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ジェネラリストと学ぶ 総合画像診断
臨床に生かす!画像の読み方・考え方

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画像診断は、病歴、身体所見、他の検査結果と合わせて総合的に考えていくことこそ重要である。ジェネラリストでありながら放射線診断専門医を持つ著者によりレクチャー形式でまとめられた書。パターン認識である画像診断は、一朝一夕には習得が難しい領域である。この壁に直面することが少なくない内科医、救急医、ジェネラリストを主たる読者対象に、少しずつでも自分で読影することで,自分自身の力で成長していけることを目指して。

監修 上田 剛士
執筆 吉川 聡司
発行 2022年10月判型:B5頁:240
ISBN 978-4-260-04964-1
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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監修の序(上田剛士)/序(吉川聡司)

監修の序

 すべての臓器を診ることのできる医師になりたい.どんな病気でも診断できるようになりたい.そのような想いを抱きながらジェネラリストは日々,努力をしている.問診や身体診察を繰り返すことで診断スキルを磨き,病態生理を深く理解し,エビデンスにも目を通す.その努力の方法には多少の違いこそあれ,皆が登山家のように頂上を目指している.
 では登山の途中で断崖絶壁が立ちふさがったとしたらどうするであろうか? ジェネラリストという自由な,しかし未熟で不安定な1本柱だけではこの断崖絶壁を乗り越えることは難しいのかもしれない.そこで何らかの工夫が必要となる.
 ところでジェネラリストと同様に,成人においてすべての臓器の疾患の診断に携わる職種をご存じだろうか? それは放射線診断専門医(以後,放射線科医とする)である.事実,著者である吉川医師はすべての疾患が診たいがために放射線科の門を叩いたという.ジェネラリストと放射線科医では診ている疾患は同じでも観えているものはまったく異なる.吉川医師は放射線科医の視点だけでは満足できず,CT室で問診を始めるという放射線科医としては変わり者であった.そして今では常時20名の後輩を指導するジェネラリストでもある.ジェネラリストと放射線科医という2つの視点(柱)を手に入れた吉川医師が,まるで梯子を用いるかのように簡単に断崖絶壁を乗り越えることができることは想像に容易いのではないだろうか.
 ジェネラリストがこの梯子を作るには放射線科医の知識が必要なのは言うまでもないが,実はここが落とし穴でもある.放射線科的な知識を頑張って身につけてもジェネラリストと放射線科医という2つの視点(柱)がバラバラな方向を向いていては梯子とは言えず,壁を乗り越えることなどできない.ではどうすればよいのか.それはジェネラリストと放射線科医の2つの柱を梯子のようにつなぐような学習をすることである.この書籍が今までにないところは,そのような学習ができるところである.そしてそのような学習をして気づくことがある.
 1本の柱を長く成長させていくと,柱をかなり太くしなければ安定しないが,2つの柱の向きを揃えて梯子にしてしまえば,支柱は必ずしも太くなくても安定するのである.つまり,梯子を立てかける先(物事の本質)さえ見据えることができれば,柱を太くする(知識量を増やす)必要はさほどないのである.そこで,本書ではさまざまな症例を見比べながら物事の本質を見極めることができる読影方法について記述している.わかりやすく言えば「勘どころ」と言ってもよいかもしれない.
 この学習方法が画期的であることは洛和会丸太町病院の総合診療科医全員が体感しているところであり,かく言う私も本書によりジェネラリストが大きな飛躍を成し遂げるものであると信じ,本書の完成を最も心待ちにしていた一人である.このような書籍の企画・監修に携われたことを大変嬉しく思う.

