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『医師による医師のためのChatGPT入門——臨床がはかどる魔法のプロンプト』より

連載 大塚篤司

2024.05.31

ChatGPTの登場後,難しそうと敬遠する医師がいる一方で,日常業務を効率化し生産性を上げている医師もいます。書籍『医師による医師のためのChatGPT入門——臨床がはかどる魔法のプロンプト』ではChatGPT初心者,あるいは苦手意識のある医師や研修医をはじめ看護師など医療従事者の皆様に向けて,基本的な使い方から日常業務での実践的な活用法に至るまで,実際に使っているプロンプト(指示文)の紹介なども交えながらやさしく解説します。

「医学界新聞プラス」では本書のうち,「初級編 ChatGPTは学会抄録を作れるのか?」,「中級編 ChatGPTを使ってガイドラインを読み解く」,「実践編 学会発表のスライド作成①」の内容を,全3回でご紹介します​​​​​​。

登場人物紹介

人物紹介_花咲アイ.jpg
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ChatGPTは学会抄録を作れるのか?

専門医を取得するために避けて通れないのが学会発表.研修医にとっては,抄録を作成するところからハードルが高い.さて,ChatGPTをどのように活用したらいいだろうか?

Example Image あー,学会発表いやだなぁ
学会発表は準備も大変だし,緊張するよね Example Image
Example Image まずは抄録を作ってオーベンに見せないといけないんですけど,ChatGPTがささっと書いてくれないんですか?
うーん,いまの生成AIだと完璧に学会発表の抄録を作成するのは難しいと思う.それに,自分で抄録を書けることが大事だと思うよ Example Image
Example Image なんだ,できないんだ
学会発表というのは,自分が経験した症例を深く考察してみんなに伝える場だよね.AIが全部やってくれるのなら,そもそも人間が発表する必要もない Example Image
Example ImageAI が学会発表してくれるなら楽です!
確かに楽なことだけれども,考えかたを変えれば医者の仕事がひとつAIに奪われたことになる.そうやって一つずつAIに仕事を託していけば,医者の仕事は全部なくなってしまうよ Example Image
Example Image それは困ります
ぼくも困る.だから,AIに全部任せるのではなく,AIをうまく活用して医者の仕事が楽になるようにしなきゃいけない Example Image
Example Image わかりました.自力で抄録を書きます…
うん,それがいい.でも,ChatGPTに手伝ってもらうことはできるよ Example Image
Example Imageぜひそれを教えてください!
もちろん! では,まず学会発表する内容を教えてくれるかな? Example Image
Example Image はい.えーと,30代の男性でアトピー性皮膚炎の患者さんです.ステロイド外用剤などずっと使っていたのですが,まったくよくならずにうちの病院に紹介されました.今年から使えるようになった生物学的製剤を使用したら,アトピーがすごく良くなったので,同じ生物学的製剤を使った患者さんのデータをまとめて報告しなさい,という上司の命令です
なるほど.いま喋った文章をそのままChatGPTに伝えてみたらどうだろう? Example Image
Example Image プロンプト
以下の内容を皮膚科学会に提出する抄録として作成してください.
 ####
30代の男性でアトピー性皮膚炎の患者さんです.ステロイド外用剤などずっと使っていたのですが,全然よくならずにうちの病院に紹介されました.今年から使えるようになった生物学的製剤を使用したら,アトピーがすごく良くなったので,同じ生物学的製剤を使った患者さんのデータをまとめて報告します.
Example Image ChatGPT
題名:新規生物学的製剤によるアトピー性皮膚炎治療の有効性に関する症例報告

背景と目的:アトピー性皮膚炎は慢性の炎症性皮膚疾患であり,ステロイド外用剤に対する反応が不十分な症例も少なくありません.本研究では,新たに導入された生物学的製剤による治療効果を30代男性の患者において検証し,その臨床データを報告することを目的とします.

方法:30代男性で長期にわたりステロイド外用剤を使用しても改善が見られなかったアトピー性皮膚炎患者1名を対象に,新規生物学的製剤の治療を開始しました.治療前後の皮膚状態の変化を観察し,EASIスコア(Eczema Area and Severity Index)を用いて定量的に評価しました.

