第126回日本小児科学会学術集会開催
取材記事
2023.05.22 週刊医学界新聞(通常号):第3518号より
第126回日本小児科学会学術集会(4月14~16日,東京都港区)が清水俊明会頭(順大大学院:右写真)のもと,「Globalな視点で子どもたちの未来を考える」をテーマに開催された。本紙では,国立成育医療研究センターで理事長を務める五十嵐隆氏による基調講演の模様を報告する。
講演テーマである「わが国の小児保健・医療の課題」を発表するに当たり,五十嵐氏が会場と共有すべき前提として取り上げたのは少子化の問題だ。厚労省より発表された2022年の出生数(速報値)が80万人を割った話題に触れ,15歳未満の子どもが全国民に占める割合が12%(2020年現在)から2050年前後には9%まで下がる見込みであると言及。「少子化問題の重大さに気付いているにもかかわらず,あえて目を背けてきたのではないか」と氏は指摘し,長年にわたり検討・実施されてきた少子化対策に結果が伴わない現状に疑問を呈した。
◆子どもが置かれている現状を把握し,多面的な支援の実現を
こうした情報を会場に共有した上で五十嵐氏は,現状を分析しながら今後の日本の小児医療が対策を講じなければならない課題を列挙した。
平均出生時体重の低下
日本における2500g未満の低出生体重児の割合は9.2%(2020年)であり,国際的に見てもその割合の高さが目立っている。また,男女合わせた平均出生時体重は3010g(2020年)と,1975年の3200gと比較すると大幅に低下。問題の背景には日本人女性のやせ志向(Sci Rep. 2017[PMID:28429791])と出産年齢の高齢化などが指摘されている。胎児期や生後早期の発育不良は生活習慣病や中枢神経疾患等の発症のしやすさに関連する(Aust N Z J Obstet Gynaecol. 2006[PMID:16441686])との研究結果もあることから,一般市民への啓発を含めた情報周知の徹底を氏は呼び掛けた。
貧困が小児に及ぼす影響
17歳以下の子どもの相対的貧困率は13.5%と,世界平均の13.2%よりも高い。「貧困状態の子どもは社会的に排除(social exclusion)されやすく,虐待の一因ともなる。また,自己負担のある任意のワクチン接種や,適切な時期での受診が困難なこともある」として,子どもを取り巻く家庭環境についても診療の際に考慮に入れ,とりわけ貧困率の高いひとり親世帯に対して小児科医が積極的にかかわる意義を述べた。
増加するCYSHCNと医療的ケア児
先進諸国で増加傾向にある,慢性的に...
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