 2022年9月
 上田剛士
 


 この本は,画像診断と臨床情報とをどのように有機的に機能させながら診療していくかについて,救急医療や総合診療,内科を主体として臨床をされている先生方のお役に立てばと思い,上司である上田剛士先生の薦めで書いた本である.
 私自身は,8年前に放射線科から現在の洛和会丸太町病院救急・総合診療科にうつってきたが,当初は患者から話を聞き,触れ,診察するのに戸惑った.昨今は,非常に優れた本が多くあるため,そういった本を片手に問診,診察したものである.救急,内科についての考え方が身につくにつれて,画像診断を病歴,身体所見,他の検査結果といった臨床情報と合わせて総合的に考えていく重要性に気づかされた.
 一方で,救急医,内科医としてのトレーニングを受けている後輩たちは,画像診断の重要性は理解しつつも,その壁に直面しているように見えた.陽性・陰性,あるいは値で結果が返ってくる血液検査とは異なり,パターン認識である画像診断は一朝一夕には習得が難しい領域である.プロの放射線科医の所見をいつでも読むことができればいいが,所見がすぐにつくわけではないし,放射線科医が夜間も読影してくれる病院は稀有だろう.その中で,少しでも彼らが自分で読影し,自分自身の力で成長できるようにと毎日のカンファレンスの最後に症例ベースでクイズ形式のレクチャーをするようになった.数千例に及ぶストックの中から単なる知識の伝達にならないような症例を選び,対話形式で進める.同じ症例でもメンバーが変われば発言が変わり,私がする質問も変化するため,話すテーマや関連して紹介する症例,理論的,歴史的背景の解説なども毎回変化する.もちろん,ソクラテスの問答法を意識しているわけだが,最大の効用は後輩たちの質問に困らされ,私自身が如何に正確に理解していないかを教えてもらえることにあるのかもしれない.本書は,そういったレクチャーを再現したものである.各症例の冒頭にあるQRコードからYoutubeにアクセスし,画像を見られるようにしている.クイズ形式であるため,一度答えを知ってしまってからだと二度と答えを知らない状態に戻れなくなってしまいもったいない.ぜひ,先に画像を見て自分なりの答えを出してから本文を読んでいただきたい.また,本書では伝えきれなかったことはあまりにも多く,総合診療を学びたいがIVRを含めた画像診断も学びたいという先生はぜひ,当院の門を叩いてほしい.
 最後となったが,本書の監修を快く引き受けていただいた上田剛士先生,大学,放射線科時代からともに研鑽してきた堺市立総合医療センターIVRセンター長の中村純寿先生,本書に登場してくれた洛和会丸太町病院の後輩である島惇先生,阿部昌文先生,今でも画像診断を教えてくれる放射線科の後輩である片山大輔先生,金山大成先生,その他の後輩たち,私に出版の機会を与えてくださった医学書院の関係者の方々にこの場を借りて感謝を申し上げたい.

 2022年9月
 吉川聡司

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総論I 画像診断の考え方

総論II 診断するということの考え方,画像検査の使い方

Case1 61歳 女性 発熱,心窩部痛
Case2 63歳 女性 発熱,右季肋部痛,背部痛
Case3 54歳 男性 透析患者の上腹部痛
Case4 65歳 女性 左上肢痛
Case5 68歳 女性 心窩部痛,慢性膵炎の既往
Case6 89歳 女性 無症状 胸部X線写真で異常指摘
Case7 50歳 男性 意識変容
Case8 54歳 男性 めまい
  CXRの基本
  CXR case series1
  CXR case series2
Case9 88歳 女性 後頸部痛
Case10 69歳 女性 発熱
Case11 84歳 女性 意識レベル低下
Case12 22歳 男性 腹痛
Case13 24歳 男性 発熱,倦怠感

索引

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画像を通して解剖学的変化を追い,病態を理解する
書評者:清田 雅智(飯塚病院総合診療科)

 画像診断は,現代の医療にとってますます重要な位置にいることは論をまたないであろう。ラエネックに象徴される19世紀の医師は,身体診察を丁寧にとり,死後の解剖所見との対比により疾病をどのように生前に診断するかということを極めようとしていた。20世紀に入ると,臨床検査部の整備とともに生体の物質の変化を化学的に検証することで診断をより正確にしようとした。そして1980年代から診療現場に登場するCTやMRIは,身体診察や臨床検査では捉えられなかった,体の深部に起こる解剖学的変化を捉えるという画期的な技術により生前に病気を可視化した。どれも診断に欠かせない要素であろう。
 一方,画像診断はこれほど臨床現場で重要とされている割に,どれほどの医師が専門的な読影トレーニングをしているのだろうか。医学部の授業ではカバーできるはずのない画像診断の深い世界は,現場では放射線科医の読影レポートと対比することでしかフィードバックされないはずだ。しかも多くの研修医はレポートだけで,オリジナルの画像を読まないのではないか。私は2年次から3年次にかけて9か月間の放射線科ローテーションを志願し,20年以上も自分でオリジナルの画像を自身で仮診断し,放射線科医のレポートと対比しながら自分の読影スキルを磨いてきた。これがいかに病態の理解に役立ったかということは身に染みて感じており,全ての研修医が放射線科を研修すべきではないかという自説さえ持っているが,昨今の研修の選択の自由度のなさからは無理な話である。
 本書は,こういった現状を変えることができる画期的な本ではないだろうか。現場で内科医として働く視点(画像だけでは見えない変化は,やはり病歴と身体所見という古典的な技能が未だに必要なのです!)を持ち,さらに放射線科医としての両方の視点を持つ医師はそう多くない。こういう医師について学ぶことを可能とするのが本書の特徴である。

