逆輸出された漢字医学用語
[第12回] 人工呼吸
連載 福武敏夫
2024.05.14 医学界新聞(通常号):第3561号より
「人工呼吸」と聞いて,大半の人は機械を用いる換気を思い浮かべるだろう。しかし,救急場面で,器具なしに口対口で息を吹き込むのも立派な「人工呼吸」である。機械を用いない「人工呼吸」として1858年に考案されたシルベスター法は,患者を仰臥位にして両腕を頭上に挙げて吸気を助け,胸部を圧迫して呼気を促す方法だ。現在では口対口のほうが効果的と判断され,場合によっては胸部圧迫も行われない。
人工呼吸の際に何か器具を用いる手法は,ギリシャの医師であるガレノスが動物の喉頭から葦の茎を差し込む方法を述べたとされ,16世紀にはベルギーの解剖学者であるヴェサリウスが開胸した動物の気管切開口に葦の茎を挿入し,ふいごにより間欠的に空気を送り込むことで,動物の生存を得たと言われる。これはなんと機械的間欠的陽圧換気(IPPV)のはしりである。
『新華外来詞詞典』では,本邦における「人工呼吸」の初出文献として『日本国語大辞典』を引いて1899年の『風俗画報』という一般雑誌を挙げている。Go...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
この記事の連載
逆輸出された漢字医学用語(終了)
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
対談・座談会 2025.06.10
-
#SNS時代の医療機関サバイブ 鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか
鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか対談・座談会 2025.06.10
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
最新の記事
-
#SNS時代の医療機関サバイブ 鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか
鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか対談・座談会 2025.06.10
-
対談・座談会 2025.06.10
-
Sweet Memories
うまくいかない日々も,きっと未来につながっている寄稿 2025.06.10
-
寄稿 2025.06.10
-
複雑化する循環器疾患患者の精神的ケアに欠かせないサイコカーディオロジーの視点
寄稿 2025.06.10
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。