医学界新聞

書評

2022.01.10 週刊医学界新聞(レジデント号):第3452号より

《評者》 慶大教授・整形外科学

 前版から5年ぶりの改訂となる『今日の整形外科治療指針 第8版』が出版された。本書は1987年の初版から35年の歳月を経ているロングセラーである。初版の序に「わが国の整形外科はいささか欲張り過ぎともいえるほど守備範囲が広く,大変な科である」との記述があるように,本邦の整形外科は運動器疾患全般の診断,予防,保存療法,手術療法,後療法を扱い,またそれぞれの領域が常に目覚ましい進歩を遂げているので,学習し習得すべき範囲は常に膨大である。もちろんさまざまな論文,総説,ガイドライン,教科書などを通じて知識や情報を得ることは可能であり,かつ必要ではある。しかし社会の高齢化を背景として急速に増加する運動器疾患患者の診療に忙殺される整形外科医がそれら全てに目を通すのは必ずしも容易ではない。その点,本書では整形外科診療における指針の要点がコンパクトに記述されており,最新の情報を効率的に学ぶのに非常に有用であり,本書がロングセラーであるゆえんでもある。

 本版は全28章,621項目からなり,ほぼ全ての運動器疾患・外傷とその関連領域の疾患の病態,診断,治療などについての解説が収載された大変網羅的な構成になっている。また450人を超える執筆者はいずれもその領域の最前線でご活躍されている方々ばかりであるため,内容もup-to-dateで実践に即したものになっている。特筆すべきは「リハビリテーションのポイント,関連職種への指示」の項目が新たに加わり,医師の働き方改革を背景にしたチーム医療の推進にも配慮されている点,そして再生医療,iPS細胞を用いた創薬,分子標的治療,シミュレーション手術,ロボット手術などの最新のトピックも取り上げられている点である。一方で,本書の売りの1つとも言える「私のノートから/My Suggestion」の欄では,整形外科の先達の先生方にご自身の豊富な診療経験に基づいた大変深みのある診療上のご助言をいただける。このような素晴らしい本版を企画・編集された土屋弘行教授をはじめとする6人の編集者の先生方のご慧眼とご尽力に敬意を表したい。

 本書は最新の整形外科を学ぶために通読されてもよいし,診療前後に調べたい項目を事典として使用されるのもよいであろう。整形外科医のみならず他の診療科やコメディカルの方々にも理解しやすい内容であり,ぜひ日常の整形外科診療にお役立ていただきたい。

《評者》 東京医歯大大学院教授・臨床解剖学

 人体の美術展のカタログを手に取っているかのように思える1冊である。まず目に飛び込んでくるのは,写真の美しさである。解剖実習の経験者であれば,この解剖がいかに難しいものであるか,洗練された技術に基づいたものであるかがわかるはずである。また,アトラスのイラストでは,全ての筋の筋線維の方向まで正しく描写することは非常に難しい。われわれは,この筋線維の配...

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