金原一郎記念医学医療振興財団
第72回認定証(第37回基礎医学医療研究助成金)贈呈式開催
取材記事
2022.11.07 週刊医学界新聞(通常号):第3492号より
金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=上武大学長・澁谷正史氏)は,このほど「第37回基礎医学医療研究助成金」の交付対象者を選出(助成金額1760万円,33人)。10月12日,新型コロナウイルス感染症の流行を考慮し,Web上にて第72回認定証贈呈式が開催された。
開催に際し,金原優同財団業務執行理事(医学書院代表取締役会長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継ぎ,基礎医学研究への資金援助と人材育成への助力を目的として1986年に設立された同財団の背景を紹介。選出された交付対象者をたたえ,「助成金を有効活用し,今後さらに研究を深めてほしい」と激励の言葉を述べた。次に,本助成金の選考委員長も務める前出の澁谷氏は,「新たな疾患が日々出現する中で,基礎医学を含む医療研究の継続が求められる。ますます研究を発展させていってほしい」と述べ,祝辞とした。
続いて,交付対象者を代表し,藤田幸氏(島根大教授・助成対象「クロマチンの立体的な構造変化を介した脳発生機序の解析」)があいさつした。氏は大学院在籍時より中枢神経系の形成と神経回路の修復のメカニズム解明をテーマに研究を行っており,現在はヒトゲノムに含まれる2万以上の遺伝子の発現を包括的に調整する機構に着目している。多数の遺伝子が必要な時に必要な場所で機能する仕組みの全容を明らかにすることは脳機能の理解の促進にもつながり,疾患原理の解明や治療法の開発への展開も期待される。「目の前の科学現象に地道に向き合い,一歩一歩誠実に追求し続けたい」と抱負を語った。
第37回基礎医学医療研究助成金交付対象者
No. | 氏名 | 所属機関(略称) | 研究テーマ(和文) |
1 | 家里 明日美 | 有明病院乳腺外科/がん研 | ペリサイトと癌オルガノイドの相互作用を応用した、微小環境を標的とする新規治療戦略の開発 |
2 | 石川 理子 | 慶大/医学/生理学教室 | 大脳皮質におけるトップダウンシナプスにおける可塑性とその分子基盤 |
3 | 井上 和則 | 阪大院/医学/腎臓内科学 | 腎近位尿細管上皮細胞におけるSyntaxin3の役割 |
4 | 井上 裕介 | 浜松医大/病院/第二内科 | 形質制御転写因子の相互排他的な発現メカニズムに立脚した小細胞肺がんの新規治療戦略の探索 |
5 | 猪俣 武範 | 順大/医学/眼科学講座 | マルチオミクス機械学習を用いたアレルギー性結膜炎に伴う眼微小環境における免疫細胞の時空間制御の解明 |
6 | 植田 禎史 | 女医大/医学/ 生理学講座神経生理学分野 |
末梢神経損傷が誘導する視床回路の可塑性制御による感覚機能障害の治療戦略 |
7 | 梅田 香織 | 日大/医学/生化学分野 | アテローム性動脈硬化症進展におけるNETosisの新規制御メカニズムの解明 |
8 | 沖中 由佳 | 神戸医療産業都市推進機構/ IBRI/脳循環代謝研究部 |
海馬の新生ニューロン活性化をターゲットにした認知症治療法開発 |
9 | 荻原 秀明 | 国立がん研セ/ がん治療学研究分野 |
脱ユビキチン化阻害によるタンパク質分解作用を利用した合成致死治療法の開発 |
10 | 小坂田 拓哉 | ニューヨーク大/医学/ 神経科学部門 |
神経疾患に起因する過剰な攻撃行動の神経回路基盤の解析 |
