総合内科マニュアル 第2版

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日本屈指の研修プログラムを有する、亀田総合病院の歴代レジデントの英知を結集! 多忙な総合内科ローテをする初期研修医のためのサバイバルガイドとして、好評を博した「総合診療・感染症科マニュアル」を、書名を新たにして改訂。今版から推奨グレードとエビデンスの質を記載している。世界標準の内科医を目指すなら必携の1冊。

監修 八重樫 牧人 / 佐藤 暁幸
編集 亀田総合病院
発行 2021年03月判型:三五変頁:520
ISBN 978-4-260-03658-0
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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 「20%の知識で80点取る診療」.教え子の講演のキャッチフレーズですが,本書のコンセプトも同じです.経済協力開発機構(OECD)の平均だと,全医師中の総合医の割合は30%程度ですが,日本の割合は874人/32万7210人で0.26%程度です.他国の100分の1の人数で患者さんのニーズを満たせるでしょうか? 答えは「否」でしょう.総合医の重要性は認知されてきたものの,トレーニングを受けた総合医の数と割合はニーズに比較すると,圧倒的に足りません.
 総合内科という大人の幅広い医療ニーズに対応する領域のうち,大多数のコモンな問題に世界標準の質で診療ができるようにまとめたのが本書です.初版は「総合診療・感染症科マニュアル」という書名でしたが,初版を上市してから9年が経過するうちに診療科名が変更されたこともあり,今版では「総合内科マニュアル」と書名変更をしました.しかし,亀田総合病院総合内科の歴代レジデントの英知を結集した「亀マニュ!」であることは今版も変わりありません.訳本と異なり,日本で診療するうえで知っておくべき日本の特殊事情も記載しており,エビデンスに基づく診療を日本で実践するのに役立つように企画しました.
 おかげさまで第1版は,医師以外の医療従事者の方々からもコンパクトにまとまって俯瞰しやすいと好評を博しました.もちろん,このサイズで医療のすべてを網羅することは到底不可能ですので,この本にない項目については他を参考にしていただければ幸いです.また序文を書いている2021年はコロナ・パンデミックの最中ですが,新型コロナウイルスに関しては情報の変化が速すぎて最新の診療をこの本にまとめることは難しいため,これも他を参考にしてください.

 第2版はさらに読者に有益な本を目指しました.エビデンスに基づいた最良の医療が実践しやすくなるよう,治療行為にはGRADE分類に準じて,推奨の強さとエビデンスの質を記載しました(詳しくは「亀マニュ!2版の読み方」を参照).その根拠論文も,執筆して頂いた原稿の一部も,本に全部載せるのはスペースの関係上不可能でしたので,オンラインで追記するハイブリッド形式としました.
 一方,このコンセプトで原稿を書くのは非常に大変で,各章の執筆者には血のにじむような努力で執筆していただきました.本当にありがとうございます.また,全部の原稿を校正するのにも非常に時間がかかってしまい,何回もガイドラインが改訂されて原稿を修正していただくことになってしまったことをお詫びいたします.それらの努力の末,このサイズでこれだけ幅広い内容がエビデンスに基づいて,かつ読者にわかりやすい本としてお届けできることになりました.執筆者の皆様に心からの感謝を申し上げます.

 執筆者の先生以外にも,ベスト教育診療科を6年連続受賞できるほど,診療・教育を盛り上げてくれた総合内科の歴代指導医・歴代フェロー・歴代チーフレジデント・歴代後期研修医・亀田総合病院初期研修医の皆・看護師を始めとする多職種のチームの皆さん・患者さん・院内の他の診療科の先生方,長いこと根気強く支えてくれた医学書院の中さん・松本さん,仕事のパートナーの暁幸先生,私の生き甲斐であり強力なサポーターでもある妻・娘・息子,関わってくれた皆様に感謝します.本当にありがとうございました.

 この本が,少しでも皆様の診療のお役に立てば幸いです.

