医学界新聞

2018.10.22



専門職・非専門職の地域連携を進める
第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会開催


 第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会(大会長=東北大大学院・出江紳一氏)が9月8~9日,仙台国際センター,他(仙台市)にて開催された。シンポジウム「地域連携と嚥下障害」(座長=日本歯科大・菊谷武氏,みやぎ県南中核病院・瀬田拓氏)では,5職種の演者から,摂食嚥下の非専門職を含めた地域連携の在り方が提言された。


 演者の登壇に先立ち,座長の瀬田氏が企画の経緯を概説した。摂食嚥下障害の地域連携の難しさに,摂食嚥下の専門職間だけでなく,非専門職との連携が求められる構造を指摘した。

専門職の側からは,連携にどんな体制を構築すべきか

 リハビリテーション科医師の金成建太郎氏(長町病院)は地域における摂食嚥下リハビリテーションの現状を分析。①退院時に摂食嚥下機能評価の情報を受け取る関係者,②機能を適切に評価できる人,③退院後,摂食嚥下機能を再評価するシステムの不足を課題に挙げた。このため,退院後に機能が改善しても再評価が遅れ,経口摂取の可否や食形態は退院時点の判断が継続されがちだという。氏は,非専門職である家族や介助者にも検査結果や摂食条件,再評価を依頼する場合の情報を適切に伝える必要性を訴えた。

 千木良尚志氏(千木良デンタルクリニック/歯科医師)は,病院への歯科訪問診療の取り組みを紹介。病院の嚥下障害患者への支援は口腔内の形態の回復・維持が多く,義歯の修理など開業医の持つ知識・技術でほぼ対応可能という。たとえ嚥下機能の専門知識に不安を持つ歯科医師でも活躍の場は多いと考察した。患者が健康なころの情報を持つ歯科医師を重要なリソースと位置付け,他職種には歯科医師の積極的参入を促してほしいと呼び掛けた。

 訪問看護師の豊田実和氏(リハビリ訪問看護ステーションハピネスケア)は,自発的に経口摂取をやめる(VSED)症例を題材に,経験から専門職が学び合い,関係者が納得できるケアの在り方について発表した。専門職が正しさを押し付けるだけでは非専門職である介助者への支援が難しいと言及し,患者の要求の背景にある欲求,ニードを試行錯誤しながら理解する過程が重要との考えを示した。

 塩野﨑淳子氏(むらた日帰り外科手術・WOCクリニック/管理栄養士)は居宅療養管理指導(在宅訪問栄養食事指導)での2例を紹介。入院中のペースト食指示が退院後も継続された影響で食欲を失っていた患者では,摂食嚥下機能を再評価し食形態を変更したことで,活気ある生活を取り戻せたという。嚥下調整食提供が必要な患者への介入では,調理技術を介護福祉士に提案するなど,摂食嚥下の非専門職を巻き込んだ支援の実例を示した。

 退院後の訪問診療では,嚥下機能評価の情報が地域まで伝わっていないことがある。歯科衛生士の渡邉理沙氏(東北大大学院)は,患者の退院後の地域における摂食嚥下機能評価において,歯科衛生士に何が求められるかを考察。在宅での情報収集において,嚥下機能の精密検査の要否をスクリーニングする役割があるとし,今後は機能評価を実践できる人材育成と入退院時の情報提供・情報共有の連携構築が求められると話した。

シンポジウムの様子