 画像を通して解剖学的変化を追い,病態を理解すること。CTやMRIをkey imageではなく全体を眺める中で病変を発見するというトレーニングが可能です。昔は画像をフィルムで見て重要なものは自前の接写ができるデジタルカメラで保存するということをしていました。今や時代はフィルムレス。故にYouTubeの画像を通じて膨大なスライス情報を読むことができます。携帯でダウンロードするより(携帯で診るのは,画面の小ささとスピードの早さについて行けませんでした),自身のPCで再読み込みして,再生速度を0.25にし,さらに時々動画を一時停止してkey imageの付近を丹念に見直すことをすると実際の読影と同じことができるように工夫されています。これは通常の本ではできない,画期的な仕組みでした!
 各症例では読むべき参考文献も付いているので,まさに放射線科のローテーションと同じ教育ができる環境にあります。“Dähnert”や“Paul and Juhl”にもない,時代を先取りした内容になっています。私は類書を知らず,この本を強くお薦めいたします。


臨床診断全てに応用がきく画像診断を学べる唯一無二の書
書評者:下野 太郎(大阪公立大学大学院准教授 放射線診断学・IVR学)

 著者の吉川聡司先生は,放射線診断医と内科医の両方を極めて高次元でなされている大谷翔平選手のような医師です。私は密かに,吉川先生が本を書いて下さらないかと期待していました。上司の勧めで書かれたということですが,そのご慧眼に敬服します。
 私は,今まで書評依頼は原則引き受けませんでした。しかし,今回はこのような機会を与えて下さったことを心から光栄に思います。

 本書では,診断全てに応用がきく画像診断を学べます。
 最初に強調しますが,総論I「画像診断の考え方」は,必ず目を通してください。ここに画像診断学の真髄が書かれています。この真髄は各論を読み進めていけば,理解し技術として習得することができます。
 各論目次では13症例しか扱っていないように見えますが,提示症例と関連する病態,あたかも病気のように見える正常画像,豊富な胸部単純X線練習問題など,軽く50症例を越える経験が得られます。放射線診断を生業にしている私にとっても,かなり難渋するものまで網羅しています。各章の冒頭にあるQRコードから書籍掲載画像より鮮明で全体が見られる画像を閲覧できます。解答を見る前に閲覧されると,より実践的な眼力が付くでしょう。

 応用がきく画像診断を習得するためには,放射線画像の成り立ちの理解が大切です。こういった成り立ちの解説は,読むのを端折りたくなるものですが,本書では実際の読影にいかに役立つかがよくわかるように,非常に工夫して解説されています。
 また吉川先生は,単純CTの重要性を繰り返し強調されています。ついつい派手で見やすい造影CT画像に目が行きがちになりますが,単純CT所見が最も診断の根拠になります。なぜなら,造影CTは造影のタイミングや患者様の血液循環状態などにより,一定の画像を得られず解釈に幅が生じてしまうからです。最も普遍的な事実として単純CTの情報を活用することが,画像診断の上達への道と考えています。本書を読まれた後に,吉川先生の最近のお仕事[PMID:35529424]を読むと,吉川先生のセンスの素晴らしさと単純CTの重要性がよりわかることでしょう。
 学生にも画像診断を教えている立場から1つだけ言わせていただくと,画像の解説に関してもう少し問題となっている部位がわかるような印を多めに,かつ,図と本文中の解説文章が近い箇所に掲載されていたら,初学者にもよりわかりやすかったのではないかと思います。

 本書を読み,自分自身が画像診断医目線のみで,臨床医としてどういった点で至らないかに気付くことができました。吉川先生に深謝いたします。毎日のカンファレンスでこのようなレクチャーをされ続けているとのことなので,私も参加して教えを請いたいです。
 最後に,総論II「診断するということの考え方,画像検査の使い方」やCase1で述べられているような画像検査依頼を各科の先生方がして下さると,放射線診断医として依頼医の想像以上により良いサービスが提供できると思っています。

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