 2021年1月
 監修者を代表して
 八重樫牧人

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亀マニュ!2版の読み方

第1章 患者ケアの目標設定

第2章 病歴聴取

第3章 身体所見

第4章 屋根瓦式・チーム医療

第5章 医師指示・カルテ記載

第6章 病状説明・ACP・コード

第7章 EBM

第8章 検査判断の原則

第9章 一般外来診療の原則

第10章 救急外来の原則

第11章 在宅診療の原則

第12章 ソーシャルワークの原則

第13章 集中治療の原則

第14章 高齢者医療の原則

第15章 疼痛緩和の原則

第16章 栄養

第17章 感染症

第18章 呼吸器

第19章 循環器
 高血圧
 心不全
 不整脈総論
 不整脈各論(ACLSに加えて)
 急性冠症候群

第20章 神経
 意識障害
 脳血管障害
 発作性疾患

第21章 消化器

第22章 腎・水・電解質
 水・電解質
 腎臓

第23章 内分泌疾患(糖尿病を含む)
 糖尿病
 甲状腺疾患
 副腎疾患
 脂質異常症

第24章 血液

第25章 腫瘍

第26章 アレルギー

第27章 リウマチ・膠原病

第28章 皮膚

第29章 精神

第30章 女性の健康

第31章 男性の健康

第32章 ヘルスメンテナンス(健康増進)と予防

索引

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日常臨床の知恵の結集
書評者:青木 眞(感染症コンサルタント)

◆はじめに
 「時間が無いので長文になりました」とはある賢人の言葉……。文章表現はその贅肉を「そぎ落とす」ことが本質ということなのだろうか? 評者も「できる」研修医には10秒で症例をプレゼンさせることがある。面白いことに10秒を強いられた瞬間に,その研修医に症例の本質が見えてくるから不思議なものである。本書も余分なものが徹底的に削られた,それゆえに極めて中身の濃いマニュアルとなっている。「(総合内科の)大多数のコモンな問題に世界標準の質で診療ができるようにまとめた」という本書の一部を,本文を引用しながらご紹介しようと思う。

 第1章「患者ケアの目標設定」:p.1「目標設定はきわめて重要(中略)目標を設定し,そこから逆算して手段が導き出される。(中略)手段を目的化してはならない。(中略)最大の目標は『患者のニーズ』に応えることである(中略)隠れたニーズ(中略)プロとして積極的にこれを掘り起こす必要がある(例:閉経後女性の骨密度測定,肺炎球菌ワクチン)」。p.2「アセスメントと行動の一貫性を保つ」。p.3「入院初日に退院までの流れを想定する」。

 第2章「病歴聴取」:p.8「チェックリストではなく,ストーリー作りである。すべての情報は断片ではなく,ストーリーの一要素として考える」⇒病歴聴取の本質である。

 p.9「常に診断仮説は立てる(中略)なんとなく話を聞いていてはいけない。仮説から逆算して,病歴をさらにとる」⇒鑑別診断の繰り返しは内科診療の本質。第1,2章のような内容を書かせると,岩田健太郎先生は本当に光る。

 第5章「医師指示・カルテ記載」:p.38「毎日の見直すべき項目(1)静脈ラインを抜去できるか。(2)モニターをはずすことができるか。(3)経静脈薬を経口薬へ変更できるか。(4)尿道カテーテルを抜去できるか。(中略)(6)患者の安静度/活動度を増やせるか。(中略)(9)退院計画の状況」⇒これを臨床現場の脊髄反射としたい。

 第9章「一般外来診療の原則」:p.62-63「外来で評価すべき患者の3領域:disease(疾患)を医学的に評価し,illness(病体験)から患者の考えを汲み取り,health(健康観)に目標を見つける。(中略)(これは)身体状況や社会生活で『こうであれば満足』と思える状態であり,必ずしも『病気がないこと』ではない」。p.78「終末医療から『end of life care』へ:およその余命は,癌:45日,脳血管障害:1300日」⇒亀田総合病院の家庭医学領域の広さ,高さ,深さ……。

 第13章「集中治療の原則」:p.97「(臓器ごと)(3)循環:血管内ボリュームの評価は難しい。(中略)機能的パラメータが有用な指標になりうる」⇒亀田総合病院は集中治療室に集中治療の専門家が居る点で極めてユニーク。

 第15章「疼痛緩和の原則」:p.114「疼痛コントロールは臨床家すべての義務である。(中略)痛みは5番目のバイタルサイン。痛みがあるかどうか聞く習慣をつける」⇒同ページの「WHOがん疼痛治療の5原則」も重要。p.117の「進行がん患者にオピオイド開始時に説明すべきこと」も素晴らしい。

 第17章「感染症」:p.149「2019年のIDSAのガイドラインでは,喀痰のグラム染色や血液培養は不要であるとされているが,亀田総合病院ではよりレベルの高い診療をめざしており」⇒ベッドサイドに全てを捧げた臨床家のみが書ける素晴らしい骨太の章。涙そして拍手!

