MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
書評
2021.04.19 週刊医学界新聞(通常号):第3417号より
《評者》 小林 毅 日本医療科学大教授・作業療法学
学生はもちろん臨床家も必読の一冊
令和2年度(2020年度)の入学生から,改正された「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」(以下,「指定規則」)が適用となった。今回の改正では,臨床実習指導者の要件が改正されたことが大きな話題となっているが,カリキュラムの主な見直しとして,「安全かつ効果的な理学療法,作業療法を提供するために,画像評価を必修化」などが指摘されている1)。このように,安全かつ効果的に,対象者に理学療法・作業療法を提供することが求められている。
さて,本書は,序文に記されているように「リハビリテーション治療を効果的かつ効率的に,しかも安全に進めるため」に重要な役割を持つ画像評価について解説している。特に目を引くのは,冒頭に「正常解剖」の画像を掲載し,後に解説されている各疾患・外傷などの画像と比較することで理解が深まる構成となっていることである。また,「中枢神経系疾患」「運動器系疾患」「呼吸器・循環器系疾患」とリハビリテーションに関連が深い疾患・外傷を多彩に網羅している点にも注目すべきである。本書を通読すれば,リハビリテーション診療で接することの多い疾患とその画像を理解し,リハビリテーションにおける予後予測やリスク管理などを確実に進められるようになるだろう。また,随所に挿入されるコラム「Advanced Study」と「Topics」は,臨床へのヒントを与えてくれる重要なアクセントとなっているところも見逃せないポイントである。
私事で恐縮だが,私の学生時代には「画像評価」といった授業はなかったと思う。就職した大学病院のカンファレンスや勉強会で,研修医と一緒に画像の見方を学んでいた。何も知識のない作業療法士に,教授が初歩から教えてくれたことを懐かしく思い出す。
教員として,学生に少しでも画像評価に触れてもらえるように授業の準備を進める中で,基本的な画像の原理から臨床で必要な解釈まで参考となるような書籍を探していたが,これという一冊は見当たらなかった。多くの知人に参考書を問い合わせ,苦労して資料を集める中で本書の発刊を知り,手に取ったときにはまさに「目からうろこ」で,「なぜ,もう少し早く……」と思ったほどだった。
序文には「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の学生や初学者向けに」とも記されているが,学生の参考になるだけではなく,臨床の現場で悪戦苦闘する若き作業療法士,理学療法士や言語聴覚士,彼らを指導する先輩セラピスト,また養成教育に携わる教員にとっても幅広く活用できる内容である。ぜひ,座右に置き,事あるごとに開いて,活用してほしい。
参考文献・URL
1)厚労省.理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会 報告書.2018.
《評者》 岩本 卓也 三重大病院教授・薬剤部長
手元に置きたい,実践に強い本
「いかに副作用を軽減して治療を継続するか」。われわれががん薬物治療を開始するときに必ず考えることである。いくら最新のがん治療,エビデンスの高い治療であっても,実際に治療に耐えることができなければその恩恵を得ることはできない。また,がん治療に前向きな患者ばかりではなく,副作用への心配から自ら治療の道を閉ざしてしまう方もおり,そのような患者に対しては一層丁寧な説明が必要になる。このようなとき,実践に強い参考書,副作用について素早く整理できる本が手元にあると心強い。本書は,好評を博した初版の刊行から3年を経て,さらに内容を充実させた第2版であり,医療従事者に求められる副作用管理のポイント,経験に基づくアドバイスが随所に挿入された実践向けの本である。もちろん,患者に要所を押さえた説明をする際にも最適である。
本書は,抗がん薬投与後に発現する主な副作用を取り上げ,その発現率,好発時期,リスク因子,評価方法をまとめている。また,典型的な症例提示もあり,副作用アセスメントの進め方をイメージできる。そして,第2版では,「患者のみかたと捉えかた」を新設し,腫瘍内科医が身体所見,検査,副作用の評価方法を記載しており,診療の進め方を理解するのに役立つ。また,各論では「味覚障害」「不妊(性機能障害)」「栄養障害」が新たに追加され,「免疫関連有害事象(irAE)」の項目も充実している。
評者ならこの本を次のように活用する。担当患者に新たにがん薬物治療が適用されるとき,抗がん薬による副作用をpp.8-10の一覧表(代表的な抗がん薬と副作用)で大まかに確認する。そして,特に太字の副作用(例えば,血液毒性)については,各論の副作用項目(例えば,発熱,血小板減少など)を参考に,症状,リスク因子,支持療法を確認し,評価項目・方法についてプランを立てる。一方,副作用が出現している場合には,各論から原因となりそうな抗がん薬を推定していく。
本書の多くは,診療に従事しているがん専門薬剤師により執筆されており,いわば,がん専門薬剤師の知を結集した本である。若手の薬剤師は本書を読めばきっと,自信を持って処方提案ができるようになるはずだ。また,副作用対策についてこれほどコンパクトにまとめられた書籍は他に見当たらず,全ての医療職種にお薦めできる一冊である。ぜひ,手元に置いて活用してほしい。
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