医学界新聞

2008.07.14



MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


標準形成外科学 第5版

秦 維郎,野﨑 幹弘 編
平林 慎一,鈴木 茂彦 編集協力

《評 者》寺師 浩人(神戸大大学院准教授・形成外科学)

最新の知見を盛り込んだ卒前・卒後教育の成書

 形成外科学は,頭のてっぺんから足の先まで,皮膚表面から腹部内臓器までを手術的に扱う学問である。われわれ形成外科医は,幅広い知識に加えてオリジナルである形態・発生学,さらに創傷治癒学にも精通していなければならない。また,医学としての学問のほかにアートとしてのセンスを磨くことが要求される。さらに,精神外科学という造語にもあるように,手術的手技を携えた心療内科的要素も包含していなければならない。

 『標準形成外科学』は,1975年の初版以来,一人前の形成外科医をめざす若者にとって長く必読書であった。今回,8年ぶりの改訂であり,形成外科学の教科書としてより充実した内容の編纂となっている。もともと「『標準』シリーズ」は,卒前・卒後教育の成書であるが,本書は主として卒後に形成外科をめざす医師にとっての教科書として親しまれてきた。昨今,社会において形成外科医療が求められてきていることと,形成外科学が医師国家試験の科目の1つとして組み込まれたことから,医学生への形成外科学の教育の必要性も増してきている。今回の改訂内容をみてみると,そのような社会事情,教育の必要性を鑑みたものと思われる。

 今回の改訂で大きく変更されているのは,1つには「基本事項」が各項目の冒頭に箇条書きの形式で組み込まれ,まずその項に何が記載されているかを端的に捉えることで読みやすくなったこと,2つには医師国家試験に出題される内容として,「医学生のための必修事項」「医学生のための禁忌事項」が随所に挿入されていることである。この2つの追加事項によって,卒前教育のための『標準形成外科学』としても確立されていくであろうことが予想される。実際の内容では,まず総論と各論に大きく分けられ,各論ではさらに「1.先天性疾患」と「2.後天性疾患」とに分けた構成へと変更されている。

 総論では形成外科の歴史を詳しく振り返り,精神病理の内容が大きく変更されている。またインフォームド・コンセントの項目が新しく追加されており,重要な情報である。「形成手術手技」の章では,古典的治療に関しては簡潔的に記載され,昨今急速に伸びている分野として,レーザー治療と化学外科療法の1つとしてケミカルピーリングが比較的詳しく記述されている。さらに,第4版では今後の展望の項目にわずかに記載されていた骨延長法が第5版より独立した項目として新しく追加された。

 各論では,「先...

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