 第19~29章にまとめられた「循環器」「神経」「消化器」「腎・水・電解質」「内分泌疾患(糖尿病を含む)」「血液」「腫瘍」「アレルギー」「リウマチ・膠原病」「皮膚」「精神」の各章⇒これらの章にも臨床のPearlが目白押し。付箋,マーカーによるハイライトだらけに。

 第30章「女性の健康」,第31章「男性の健康」,第32章「ヘルスメンテナンス(健康増進)と予防」:p.468「常にヘルスメンテナンスを考慮した診療を心がける。診療録のプロブレムリストにヘルスメンテナンスの項目を記載するとよい。外来では継続性の利点を活かしヘルスメンテナンスを行う」⇒『総合内科マニュアル』がこのような章立てで整理されること自体が素晴らしいと思う。

◆あとがき
 もはやご存じない方が多いと思うが,四半世紀ほど前,日本に総合診療の文化を伝えたGerald Stein先生は亀田総合病院におられた。彼に薫陶を受けた若手医師が現在,日本の各地の総合診療領域で活躍されている。本書の監修者のお一人である八重樫牧人先生,沖縄県立中部病院の金城紀与史・光代ご夫妻,徳洲会グループのJoel Branch先生など枚挙に暇がない。Cookbookと揶揄されることもある「マニュアル」だが,一見何気ない日常臨床の知恵が集積されるとかくも素晴らしいものができあがる好例として,本書を多くの研修医,指導医に薦めたい。


内科の全てをギュッと濃縮した最上のエスプレッソ
書評者:林 寛之(福井大学医学部附属病院教授・救急科総合診療部)

 「これはミニ・ハリソンか!」あの内科のバイブルである『ハリソン内科学』も感染症に最もページ数を費やしており,たかがマニュアル(失礼!)といえど,感染症に一番紙面を費やしているところには著者たちのこだわりがうかがえる。

 マニュアルというと,研修医が日常診療の目先の問題を「とりあえずこなす」ためだけの詰め込みパックみたいなものになりがちだが,本書は,なかなかどうして微に入り細に入り心構えも記載してあり,読み物としても成り立つ。ぜひ研修医や若先生たちは時間が空いたときでも,直接治療に関与しない部分も読んで欲しい。チーム医療はいまや医療の根幹たる部分だが,そこがどうして大事なのか,他の人の時間を大事に扱うこと,タイムマネジメントなど,これから長い医師人生を清く明るく楽しく生きていくためには知っておく必要がある。ACPやEBMなんてそれだけで一冊の本になりそうなものまで,ぎゅうぎゅうに詰め込んであって,簡単な理解のためには時短になる。

 臨床の酸いも甘いもわかりかけてきた若先生たちにこそ,「〇〇の原則」の章は全て読んでおいていただきたい。一般外来,救急外来,集中治療などその道のプロからしたら,「こんな短い分量で,俺たちの専門の原則を語れるわけがないじゃないか」と文句が出そうだが,確かに「原則」を絞りに絞って記載してあり,プロでもうなずく凝縮のされかたに納得した。ロングコーヒーでその豊潤さを語られるところを,ギュッと濃縮した最上のエスプレッソで抽出した感じ……ってわかるかなぁ。

 さらに在宅診療やソーシャルワーク,高齢者医療,女性・男性の健康,ヘルスメンテナンスとくれば,家庭医療の真髄ではないか。ここまでくると内科だけではない,全ての「人」を診る診療科の医師には知ってもらいたい内容だ。困ったときにソーシャルワーカーに丸投げで終わる医師になるか,きちんと仕事内容を理解してチームとして戦える医師になるか,そこは良医になる分岐点かも? 「少ない労力,最大効果」を狙う今どきの忙しい医師には,マニュアルという短い体裁が,もってこいだ。なによりわかった気になれる!(あ,わかった気だけじゃダメなので,さらに成書を読みましょうね・笑)。さすが亀田執筆陣の層の厚さがうかがえる。スペインが世界に誇るBrugada3兄弟(Pedro BrugadaはBrugada症候群を発表した医師)に勝るとも劣らぬ,亀田4兄弟の作った病院だけある。

 一般内科診療も内容がアップデートされ,ほとんどの項目で参考文献にPMIDがつけられ,後で出典論文を確認できるのがいい。これ一冊で研修医や若先生は現場ではあまり困らないだろう(古狸先生は老眼だから諦めましょう)。白衣のポケットには楽勝で入るし,診療中必要に迫られてアンチョコ的に開いてもいい,ちょっとした隙間時間にカフェで開いてもいい,つらいときトイレに入って泣いた後の清涼剤として読むのもいい,寝る前に睡眠導入剤として眺めるのもいい。とにかく総合内科の全体像をつかむため,ボロボロになるまで読み倒してみてはいかがだろう?


