医学界新聞

書評

2023.01.16 週刊医学界新聞(通常号):第3501号より

《評者》 兵庫県立リハビリテーション中央病院 リハビリテーション科部長

 医師として,装具処方を行うに当たっては,患者の状態に最も適していて,そして使い続けてもらえる装具の具体的イメージが浮かび上がってこなければならないと思っている。装具処方の経験がまだ浅い時は,可及的にbestをめざし,結局はbetterなところに落ち着くのではあるが,先輩医師の処方をまねながら,装具の機能を知ること,患者の身体機能を評価すること,最も使用するシチュエーションに適しているかの検討などのプラクティスを繰り返し,経験値を増やしていくしかない。当時は,文献で数多くの装具があることは知っていても,実物を手に入れることは難しいので,金属支柱・ダブルクレンザックのSLBを基本として,自分なりに使いこなせるプラスチックAFOを1つか2つ持っていればよいとも先輩に諭された気がする。その後,新しい種類の装具を使う機会を一つひとつ得て,処方できる装具の種類が増えていったが,実のところそれが真にbetterな処方になっていたのかは常に疑問であった。

 著者代表の渡邉英夫先生は評者の大学時代の恩師である。装具療法については,整形外科・リハビリテーション医学で丸々1コマ分の講義があり,歩行サイクルと絡めるなどかなり難しい内容であったと記憶している。しかし同時に,装具や日常の道具を患者の状態に合わせるためのたくさんの「工夫」がされており,装具や道具はそれら単独では「もの」に過ぎないが,患者が装着し使うことで,患者の生活にとって不可欠なもの,身体や生活の一部になることが強く感じられた。評者は患者に今も「装具は装う道具です。眼鏡と同じように使っていただきたい」とお話ししている。

 本書は,機能分類に基づく装具の実践使用法事典としての特長を持つ。装具選択において,ある装具の効果を他装具と比較する文献はあっても,機能分類で検索できる百科事典的な文献はなかった。果たして2007年に上梓された本書初版はまさに待ちに待った画期的なもので,これまでのbetter処方からbest処方へと導いてくれるハンドブックであった。世界中の多様なデザインの装具・継手を知ることができ,検索だけでなくむしろこの装具を必要とする病態を想像し,いつか役立てたいという野望を抱かせた。このたび,最適な処方をめざし続けている人へ向けての第4版が刊行された。ベスト・フィッティングをめざし続けてこられたのは紛れもなく渡邉先生ご自身ではないだろうか。本書には先生の作られた工夫たっぷりの装具も載せられている。先生は新しい装具には目がなく,強い探求心を持たれていることがわかる。何より版を重ねるごとに仲間となる臨床の実践者である共著者を得て,先生のノウハウが遺伝子となり,確実に彼らへと受け継がれている。本書を手にすることで,先生の知識,経験,装具への愛を共著者と同じように受け継ぐことができる。これまでもこれからも工夫によって新しい装具が生まれ,そして消えていく。技術や材料が進化することで装具の形や使い方は変わっていくかもしれないが,本書は今の時代に生かされ生きた装具の記録として次の世代への贈り物になると信じている。

《評者》 了德寺大講師・理学療法学/医学教育センター

 このたび,医学書院よりPT・OT国家試験対策の新定番となりつつある「でるもん・でたもん」シリーズの新刊『でるもん・でたもん 過去問Online 2023』が発売されました。本書は国家試験合格への最短の道となり得る,非常に有用性の高い一冊です。これまで15年以上,国家試験対策にかかわってきた経験を踏まえ,その理由を3点挙げたいと思います。

 1点目はスマホを用いた国家試験対策ができる点です。新型コロナウイルスの感染拡大以降,高等教育のDX(digital transformation)化が一気に推進されました。しかしスマホの学習活用については積極的な教員がいる反面,いまだに「スマホ=遊び道具」という認識を持っている層が多い点は皆さんもお気付きの通りです。生まれた時からすでにスマホが存在していた学生たちとスマホを使った学習の親和性の高さは,われわれ教員世代が思う以上のはずです。ぜひ,本書を活用して「スマホ×国家試験対策」を実践してください。

 2点目は隙間時間を活用し,手軽に過去問のWeb学習ができる点です。例年,国家試験に出題される新出問題の割合は非常に低く,大半は過去問を一部変更したものばかりです。つまり,PT・OT国家試験に合格するためには,過去問の反復学習を効率よく行い,その内容をどれだけ網羅するかが鍵となります。とはいえ,国家試験で覚えなくてはならない範囲は膨大です。また一部の科目についてはオンライン講義での学習が円滑に進まず,その穴埋めが必要となる方もいるかもしれません。ぜひ,本書のコンテンツを用いて電車での通学時間や授業の合間の休憩など,わずかな“隙間時間”にWeb学習を行いましょう。その積み上げは後々に大きな差となり,3月の結果にも確実に関与します。

 3点目は各種データ活用の利便性です。『でるもん・でたもん 過去問Online 2023』では毎日の学習状況や年度・系統別の正答率のデータを手軽に閲覧することができます。模試の成績が伸び悩む学生の大半は,苦手科目を正確に把握し,それに取り掛かる作業ができていません。ブラウザ上で苦手科目を把握した上で学習に取り組むことにより,飛躍的にその効率を高めることが可能となります。また解いた問題に「カンペキ」「あいまい」「理解不足」の自己評価を付ける機能や国家試験当日までの日数カウント,フリーワードやテーマごとの問題検索など,国家試験対策に役立つコンテンツが他にも多く採用されています。いずれもシンプルな操作で直感的に扱えるため,日々の取り組みに導入しやすいはずです。

 評者が学生時代の国家試験対策は「過去問の問題集を徹底して10年分」という,今から考えれば精神論的なものを実践している養成校が支配的でした。時代の変遷とともに,国家試験対策の手法も変化すべき時代になっているはずです。ぜひ,『でるもん・でたもん 過去問Online 2023』を活用してPT・OT国家試験の合格を確実なものとし,自己実現のための一助としてください。

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook