医学界新聞

書評

2021.07.12 週刊医学界新聞(レジデント号):第3428号より

《評者》 国際医療福祉大医学教育統括センター 副センター長・教授/感染症学・教授

 現在,日本では,内科系診療の「コア」の部分を担当する専門診療科である「総合内科」または「総合診療科」のさらなる普及と確立が望まれている。総合内科は学会でもコンセプトの普及に尽力し,入院診療では病院総合内科,外来診療ではかかりつけ医としての役割などにおいても日本の実情に合わせた実働がなされつつある。総合診療科も,臓器横断的かつ体系性を持つ専門診療科として,少しずつ設置され普及してきている。本書は,総合内科・総合診療科が重要視され始めた2011年に初版が刊行された。その後10年を経過した2021年に,その改訂版が出されたことは,診療現場にとって朗報である。

 本書は,亀田総合病院で総合内科部長を務める八重樫牧人先生,佐藤暁幸先生が監修し,歴代の素晴らしい研修医,指導医の先生方がその力と思いを結集して編さんされたポケットマニュアルである。研修病院の有数の老舗の優秀な若手医師,国内外で活躍した指導医が共著で執筆されている。世界で共有される良質な科学的エビデンスと国内事情を加味した使いやすさが特徴である。特に注目したのは,「患者ケアの目標設定」,私の専門領域の「感染症」,「高齢者医療の原則」「疼痛緩和の原則」「ヘルスメンテナンス(健康増進)と予防」である。

 まず,「患者ケアの目標設定」には,診療の開始時に患者ケアをどこまで行うかを現場において多職種で議論しておくことや,アセスメントとプロブレムリストの違いなど,現場で役立つパールが散りばめられている。「感染症」の項は,筆者の専門診療の仲間でもある先生方の執筆で秀逸であり,文献も適切に引用され信頼できる内容である。「高齢者医療の原則」と「疼痛緩和の原則」は,評者もぜひ活用したい。生涯教育の一環としても,臨床医全員が診療に必要な情報である。

 国内の医療現場では,高齢者の増加から,「高齢者」「臓器横断」「緩和医療」「予防」などがキーワードとなり,極めて重要である。どの診療科であっても,これらの考え方と実践が必須の時代となっている。そのような中,その要点を現場で短時間に確認できる本書は,学生,研修医,一般医にとって非常に便利である。今回から,エビデンスレベルと推奨度合いも併記する仕様で,ユーザーに一目瞭然のメッセージを伝えてくれる。際限なく情報は増え,診療業務は複...

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