亀マニュは総合内科を志す若い医師の最強の相棒である
書評者:森川 暢(市立奈良病院・総合診療科)

 ついに『総合内科マニュアル(亀マニュ)』が改訂された。実は,私は亀マニュのファンだ。医師3年目の時に総合診療の後期研修を始めたが,本当に右も左もわからなかった。多少は内科の知識を持っている自信があったが,それは粉々に打ち砕かれた。かといって,同期や先輩のようにUpToDate®を紐解き知識を増やすような甲斐性もなく,仕事にひたすら追われていた。

 当時,私は常に2つのマニュアルをポケットに入れていた。1つは『診察エッセンシャルズ』という診断学に特化したマニュアルであった。しかし,内科マネジメントについても同様にマニュアルが必要であった。結果的に,私が選んだ相棒は亀マニュだった。ベットサイドで診療し,亀マニュを見るという日々をひたすら繰り返した。いつしか,亀マニュは自分の血肉となり携帯はしなくなった。ただ,その後の自分の内科マネジメントの原則や原理は亀マニュが基本となっていることに変わりはない。そして,今回の改訂である。

 初版の亀マニュは,章によりエビデンスに基づいた記載にバラツキがあることが難点だった。しかし,今回の改訂では徹頭徹尾エビデンスに基づいた記載となっている。八重樫牧人先生の徹底的なチェックのたまものだろう。また亀マニュで大切にしていた内科マネジメントの原則は今回も踏襲されつつ,推奨グレードシステムによるエビデンスの質も記載されており,よりパワーアップしている。ただの内科マニュアルと違い,老年医学,ソーシャルワークやヘルスメンテナンス,救急や集中治療も網羅されているのは心憎い。特にソーシャルワークは今回新設された項目だが,総合診療医である私が読んでも知らない項目も多く,記載のレベルの高さに驚かされた。さらにこれだけパワーアップしたにもかかわらず,相変わらずコンパクトで読みやすいというメリットも引き継がれている。総合内科マニュアルの決定版であり,全ての初期研修医,内科専攻医,総合診療専攻医に推薦できる。もちろんベテランの医師の知識のブラッシュアップにも最適である。ぜひ,このマニュアルをポケットに忍ばせ,病棟,外来,救急と縦横無尽に走り回ってほしい。亀マニュは皆様の良い相棒になるだろう。

 最後に。私が専攻医だった時に比べてスマートフォンが急速に普及しているのは事実である。しかし,ポケットマニュアルの価値は減ることはない。ボロボロになった初版の亀マニュを見返したが,隙間の至るところに当時の私が得たパールや知識が書き込まれている。若い先生はぜひ新しい亀マニュを読み込み,さらに得た知識を書き込むことで自分だけのマニュアルにしてほしい。亀マニュが血肉となるとき,自分の総合内科力が飛躍的に成長していることを実感できるだろう。


コンパクト,濃度抜群。国際標準+アートに満ちたマニュアル
書評者:志水 太郎(獨協医大教授・総合診療医学)

 亀田総合病院の“あの”マニュアルの第2版が10年を経て出版されました。第一印象は「本当に手のひらサイズ」。500ページと聞くと厚い(熱い)印象ながら,院内PHSの厚さとほぼ同じコンパクトさを保っています。値段も3080円と読者フレンドリー,その上,八重樫牧人品質,亀田品質というプロファイル。ここまでで,これはもうどう見ても買いのロジックとなります。そのほか,数ある中からダイジェストで個人的なお薦めポイントを記載します。

 このような病院発のマニュアルを見るとき,そこで訓練を受けた医師達が思い出されます。個人的な印象ですが,一緒に職場で仕事をさせていただいたことのある亀田卒の医師たちのカルテは,とても整理されたものだった記憶があります。特に等しく皆同じであったと感じるのは,ヘルスメンテナンスと題されたカルテ末尾の記載でした。本書では第32章の16ページ(pp.468-483)が,この予防医療トピックに充てられていますが,これは病棟でも外来でも重要で,“総合内科・総合診療”的な長期的・包括的ケアを達成する上での中心軸を構成する考え方です。そのような丁寧な診療をめざす想いが,このマニュアルに込められています。治療については参考文献とともに,GRADE分類に準じてできる限りの客観性がこの小さな本にびっしり詰まっています。ここまで丁寧にリファレンスや推奨度の方針が行きわたっていることを拝見し,著者の先生方,そして監修のお二方の先生の熱量,教育と医療の質への思い,また作成に伴うご苦労はいかばかりだっただろうか,と思います。このような網羅的かつ米国医療において標準化されている質担保の教育が,国内の病院で行われているということや,またその教育を院外の読者たちに惜しみなく与えてくださる著者の太っ腹な心意気にも感銘を受けました。