結果:新規生物学的製剤の導入により,治療開始後数週間で患者の皮膚状態に顕著な改善が見られました.治療前のEASIスコアは22でしたが,治療後は5にまで低下し,生活の質の向上も報告されました.副作用は観察されていません.

結論:この症例報告により,新規生物学的製剤は従来の治療に反応しないアトピー性皮膚炎患者において有効である可能性が示唆されました.さらなる症例の蓄積と長期的な観察により,この治療法の安全性と有効性を確認することが必要です.
Example Image 悪くはないんですけど,このままでは使えないです
うん,あくまでも抄録作成を手伝ってもらうためにChatGPTを利用するのがいい.ちなみに具体的にどこがおかしいかな? Example Image
Example Image まず文章が「ですます調」なので,「である調」に変えたいです.でも,これは変更できるって前回のワークショップで教わりましたね.次に,今回の抄録では,背景とか方法に分ける必要がありません.それに字数も200字なので,長さが微妙です
では,その条件をすべてChatGPTに投げてみよう.さきほどのChatGPTの回答に対して,新しくプロンプトでリクエストしてごらん Example Image
Example Image プロンプト
文章が「ですます調」なので,「である調」に変えてください.次に,背景とか方法に分けずに一つの文章にまとめてください.最後に字数を200字に整えてください.
Example Image ChatGPT
新規生物学的製剤によるアトピー性皮膚炎の治療効果を30代男性患者において検証した.長期にわたるステロイド外用剤治療に反応が見られなかったが,生物学的製剤の使用開始後,EASIスコアが22から5に顕著に低下し,生活の質の向上が確認された.この症例は,従来治療に抵抗性のあるアトピー性皮膚炎に対して,新規生物学的製剤が有効である可能性を示唆している.
Example Image すごく良くなりました!
納得する答えが返ってくるまで,ChatGPTに指示を出し続けたらいい.ChatGPTが返してきた回答に対して,どこをどう変えたいか具体的に教えてあげることが大事なんだ Example Image
Example Image 後輩への指導みたいですね
まさにそのとおりだよ.ChatGPTは指示されたことはほぼ100%忠実に行ってくれる.だからできるだけ具体的に細かく指示を出したほうが,こちらが欲しい回答を返してくれる可能性が高い.イメージとしては,あらゆる知識を持つ秘書さんがあなたのために働いてくれることになった,という認識が近いかもしれない Example Image
Example Image それはすごく助かります
勘違いしないでほしいのは,ChatGPTに「これやっといて」と漠然とした指示を出して,全部を完璧にこなしてくれるわけではないということ.なにをどう具体的にやっておくのか,言語化してプロンプトに書かなければChatGPTには伝わらないよ Example Image
Example Image 具体的に指示を出すのって結構大変
うん.だから,ChatGPTを上手に使いこなせる人とそうでない人に分かれてしまう.ちなみに,ChatGPTが作成してくれたさっきの抄録をもっとよくするにはどうしたらいいと思う? Example Image
Example Image え,まだ直さないといけないんですか? 私にはあとはどこをどう変えたらいいのかわかりません
今の抄録だと59点の出来栄えだと思う.つまり,このまま抄録として提出すると不合格のレベルだ Example Image
Example Image そうなんですね.がっかりです
医者である以上,地道に勉強を続けるしかない.がんばって抄録を書けるようにしよう! Example Image
ここがポイント!
生成AIはあくまでの仕事のサポート.優秀な秘書がついたと思って使いこなそう.


 

Example Imageおーつか先生のプロンプト

以下の内容を〇〇学会に提出する抄録として作成してください.
ただし,〇〇字以内,「である」調にすること.
####
(個人情報を除いた抄録内容を箇条書き)


 

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ChatGPTを使いこなせば、あなたの臨床がもっと楽に。もっと効率よく。

<内容紹介>ChatGPTの登場後、難しそうと敬遠する医師がいる一方、日常業務を効率化し生産性を上げている医師もいる。本書は、ChatGPTに苦手意識のある医師や研修医に向けて、ChatGPTを中心とした生成AIの基本的な使い方から日常業務での活用法に至るまで具体例とともに解説する。おーつか先生から研修医・花咲アイさんへのレクチャー形式で展開。コピペでそのまま使える、著者秘伝のプロンプトを集めたWeb付録付。

目次はこちらから

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