「患者中心のがんチーム医療」をJ-TOPで学ぶ
寄稿 土屋雅美
2023.09.04 週刊医学界新聞(通常号):第3531号より
医療現場で働いていると,「チーム医療」という言葉をよく耳にします。チーム医療にもサイエンスがあり,必要なスキルセットが存在します。われわれJ-TOP(Japan TeamOncology Program)では,「チーム医療を科学的にとらえる」ことを一つの命題としています。具体的にはチームが形成,円熟し解散するまでのプロセスをタックマンモデル(図)の概念を通じてとらえています。チームとしてのミッションとビジョン,ゴールを明確にすることの重要性をワークショップやセミナー,短期留学プログラムなどを通じて伝えることで,「患者中心のがんチーム医療」が実践できる医療者を育成すべく,2002年から活動を続けています。
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心理学者のブルース・W・タックマンが1965年に提唱した成長の段階を表したモデル。チームを形成した後,混乱や対立等,さまざまな段階を経ることで高いパフォーマンスを発揮する理想的な組織へと成長するとされる。
本稿ではJ-TOPのワークショップにおける3つの特徴を紹介します。
①チーム医療の実践に必要なスキルセットを座学で学び,実践できる
われわれのワークショップを強く特徴づける要素です。積極的傾聴の手法や,心理的安全性が保たれた環境作り,対立が起こった時のコンフリクトマネジメント(註)の手法などを学び,学んだスキルを活用してグループワークを通して問題解決に取り組みます。
②リーダーシップ教育やキャリア形成について学ぶことができる
J-TOPの活動における目玉の一つであり,ワークショップを通して個々に適したリーダーシップスタイルを見いだします。また,J-TOPではさまざまな経歴,経験を持った各分野のリーダー的存在である先生方が活動しており,このような方々から継続的にキャリア形成について学ぶこともできます。
③患者参加型である
J-TOPのワークショップには,毎回必ずがんサバイバーさんが参加しています。がんに関する教育・研究・臨床実践プログラムを考えるグループワークの際,患者さん自身の視点・考え方を共有します。これは,医療者が独り善がりにならないために非常に重要であり,患者中心のがんチーム医療を実践するために必要不可欠だと考えています。
*
J-TOPのワークショップに参加した方々は,今それぞれの地域や施設でがん領域のリーダーとして活躍しています。近年では台湾や韓国,フィリピン,タイ,ベトナムなどからも参加者が集まるようになり,J-TOPでチーム医療を学んだのち自国でその普及に貢献しています。台湾でT-TOP(Taiwan TeamOncology Program)や,ベトナムでV-TOP(Vietnam TeamOncology Program)ワークショップが開催されるなど,チームオンコロジーの輪はアジア圏にも広がりつつあります。 今年度のワークショップは2024年1月28日(オンライン),2月10~12日(東京都内)の開催を予定しています。ぜひJ-TOPのウェブサイトをチェックしてみてください。
註:組織内で意見の対立が起きた時,組織の活性化や成長機会ととらえ,積極的に問題解決を図ろうとする取り組み。
参考文献
1)Psychol Bull. 1965[PMID:14314073]
![3531_0201.jpg](https://www.igaku-shoin.co.jp/application/files/2116/9320/6058/3531_0201.jpg)
土屋 雅美(つちや・まさみ)氏 宮城県立がんセンター薬剤部/Japan TeamOncology Program議長
2007年東北大薬学部を卒業後,同大病院薬剤部を経て,13年より現職。18年には米テキサス大MDアンダーソンがんセンターに短期留学した。20年東北大大学院修了。博士(薬学)。がん専門薬剤師。22年からはJ-TOP議長を務める。編著に『がん化学療法レジメン管理マニュアル 第4版』(医学書院)ほか。
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