糖尿病診療のプライマリ・ケア
今,求められる役割とは
岩岡 秀明氏に聞く
インタビュー 岩岡秀明
2024.06.11 医学界新聞(通常号):第3562号より
プライマリ・ケア領域において糖尿病は頻回に遭遇する疾患である。近年は新薬の増加を背景に治療の選択肢が広がっており,患者ごとに最適な選択を見極めるには情報のアップデートがますます欠かせなくなっている。生活習慣の改善から薬物療法の実践までを幅広く,長期的に管理していかなくてはならない糖尿病診療において,非専門医がおさえておくべきポイントを『糖尿病・内分泌疾患の常識&非常識』(医学書院)にまとめた岩岡氏に話を聞いた。
――岩岡先生のキャリア初期から現在まで,糖尿病の治療はどのように変わってきたのでしょうか。
岩岡 私が初期研修医だった1980年代半ばはヒトインスリン製剤が認可されたばかりでした。それまではウシ由来のインスリン製剤が主に使用され,経口薬の選択肢はスルホニル尿素薬(以下,SU薬)しかありません。とにかく血糖値が下がればそれでいいと考えられており,糖尿病診療全体の黎明期だったと言えます。
その後,α-グルコシダーゼ阻害薬やグリニド薬,DPP-4阻害薬など,次々に新しい薬が出てきました。現在はGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の2つが大きな存在感を放つ時代です。治療薬の多様化によりインスリンの分泌促進やインスリン抵抗性の改善がさまざまなかたちで可能になっただけでなく,インスリン以外のアプローチによって血糖の改善が図れるようにもなりました。薬物療法が進歩したおかげで,糖尿病を治せるとまでは言えずとも悪化させずに管理することが可能になり,患者の平均寿命も糖尿病を持たない場合とほとんど変わらない時代になってきた1)ことは非常に感慨深いです。
一方で,患者の状態とそれに応じた治療法の組み合わせは無数にありますから,糖尿病の専門医でなければ判断に迷ってしまうケースも出てきています。
――プライマリ・ケアの現場において糖尿病は頻繁に出合う疾患です。日常診療ではどのようなことを心がけるべきなのでしょう。
岩岡 「低血糖を起こさない」「体重を増やさない」「心血管イベントを抑える」という治療薬選択時の三大条件を踏まえ,年齢や体重,血糖値の状態を含め患者の状態を丁寧に分析し,慎重に検討することで
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岩岡 秀明(いわおか・ひであき)氏 鎗田病院糖尿病・内分泌内科 部長
1981年千葉大医学部卒。千葉大病院第二内科(当時),成田赤十字病院内科,船橋市立医療センター代謝内科などを経て,2023年より現職。日本糖尿病学会専門医・研修指導医,日本内分泌学会専門医,日本内科学会総合内科専門医。著書に『糖尿病・内分泌疾患の常識&非常識』(医学書院)ほか多数。
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