11 | 長田 直希 | 自治医大/ 分子病態治療研究センター |
免疫調節薬耐性を誘導するIKZF転写因子複合体の探索 |
12 | 小田 裕香子 | 京大/iPS研/ 増殖分化制御部門 |
細胞間接着の制御による浸潤・転移がんの制圧と創薬開発 |
13 | 門松 毅 | 熊大院/生命科学/ 分子遺伝学講座 |
抗腫瘍免疫感受性低下をもたらす新規分子機構の解明 |
14 | 栗田 大輔 | 弘大/農生命/ 分子生物学研究室 |
翻訳停滞解消因子ArfAを標的とする新規抗生物質の探索と作用メカニズムの解明 |
15 | 小西 博之 | 名大院/医学/ 機能組織学 |
神経疾患治療に向けた新たなミクログリア活性化因子の探索 |
16 | 佐藤 迪夫 | 熊大院/生命科学/ 分子遺伝学講座 |
非ドメイン型lncRNA Carenの心臓恒常性維持作用を用いた新規心不全治療戦略の創出 |
17 | 田中 繁 | 千大/病院/ アレルギー・膠原病内科 |
女性優位な制御性T細胞の解析を通じた自己免疫性疾患の克服 |
18 | 田中 洋介 | 熊大/国際先端医学/ 須田研究室 |
カルシウムシグナルによる造血制御機構の解明 |
19 | 丹藤 由希子 | 東北大/加齢研/ 医用細胞資源センター |
母体環境が次世代の精子形成に異常を引き起こすエピゲノム変異誘発メカニズム |
20 | 辻 英輝 | 京大/病院/ 免疫・膠原病内科 |
関節リウマチの自己抗体産生におけるHLAクラスII分子抗原提示機能の解析 |
21 | 徳岡 秀紀 | 神大院/医学/ 分子脳科学・脳神経内科学 |
福山型先天性筋ジストロフィーに対するプロドラッグ療法の開発 |
22 | 西原 秀昭 | 山大院/医学/ 神経・筋難病治療学講座 |
血液脳関門を標的とした神経疾患の病態解明 |
23 | 西村 周泰 | 同志社大院/ 脳科学研究科脳回路機能創出部門 |
異常タンパク質のプリオン様伝播を再現できるヒトiPS由来多領域脳オルガノイドの作製 |
24 | 野島 孝之 | 九大/生体研/腫瘍防御学 | 未成熟転写終結を介する非コードRNA代謝物の産生機構と生物学的機能の解明 |
25 | 服部 祐季 | 名大/医学/細胞生物学分野 | 発生期大脳ミクログリアの多様な機能と脳への移入経路・時期との関連性の検証 |
26 | 伴戸 寛徳 | 旭川医大/寄生虫学講座 | 難治性トキソプラズマ症の発症メカニズムの解明と新規予防技術の開発 |
27 | 藤田 幸 | 島大/医学/発生生物学 | クロマチンの立体的な構造変化を介した脳発生機序の解析 |
28 | 的場 圭一郎 | 慈恵医大/ 糖尿病・代謝・内分泌内科 |
ROCKシグナルの包括的解読による糖尿病性腎症の治療法開発 |
29 | 緑川 光春 | 女医大/生理学/神経生理学分野 | 神経回路の不適応な可塑性メカニズムの解明 |
30 | 南 聡 | 阪大院/医学/ 生化学・分子生物学講座 遺伝学 |
糖尿病性腎臓病の克服に向けたオートファジー創薬とコンパニオン診断法の開発 |
31 | 宮脇 寛行 | 阪公大院/医研科/ 神経生理学教室 |
速い脳波オシレーションを介した脳領域横断的な情報統合メカニズムの解明 |
32 | 三好 知一郎 | 京大院/生命科学/ 細胞周期学分石川冬木研究室 |
免疫応答撹乱を引き起こす内在性レトロエレメントの制御機構 |
33 | 吉村 武 | 阪大院/連合小児発達/ 分子生物遺伝学 |
注意欠如・多動症に関わる軸索起始部の骨格制御機構の解明 |
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