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『こんなときどうする!? 整形外科術後リハビリテーションのすすめかた』より

渡邊 勇太,三木 貴弘

2021.08.12

術後リハビリテーションの学習に際しては,リハビリテーションの方法論はもちろんのこと,疾患の特徴や手術内容,画像の読影方法をはじめとした周辺知識も併せて学ぶことが重要視されています。このたび上梓された『こんなときどうする!? 整形外科術後リハビリテーションのすすめかた』は,そうした術後リハビリテーションに必要な知識を包括的に学習できるよう,各専門領域の第一線で活躍中のセラピストたちが筆を執りました。 今回の医学界新聞プラスでは,本書の中から「腰部脊柱管狭窄症における術後リハビリテーション」について,時系列に沿った部位ごとのリハビリテーションの方法を3週にわたって紹介していきます。

第2回のつづき)

1Week〜

体幹筋力トレーニング
  • (1)目的
  • ●退院に向けて,また再発防止に向けて身体機能を高める.
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  • (2)ポイント
  • ●この時期には,ローカル筋と合わせて,グローバル筋のトレーニングも開始していく.
  • ●この時期には術創部の痛みが落ち着いてきている場合が多いが,疼痛が長引いている場合は状況に応じて進めていく.
  •  
  • (3)方法
  • ●腹横筋や多裂筋のローカル筋の筋力トレーニングは引き続き行いつつ,新たなメニューを加えていく.
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  • ①背臥位での脊柱安定化運動(図1
  • ●運動肢位:背臥位
  •  ①両膝を立てて,患者におへそを引き込んでもらい,腹横筋の収縮を行う.
  •  ②肘を床に押しつけ,広背筋の収縮を促す.
  •  ③①と②をキープしたまま,臀部を床面から挙上し7秒間キープする動きを5〜10回行う.
  •  ④問題なく行える場合は片脚で実施し,負荷量を上げる.
  •  ※腰椎の過度な屈曲や伸展(前彎や後彎)が起こらないように注意する.
  •  
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図1 背臥位での安定化運動
  • ②座位での脊柱安定化運動(図2
  • ●運動肢位:端座位
  •  ①neutral spine(脊柱中間位)をとらせる.矢状面から見て肩と坐骨結節の位置が一直線上になるようにする.
  •  ②おへそを引き込んでもらい,腹横筋の収縮を行う.
  •  ③頭を天井のほうに押しつけるように頭側方向へ牽引させる(2 way stretch).
  •  ④骨盤と腰椎の位置関係が変わらないように片側股関節を屈曲し,7秒程度を5〜10回行う.
  •  ※座面は膝よりも股関節の位置が高くなるように設定する.
  •  ※腰椎の過度な屈曲や伸展(前彎や後彎)が起こらないように注意する.
  •  
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図2 座位での安定化運動
a,b:問題なければバランスディスクなどを挿入し,難易度を上げる.
c:股関節屈曲に伴って骨盤の後傾,体幹の屈曲を認める.
  • ③バランスボールを使用した脊柱起立筋の等尺性収縮トレーニング(図3
  • ●運動肢位:端座位
  •  ①バランスボールを患者の後方から当てる.
  •  ②療法士が前方へバランスボールを押し,それに抵抗してもらう.
  •  ③10秒程度を5〜10回程度行う.
  •  ※座面は膝よりも股関節の位置が高くなるように設定する.
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図3 バランスボールを使用した脊柱起立筋群の等尺性縮尺トレーニング
  • ④立位での脊柱安定化運動(図4
  • ●運動肢位:立位(どこかに上肢支持ができるように設定)
  •  ①おへそを引き込んでもらい,腹横筋を収縮させる.
  •  ②必要に応じて上肢支持を行い,骨盤と腰椎の位置関係が変わらないように片脚股関節を屈曲し,挙上側と反対側の片脚立位を行う.
  •  ③7秒程度を5〜10回行う.
  •  ※片脚立位が不安定な場合は上肢支持を大きくさせる.
  •  ※腰椎の過度な屈曲や伸展(前彎や後彎)が起こらないように注意する.
  •  
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図4 立位での安定化運動
  • ⑤四つ這いでの脊柱安定化運動(図5
  • ●運動肢位:四つ這い位
  •  ①neutral spineをとらせる.
  •  ②おへそを引き込んでもらい,腹横筋の収縮を行う.
  •  ③骨盤と腰椎の位置関係が変わらないように片側上肢を前方へ挙上,または片側下肢を後方に挙上させる.
  •  ④問題なく行える場合は一側上肢と反対側下肢の挙上を組み合わせて行う.
  •  ⑤7秒程度を5〜10回行う.
  •  ※③で腰椎および骨盤のアライメント保持が困難な場合は,左右への重心移動や,上肢または下肢の挙上角度を小さくして負荷量を調節する.
