医学界新聞

取材記事

2022.12.05 週刊医学界新聞(レジデント号):第3496号より

 第30回総合リハビリテーション賞贈呈式が2022年9月15日,オンラインにて開催された。本賞は,『総合リハビリテーション』誌編集顧問の上田敏氏が東大を退官する際(1993年)に金原一郎記念医学医療振興財団へ寄付した基金を原資として発足。2021年発行の同誌に掲載された全22編の投稿論文を対象に,最も優れた論文に賞が贈られた。

◆排尿リハビリテーションの強化がFIMの改善にもつながる可能性

 受賞論文は,津江尚幸氏(山口平成病院リハビリテーション部/理学療法士)他による「排尿リハビリテーションの臨床的効果――多施設共同ランダム化比較試験」[総合リハビリテーション.2021;49(2):173-9.]である。

 氏らは,平成医療福祉グループの17関連病院の回復期リハビリテーション病棟へ入棟した何らかの尿失禁タイプを有する200症例を対象に,尿失禁のタイプに応じた訓練を行う「排尿リハビリテーション強化群(以下,強化群)」100例と「標準的治療群」100例にランダムに割り付け,それぞれ2か月間治療を行った。結果,強化群は標準的治療群と比較して機能性尿失禁を有する症例が有意に減少した。また強化群において廃用症候群および運動器疾患を基礎疾患として有する症例では,夜間の下衣形態,機能性尿失禁を有する症例数,FIMの下衣更衣・移動項目の点で有意な改善がみられた。これらの結果から,排尿障害を有する症例への排尿リハビリテーションの強化は,通常のリハビリテーション介入よりも下衣形態およびFIMを改善することが示唆された。

 『総合リハビリテーション』誌編集委員を代表して高岡徹氏(横浜市総合リハビリテーションセンター)は,「強化群でFIMの点数が有意に向上した点は,本取り組みが排尿機能そのものだけではない機能の改善にも関与した可能性を示すものである。今後の回復期のリハビリテーションのプログラムを見直すきっかけとなる研究である」と講評した。受賞のあいさつで津江氏は,本研究にかかわった職場の同僚や患者,同誌編集委員に感謝の言葉を述べ,「今回の受賞に恥じぬよう,今後も研鑽を積んでいきたい」と決意を語った。

 『総合リハビリテーション』誌では2022年にも,同年に掲載された投稿論文から第31回総合リハビリテーション賞を選定する。同賞の詳細については同誌投稿規定を参照されたい。

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