2021年度保助看国家試験合格発表
保健師・助産師の合格率が昨年度に比べ低下,看護師は上昇
取材記事
2022.04.25 週刊医学界新聞(看護号):第3467号より
厚労省は3月25日,2021年度の第108回保健師国家試験,第105回助産師国家試験および第111回看護師国家試験の合格者を発表した。合格率は,保健師89.3%,助産師99.4%,看護師91.3%(表)。保健師は合格率が昨年から5.0ポイント低下した。看護師の合格率は0.9ポイント上昇し,近年で最高となった。ただし,合格者数は前回より425人減少した。学校区分による合格状況は本紙7面に示す。
採点除外等となる問題は保健師国家試験で2問,助産師国家試験で2問,看護師国家試験で4問だった。採点除外の理由は,「選択肢に正解がない」「複数の正解がある」「設問が不明確で複数の正解が考えられる」など。複数の正解があるものは,いずれも正解として採点された。また,看護師国家試験で採点が除外された4問のうち2問については,「問題として適切であるが,必修問題としては妥当でないため」と,難易度が原因であった。
2022年度より新出題基準が適用
2022年度より,『保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版』が適用される。全体に共通する改定方針として,人口・疾病構造や社会背景を踏まえながら,近年の保健・医療・福祉の実情など看護を取り巻く状況の変化に伴い,より重要となる教育内容に関する項目の精選と充実を図る。
それぞれの国家試験新出題基準の詳細は,厚生労働省HPを参照されたい。
2021年度保助看国試の合格基準
【第108回保健師国家試験】
一般問題を1問1点(74点満点),状況設定問題を1問2点(68点満点)とし,次の合格基準を満たす者を合格とする。
▶総得点 86点以上/142点
【第105回助産師国家試験】
一般問題を1問1点(75点満点),状況設定問題を1問2点(70点満点)とし,次の合格基準を満たす者を合格とする。
▶総得点 87点以上/145点
【第111回看護師国家試験】
必修問題および一般問題を1問1点,状況設定問題を1問2点とし,次の①~②の全てを満たす者を合格とする。
▶①必修問題 40点以上/50点
②一般問題,状況設定問題
167点以上/250点
註:一部の問題において採点対象から除外された受験者は基準が異なる場合がある。
第111回看護師国家試験の出題傾向分析
斉藤 由美 (東京アカデミー東京校 講師)
◆必修問題:易化
近年は過去問題に類似する出題が少なく,一般問題レベルの出題もあり難化していたが,第111回は過去問題の類似問題が多く,40点以上の得点者が98%を占めた。中でも解剖生理・疾病に関する問題は易しかった。今回の必修は極端に易化したが,次回も続くとは考え難い。ただし,正答率が低い問題もある。「AM1労働力人口」「PM1将来推計人口」など,基本的な統計データの暗記が不十分と思われる。「AM19義歯」「AM21静脈血採血」は過去問題の類似問題であり,基礎看護技術の分野であるにもかかわらず正答率が低かったのは,実習不足や学力低下が心配される。また,「PM7ハヴィガーストの発達課題」は,昨年に続いて出題されたものの正答率が低かった。
◆一般問題:広範囲な知識が必要
視覚素材を用いた「AM37フィジカルアセスメント」のバレー徴候に関する出題,および「AM81心電図から心拍数を計算する」の2問は,共に第106回に酷似した問題が出題され,難易度も高くなかったものの,正答率は低かった。人体の構造と機能は知識があれば解ける問題だが,例年正答率が低い。特に「AM26心拍出量の減少」「AM77ブローカ野の位置」「PM77肩峰の位置」は正答率が低かった。成人は例年より易化したため,全般に高正答率であった。疾病の成り立ちと回復は正答率が低かった。中でも「PM28 ABO式オモテ・ウラ検査」は全く学習していない受験生が多くいたと思われる。「AM86 ヘモグロビンA1c」「PM29上位・下位運動ニューロン徴候」は,ヘモグロビンA1cと筋萎縮性側索硬化症(ALS)の概要を問う簡単な問題であったにもかかわらず正答率が低かった。疾患の症状や治療法だけを暗記するのではなく,疾患の概要や発症機序なども理解する必要がある。一般問題の社会保障・関係法規は,例年同様に正答率が低かった問題があり,暗記が十分できていないと思われる。基礎看護技術では「PM37器具の消毒・滅菌」の正答率が低かった。消毒・滅菌は頻出テーマであるため,注意して学習しておきたい。小児・母性は例年と同様,生理的特徴を問われる問題が低正答率であった。基礎的な暗記が不十分だと思われる。
第104回以降,過去問のみの学習では解答できない問題が多く,幅広い知識の習得が必要である。また,短い状況設定を付した問題も増加しており,対策を要する。
◆状況設定問題:易化
AM10症例,PM12症例で,午後は単問も出題された。また,検査データだけでなく,介入を通じて直接得るさまざまな情報の取捨選択や,情報から判断して看護を決定していくプロセスを問う問題も出題された。これは次回の看護師国家試験に適用される新出題基準を意識していると思われる。今回は,一見難しく見える問題も選択肢が平易であり,簡単に正答肢が選べる問題がほとんどであったため,全般に高正答率であった。しかし,選択肢の作成の仕方によっては難問になるので,過去問題で学習する際は要注意である。読解力と正確な知識,そして思考力を養っておかなければならない。その他,透析は血液透析の出題が多いが,本年の「AM95 CAPD」では腹膜透析が出題された。難易度は高くない一方で正答率が低かった。出題頻度が低くても,関連知識の学習をおろそかにしないことが大切である。「PM111 社会資源」は,関連するサービス等を理解しておらず選択できないことが多い。近年,看護師が紹介できる社会資源を問う問題は頻出であるので,対策が必要である。
出題内容および出題基準より,基礎医学や疾患を理解した上で患者に接し,情報収集や状況判断,優先度をつけて介入することが求められていると考えられる。これは,最終学年の国家試験対策だけで,どうにかできるものではない。低学年時からの学習が重要である。
※正答率は東京アカデミー独自調査による分析です。
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