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『医療者のスライドデザインーープレゼンテーションを進化させる、デザインの教科書』より

連載 小林啓

2023.03.03

臨床や研究の現場では日常的にプレゼンテーションが求められるものの,発表時のスライドのデザインについて体系的に学ぶ機会はほとんどなく,スライド作成の手法に悩んだ方も多いことでしょう。また近年ではオンライン上での発表機会も増加しており,情報を正確に届けるための工夫を凝らす重要性が高まっています。

このたび刊行された書籍『医療者のスライドデザイン──プレゼンテーションを進化させる、デザインの教科書』では,効率的かつきれいで伝わりやすいスライドを作成できるような工夫が豊富な実例集とともに散りばめられています。本書を片手にスライドデザインのスキルを磨いてみませんか。

「医学界新聞プラス」では,実例を用いたスライド作成時のポイントの紹介など,本書の中から4つの項目を抜粋し,公開をしていきます。

シンプルとリッチ

オンラインで伝えるためのポイントは、シンプルな構成とリッチな演出です。これまで紹介したテクニックをさらに磨いていきましょう。

□ オンラインで伝わるプレゼンテーション

オンラインで魅力的なプレゼンテーションを作るいちばんの近道は、ふだんのやり方をより洗練させていくことです。オンラインならではの新しいツールを導入することも大切ですが、結局はプレゼンター自身の地力を上げなければ派手なツールは小手先の印象を与えるだけになります。オンラインに求められる要点を把握し、着実にレベルアップをすることができれば、いかなるプレゼンテーションでも役立つスキルとなるでしょう。

□ シンプルな構成とリッチな演出

オンラインプレゼンテーションを洗練させるキーワードは、“シンプル”と“リッチ”です。Chapter 1でお伝えしたように、プレゼンテーションは最初にテーマがあり、ストーリー、トーク、スライドの要素で形成されています。オンラインでもこの原則は変わりませんが、ストーリーをよりシンプルにし、トークとスライドをよりリッチにすることが目指すポイントです。プレゼンターが話している内容がいつでもわかる構成を心がけ、視覚と聴覚により豊かに訴えかけることができれば、観客を強く引き付けるオンラインプレゼンテーションを作ることができます。

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ここまでに学んできたことに、さらに磨きをかけていきましょう。

ストーリーをシンプルにする

オンラインは無言の離席との戦いです。観客の思考や感情を理解し、徹底的にストーリーを整理しましょう。

□ 最小のストーリーを作る

オンラインプレゼンテーションはテレビのようなものです。どんなに重要な話題でも、つまらない、わからないと判断されたらチャンネルを変えるように無言で離席されてしまいます。まずは、メッセージがどのタイミングでもはっきり伝わるストーリーを作ることが大切です。
できあがったストーリーを徹底的に絞り込み、本当に伝えたいメッセージだけで構成された最小のストーリーを作りましょう。演出の効果を最大化するためにも、しっかりした骨組みを作ることが何より重要です。

□ 観客を理解する

最小のストーリーができあがったら、情報を付け足してより豊かに仕上げていきましょう。このとき大切なことは、観客の気持ちで物語を整えていくことです。たとえばプレゼンテーションのオープニングが退屈な事務連絡のようになっていたら、いきなり観客は聞く気を失います。
内容が難しく冗長になる部分があれば、そこも離脱のポイントです。自分のもっている情報をどのように並べ、どの言葉を選べば価値が高まるかを吟味し、観客にストレスを与えることなく伝えられる構成を目指しましょう。

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自分のプレゼンテーションを客観視すると、さまざまなポイントが見えてきます。

トークをリッチにする

オンラインでは対面よりも声の重要度が高まります。自分の話し方を見直し、ストレスなく聞かせるトークを鍛えていきましょう。

□ 声が評価される

観客はプレゼンテーションの内容だけでなく、さまざまな視覚と聴覚の情報を頼りにプレゼンターを評価しようとします。オンラインの画面ではジェスチャーなどによる情報はかなり制限され、代わりに声や話し方への注意が高まります。
これまで話し方をあまり意識せずにプレゼンテーションをしていた人はチャンスです。自分の発声やリズム、抑揚の付け方をしっかりと見直し、鍛え直すことでプレゼンテーションの質が大きく高まります。

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話す、という行為は奥が深く、技術的な改善で印象をかなり変えることができます。

□ 語りかける

オンラインにおけるプレゼンターと観客の間には独特な見えない壁のようなものがあり、原稿を棒読みしているだけのプレゼンテーションでは壁を越えてメッセージを届けることができません。
大声を出す必要はありませんが、「伝えたい」という思いを前面に出すことは重要です。観客が見えないからこそ、観客を意識して語りかけましょう。自分なりにかなり大げさに演技するくらいがちょうどよい加減です。

□ しっかりと音を区切る

オンラインプレゼンテーションでは、ゆっくり話しすぎると間延びし、飽きられやすい傾向があります。かといってただ早口で喋ればいいわけではありません。ひとつひとつの言葉を明確に発音し、言葉の区切りでしっかりと音を止めることを意識すると、とても聞きやすくなります。話している最中に「あのー」や「えーと」を頻用してしまう人は、まずゆっくり確実に話すようにし、自分のプレゼンテーションを録画しながらできるだけ滑らかに話す練習をしましょう。

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こうしたリズムは実際に口に出すことでしかわかりません。練習を重ねましょう。

□ 上手な人をまねる

私たちはトークのプロではありません。初学者が上達する最良の方法は、上手な人をまねることです。幸いなことに現代はインターネットであらゆる種類の講座や優れたプレゼンテーションを見ることができます。自分が上手いと感じるプレゼンターを探し、その人のように話すためにはどうすればよいかを分析し、ものまねをしながら自分のトークを磨くことをおすすめします。

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オンラインプレゼンテーションの先生はオンラインの中にたくさんいます。
 

プレゼンテーションで悩む、すべての医療者・学生へ

<内容紹介>研究や発表で使う「スライド」をよりきれいに、よりわかりやすく作るための指南書。一般的なデザインのルールはもちろん、医療職者が多用する「数字」「グラフ」「画像」「フローチャート」などに特化した解説も掲載。医療系スライドの多数の実例を示し、具体的な改善方法を提案する。汎用プレゼンテーションソフトで使用できるフォーマットやアイコンのダウンロード、実際の作成過程の動画付き解説などの付録も充実。

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