 豪華な亀田OB/OGの執筆陣も本書の大きな魅力です。岩田健太郎先生の「患者ケアの目標設定(1章)」や「病歴聴取(2章)」,岸本暢将先生の「身体所見(3章)」,八重樫先生の「病状説明・ACP・コード(6章)」や細川直登先生の「検査判断の原則(8章)」などが一度に読めるマニュアルは世界に一つだけでしょう。「在宅診療の原則(11章)」,「ソーシャルワークの原則(12章)」など,いわゆる病院総合診療的観点での地域包括ケアを見据えた視点や「女性の健康(30章)」の完備なども,網羅性があると感じます。

 また,上記のようなソリッドで網羅的なマニュアル的内容の中にエッジもあるのが本書の別の魅力です。「結果的に間違っていてもよい。根拠,論拠で間違わないのが大事である(p.7)」などの直言はスカッとしますし,コードの確認や解剖承諾の具体的な聞き方(pp.45-47)などは意外にありそうでなかった(確かにマニュアル的であり,しかもアートな)内容で,かゆいところにも手が届きます。
 本書に込められた魅力はまだまだ語り切れませんが,初版で提示された国際標準+日本・亀田病院のアートの旗を継承されてさらに発展された,抜群に濃度の高い総合内科マニュアルが誕生したと感じます。


エッセンスを秀逸にまとめ 医療現場を助けるコンパクトマニュアル
書評者:矢野 晴美(国際医療福祉大医学教育統括センター副センター長・教授/感染症学・教授)

 現在,日本では,内科系診療の「コア」の部分を担当する専門診療科である「総合内科」または「総合診療科」のさらなる普及と確立が望まれている。総合内科は学会でもコンセプトの普及に尽力し,入院診療では病院総合内科,外来診療ではかかりつけ医としての役割などにおいても日本の実情に合わせた実働がなされつつある。総合診療科も,臓器横断的かつ体系性を持つ専門診療科として,少しずつ設置され普及してきている。本書は,総合内科・総合診療科が重要視され始めた2011年に初版が刊行された。その後10年を経過した2021年に,その改訂版が出されたことは,診療現場にとって朗報である。

 本書は,亀田総合病院で総合内科部長を務める八重樫牧人先生,佐藤暁幸先生が監修し,歴代の素晴らしい研修医,指導医の先生方がその力と思いを結集して編さんされたポケットマニュアルである。研修病院の有数の老舗の優秀な若手医師,国内外で活躍した指導医が共著で執筆されている。世界で共有される良質な科学的なエビデンスと国内事情を加味した使いやすさが特徴である。特に注目したのは,「患者ケアの目標設定」,私の専門領域の「感染症」,「高齢者医療の原則」「疼痛緩和の原則」「ヘルスメンテナンス(健康増進)と予防」である。

 まず,「患者ケアの目標設定」には,診療の開始時に患者ケアをどこまで行うかを現場において多職種で議論しておくことや,アセスメントとプロブレムリストの違いなど,現場で役立つパールが散りばめられている。「感染症」の項は,筆者の専門診療の仲間でもある先生方の執筆で秀逸であり,文献も適切に引用され信頼できる内容である。「高齢者医療の原則」と「疼痛緩和の原則」は,評者もぜひ活用したい。生涯教育の一環としても,臨床医全員が診療に必要な情報である。

 国内の医療現場では,高齢者の増加から,「高齢者」「臓器横断」「緩和医療」「予防」などがキーワードとなり,極めて重要である。どの診療科であっても,これらの考え方と実践が必須の時代となっている。そのような中,その要点を現場で短時間に確認できる本書は,学生,研修医,一般医にとって非常に便利である。今回から,エビデンスレベルと推奨度合いも併記する仕様で,ユーザーに一目瞭然のメッセージを伝えてくれる。際限なく情報は増え,診療業務は複雑化する中で,本書が国内の医療現場に,実践的な要点を提供してくれる役割は大きい。特に予防医学のところを一読していただくことで,予防可能な疾患を,日頃の外来で体系的に予防する診療が普及することを願っている。

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