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[第1回]外用薬は薬効のみで決めてはならない!
『ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚外用療法』より
安部正敏
2023.04.21
ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚外用療法
皮膚疾患の治療において,外用薬はただ塗ればよいわけではありません。塗り方,用量,基剤の使い分けetc……といった基本を押さえた上で用いる必要があります。『ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚外用療法』では,最低限理解しておきたい知識をコンパクトに解説。日常診療でよくみる疾患に関しては,診断・治療プロセスから具体的な処方例までを示します。
「医学界新聞プラス」では,本書の中から4つの項目をピックアップ。第1回,第2回で適切な選択をするために知っておきたい外用薬の構造を紹介し,続く第3回,第4回で「痒疹」「脂漏性湿疹」を例にとり,外用薬の具体的な使い方を解説します。

内服薬を選択する際,たとえば抗ヒスタミン薬ならば,どれくらい鼻炎を抑えるか(薬効)に加え,内服回数や眠気出現の有無といった副作用など,複数の因子を考慮して選択するはずである。他方,外用薬はステロイド外用薬であれば,ついその強さや,抗菌薬などの配合薬の有無を考えて選択してしまいがちである。
しかし,ここに大きなピットフォールがある。そもそも外用薬は薬剤がワセリンなどの油に溶けて存在するものである。つまり,その油の性質を無視すると十分な効果は得られないのである。
剤型の相違
厚生労働省によれば,外用薬とは内服薬および注射薬を除いた,人体へ直接用いるすべての薬剤とされ,軟膏,坐薬,吸入薬,うがい薬などを含め包括的に記載されている。日本薬局方では,“皮膚などに適用する製剤”として,“皮膚に適用する製剤には,皮膚を通して有効成分を全身循環血流に送達させることを目的とした経皮吸収型製剤も含まれる。経皮吸収型製剤からの有効成分の放出速度は,通例,適切に調節される”と記載されている。つまり外用薬は皮膚に用いる薬剤のみではなく,直接呼吸器系や消化管に作用する薬剤も含まれ,最近では新たなドラッグデリバリーシステム(経皮吸収型ドラッグデリバリーシステム,Transdermal Drug Delivery System)として注目されている。
外用薬の組成
外用薬は薬剤を経皮的に作用させるため担体が必要不可欠となる。外用薬において薬効を示す物質を配合剤と呼び,それを保持する物質を基剤と呼ぶ。配合剤を荷物,基剤は車と捉えるとよい( 図1 )。現在,使用されている外用薬には,様々な配合剤が用いられており( 表1 ),それぞれ多種の基剤がある。


軟膏,クリーム,ローションの違い
ところで,外用薬には古典的な軟膏とクリーム,ローションがあるが,この違いをご存じだろうか。一般に使われる化粧品がクリームやローションであるのは,軟膏に比べてベトつかず,使用感がよいからである。近年は種類がさらに増え,ゲル,フォームといった患者の使用感向上を目的とした製剤が登場しており,これらをうまく選択して,患者の外用アドヒアランスを向上させるのが外用療法の極意であるといえる。“塗らない外用薬は効かない!”ことを肝に銘じたい。外用薬には 表2 に示す5点が求められる。
基剤の種類については,「外用薬は軟膏だけではない!」(→『ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚外用療法』19頁)を参照。

ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚外用療法
外用療法のコツを凝縮してお届けします!
<内容紹介>皮膚疾患を治療するにあたって、最低限押さえておきたい外用療法のポイントをわかりやすく説き起こした1冊。塗り方、用量、基剤の使い分け、古典的外用薬、ドレッシング材、洗浄剤、化粧品、市販衛生材料など、外用療法の基本から解説。新薬など診療の幅を広げる外用薬は特論として取り上げた。日常診療でよくみる疾患は、診断・治療プロセスから具体的な処方例までコンパクトにまとめている。臨床現場で今すぐ使える知識が満載!
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