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『ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚外用療法』より

安部正敏

2023.04.28

 皮膚疾患の治療において,外用薬はただ塗ればよいわけではありません。塗り方,用量,基剤の使い分けetc……といった基本を押さえた上で用いる必要があります。『ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚外用療法』では,最低限理解しておきたい知識をコンパクトに解説。日常診療でよくみる疾患に関しては,診断・治療プロセスから具体的な処方例までを示します。

 「医学界新聞プラス」では,本書の中から4つの項目をピックアップ。第1回,第2回で適切な選択をするために知っておきたい外用薬の構造を紹介し,続く第3回,第4回で「痒疹」「脂漏性湿疹」を例にとり,外用薬の具体的な使い方を解説します。


 

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商品名と基剤の種類が一致しない!?

 当たり前であるが外用療法においては,商品名につく“軟膏”や“クリーム”を頼りに,治療薬を選択する。しかし,商品名には“ユニバーサルクリーム”や“ソフト軟膏”といった名称も用いられている。
 そもそも,軟膏とクリームは基剤が異なることから当然区別して使用すべきである。軟膏が適する病変とクリームが適する病変を注意深く見極めて用いなければならない。しかし,ここで忘れてはならないのは,一部の外用薬は商品名が“軟膏”であっても,基剤はクリームであるなど,商品名と基剤の種類が一致しない場合があることである。このような“名は体を表さない外用薬”はさほど多くないものの,注意しておくべきであろう。
 外用薬において,それぞれの基剤には一長一短があり,基剤によっては,塗布してはならない部位もある。有名なのは,クリームをびらん面に塗布すると刺激感をもたらす場合があることである。たとえば乾燥病変であっても,搔破痕が多発する病変部に塗布すると搔破痕に刺激をもたらしかえって悪化してしまうことがある。粉末剤も潰瘍部に塗布すると,潰瘍面の湿潤の程度によっては,さらに乾燥を促進してしまうことがあり,注意を要する。
 皮疹別に使用できる基剤の目安を 表1 に示す。注目すべきは,油性基剤(ワセリン基剤,いわゆる軟膏)はどこに塗ってもよく,オールマイティーなことである。ジェネラリストは,当然皮膚科以外にも精通すべき事項は多々あり,ここまで細かく覚えていられないかもしれない。であれば,たとえべたつきが気になろうとも“迷ったら軟膏!”とだけ覚えておき,実践すればよい。

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表1  皮膚症状と軟膏剤型

 しかしながら,本項冒頭で述べたとおり,注意すべきは商品名が忠実に基剤を表さない場合もあることである。市販薬で有名な「オロナインH軟膏」は実はクリームであり,時にかぶれた患者が来院する。皮膚潰瘍に用いる「オルセノン軟膏」もクリームであり,滲出液が顕著な創面に使ってはならない。
 他方,一口に“ローション”といっても,これにも乳剤性(つまり油が入っているもの)のものと,水性のものがある。使用感が異なるのはもちろんのこと,その有効性も違いがあるため,名前だけを頼りに選択してはならない。
 さらに注意すべきは,先発品とジェネリック医薬品においては,同じローションの形態をとっていても,油性と水性が存在することである。たとえば基剤特性によるさらなる保湿効果を狙って先発品を処方したところ,処方箋に“後発医薬品への変更不可”と明記しなかったために,院外処方薬局で後発医薬品が処方され,当初の処方意図が反映されないことになりかねない。
 また,ジェネラリストの処方も多いと思われる抗真菌外用薬は使用感を考慮して“クリーム”が多い。ほとんどの外用薬がクリームであるからと,安易に選ぶと接触皮膚炎を惹起してしまう場合がある。外用抗真菌薬には“軟膏”がラインナップされている製品もあり,知っておくと治療の幅が広がるだろう。
 褥瘡で使用することが多い“ユーパスタ”は,パスタつまり泥膏と誤解されることもあるが,基剤はマクロゴール(水溶性基剤)である。

 

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<内容紹介>皮膚疾患を治療するにあたって、最低限押さえておきたい外用療法のポイントをわかりやすく説き起こした1冊。塗り方、用量、基剤の使い分け、古典的外用薬、ドレッシング材、洗浄剤、化粧品、市販衛生材料など、外用療法の基本から解説。新薬など診療の幅を広げる外用薬は特論として取り上げた。日常診療でよくみる疾患は、診断・治療プロセスから具体的な処方例までコンパクトにまとめている。臨床現場で今すぐ使える知識が満載!

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