  •  ※腰椎の過度な屈曲や伸展(前彎や後彎)が起こらないように注意する.
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図5 四つ這い位での安定化運動
下肢の筋力トレーニング
  • (1)目的
  • ●下肢筋力の向上
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  • (2)ポイント
  • ●脊椎アライメントが急激に変化するため動作時の不安定性が増すことがある.
  • ●そのため,体幹のみならず骨盤周囲や下肢の筋力強化を図る.
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  • (3)方法
  • 中臀筋の筋力トレーニング
  • ●運動肢位:側臥位
  •  ①おへそを引き込んでもらい,腹横筋を収縮させる.
  •  ②脊柱中間位を保持させたまま股関節外転を行う.
  •  ※過度な股関節外転は脊柱中間位保持困難,骨盤の引き上げを伴うので外転角度はそこまで大きくなくてよい.
最適な運動制御練習(運動制御障害への介入)
  • (1)目的
  • ●運動制御障害の改善(体幹ー骨盤帯―股関節の協調的な動きの獲得)
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  • (2)ポイント
  • ●腰椎の不動性は保ったまま,隣接関節の動きが協調的に出せるように練習を行う.
  • ●困難な場合は鏡などを使用し,自己フィードバックできるような環境を設定する.
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  • (3)方法
  • スクワット動作(図6
  • ●運動肢位:立位
  •  ①胸の前と腰に患者自身の手を当てさせる.
  •  ②脊柱中間位を保持し,①の位置関係が変わらないように両側股関節を屈曲させる.
  •  ③10〜20回反復する.
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図6 スクワット動作
歩行練習
  • (1)目的
  • ●~1 Weekと同様
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  • (2)ポイント
  • ●引き続き患者の能力に応じて歩行様式を選択していく.
  • ●この時期には独歩を獲得できることは珍しくないが,高齢や多椎間固定の場合は歩行器などの補助具などを使用して歩行練習を行う.
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  • (3)方法
  • ●徐々に歩行距離を伸ばしていき,可能であれば6分間歩行テストで再び評価し,術前との変化を評価する.
ADL動作指導
  • (1)目的
  • ●~1 Weekと同様.
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  • (2)ポイント
  • ●引き続き腰椎の不動性を担保して動作指導を行う.
  • ●退院に向けて患者のライフスタイルに沿った動作指導を行う.
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  • (3)方法
  • ①しゃがみ込み動作(図7
  •  ●しゃがみ動作を行う際は,踵を挙上させて骨盤後傾・腰椎後彎が生じないようにする.
  •  ●最初は上肢支持を使用して行う.
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図7 しゃがみ動作
  • ②物の運送や運搬(図8
  •  ●身体の近いところで物を把持するように指導する.
  •  ●最初は軽いものから実施する.
  •  ●低い位置から物を運搬する際はしゃがみ動作を併用して行う(体幹屈曲を生じないようにする).
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図8 物の運送や運搬

〜退院

  • ●退院時期は,患者の能力のみならず,退院先の受け入れ状況によっても変動する.
  • ●退院の際に,家でも行えるホームエクササイズを指導する.
  • ●骨癒合が生じるのは時間を要するため1),退院しても入院中に練習した起き上がりかたや起立方法に留意するよう,退院時に指導することが重要である.
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1)水野正喜,倉石慶太,鈴木秀謙:腰椎固定術の基礎と低侵襲手技の発展.脳神外ジャーナル 26:353-361,2017

 

術後リハで起こるどんなイレギュラーにも慌てない!

<内容紹介>腰椎椎間板ヘルニア,変形性股関節症,橈骨遠位端骨折……本書は,整形外科領域のリハビリテーションを担当する療法士に馴染み深い代表的な疾患について,術後リハビリテーションに焦点を当てて,時系列に沿いながら多角的に解説する。
また,多くの療法士が持つ悩みを熟知した経験豊富な執筆陣により,臨床で誰もが一度は遭遇するであろう“こんなときどうする!?”をピックアップし,具体的な解決策を提示する。

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