的な多血腫瘍のポイントを比較すると表1-2のようにまとめられる.実際にはこれらの所見が揃わないことも多い.そのような場合は最もキーとなる所見を重点的に攻める.ただ,実際の臨床では非典型例も稀ならず経験する.
  • MRIではT2強調画像の信号とEOBの取り込みに着目する.T2強調画像は水分含量を反映し,水分の多い血管腫は著明な高信号を呈する.EOBの取り込みは正常の肝細胞の存在を示唆し,FNHでは正常肝実質と同程度の取り込みを認めることが多い.

 

表1-2.jpg

もっと知りたい!

限局性結節性過形成 focal nodular hyperplasia(FNH)

  • ● 非肝硬変に発生する過形成性の結節である.20〜40歳台の女性に多く,無症状であり偶然発見されることが多い.
  • ● 腫瘍は肝細胞,類洞からなりKupffer細胞もみられ,中心部に線維性星芒状瘢痕を伴う.
  • ● ダイナミックCTでは早期相で濃染(図1-3),大きな腫瘤では中心瘢痕がみられる.
図1-3.jpg
  • ● 血管造影では腫瘍の中心瘢痕部から辺縁に向かう車軸状の血管(spoke wheel)が特徴的.
  • ● MRIではT2強調画像では等信号のことも多いが,EOBの取り込みがみられる​​​​​​​(図1-9, 12)
図1-9.jpg
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図1-12.jpg

肝腺腫 hepatic adenoma

  • ● 若年女性の非硬変肝に好発する肝細胞由来の単発あるいは多発性の良性腫瘍.
  • ● 本邦では特発性が多いが,経口避妊薬,蛋白同化ホルモン摂取,糖原病(図1-11),糖尿病,門脈血流異常などとの関連も強い.
図1-11.jpg
  • ● 近年の分子生物学的知見から腺腫は異なる遺伝子表現型に基づき,主に3つのサブタイプに分類されている(表1-3)
表1-3.jpg
  • ● 画像所見はタイプによって異なり,EOBはβ-catenin活性型で取り込みがみられる.
  • ● 腫瘍出血,腹腔内出血による急性腹症を来すことがある.
  • ● 稀に悪性転化し,肝細胞癌となる(β-catenin活性型).
  •  

肝の血管筋脂肪腫 angiomyolipoma(AML)

  • ● 腎臓にみられる腫瘍だが,肝臓にもみられることもある.成熟脂肪細胞,血管,平滑筋から構成される良性腫瘍で被膜はないが,境界明瞭である.
  • ● 中年女性に多い.結節性硬化症の13%に肝血管筋脂肪腫を合併する.
  • ● 自然破裂や悪性転化は極めて稀.
  • ● 腫瘍内に脂肪がみられることが多いが,脂肪がみられないものもある.
  • ● 非脂肪性の腫瘤は多血性で,肝細胞癌に類似する(図1-13).腫瘤内の拡張した脈管や肝静脈への早期還流像を認める. 
図1-13.jpg
 

肝胆膵脾の画像診断においてこれだけは押さえておきたい“鉄則”を1冊に!

肝胆膵脾の画像診断のポイントを“鉄則”形式でズバッと示した1冊。部位・画像所見別の37のシナリオに沿って、主要疾患の症例を提示。各疾患の画像所見の解説に留まらず、所見をみた際にどのようにして鑑別診断を進めるかといった診断のプロセスについても言及する。またモダリティの選択など、画像診断を進めるうえでの留意点についても適宜取り上げる。読影の腕試しができるWeb付録を収載。

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