画像評価

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「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」の改正により、必修となった「画像評価」。本書では、近年の国家試験の出題傾向を踏まえて、リハビリテーションに関わる医療職が画像をみる機会の多い疾患を厳選して解説した。異常像と比べて理解できるように、各部位の正常像も収載。また、脳画像では予後予測、胸部、骨軟部画像ではリスク管理というように画像をみるうえでのポイントを示し、日々の診療に役立つ1冊となっている。

シリーズ 標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚障害学 別巻
編集 宮越 浩一
発行 2021年01月判型:B5頁:296
ISBN 978-4-260-04267-3
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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  • 序文
  • 目次
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 リハビリテーション治療を効果的かつ効率的に,しかも安全に進めるためには,治療開始当初から適切なリハビリテーション治療計画を立案することが必要となる.このためには適切なリハビリテーション診断が必要であり,画像評価が重要な役割をもつこととなる.
 適切に画像評価ができることで,診断の妥当性の吟味,疾患や外傷の重症度や治療経過の把握,そこから生じる障害の予測が可能となる.そして合併症の早期発見や重症化の予防も可能となる.ここではリハビリテーション治療の対象となる疾患や外傷の画像評価のみでなく,併存疾患に関する画像評価も行うことが望ましい.これらを通じて正確な予後予測やリスク管理が行えることとなる.
 リハビリテーション診療に関連する疾患や外傷は数多く,評価するべき画像は全身に及ぶ.さらに検査方法は単純X線,CT,MRI,PET-CTなどさまざまなものがあり,撮像方法によっても見え方が異なることが多い.このため画像評価に関する知識を網羅することは容易ではない.さらに画像評価は知識のみでなく,ある程度の症例数を見なければ習得することはできない面もあり,十分な能力を身につけるまでには数多くの経験が必要となる.このような点から画像評価に苦手意識をもたれる場合もあると予想される.
 本書では,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の学生や初学者向けに,臨床現場で必須となる画像評価の要点を解説することとした.内容としては,画像所見と予後との関係,画像所見から予測される合併症,それらを考慮した練習の進め方を中心とした.観察するべきポイントに的を絞り,効率よく学習できるように配慮して編集作業を進めた.
 より多くの皆様に画像評価に興味をもっていただき,安全で質の高いリハビリテーション診療が普及することにつながれば幸いである.

 2020年12月
 宮越浩一

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第1章 総論
 1 なぜリハビリテーションに画像評価が必要か?
  ① リハビリテーションを進めるために必要な評価
  ② リハビリテーションの対象となる疾患・障害の評価
  ③ 合併症リスクの予測
  ④ リハビリテーションの阻害因子
 2 画像検査法
  ① 画像検査方法の選択
  ② 単純X線
  ③ CT
  ④ MRI
  ⑤ PET
  ⑥ 骨シンチグラフィー

第2章 正常解剖
 1 脳
 2 脊椎
 3 上肢(鎖骨~手)
 4 骨盤・股関節
 5 下肢(大腿~足)
 6 胸部

第3章 中枢神経系疾患
 1 脳梗塞
 2 脳出血
 3 くも膜下出血
 4 頭部外傷
 5 慢性硬膜下血腫
 6 正常圧水頭症
 7 脳腫瘍
 8 中枢神経の感染症
 9 神経変性疾患
 10 認知症
 11 脱髄疾患
 12 脳性麻痺

第4章 運動器系疾患――脊椎
 1 頸椎椎間板ヘルニア・頸椎症・頸椎後縦靱帯骨化症
 2 環軸椎亜脱臼
 3 脊髄損傷
 4 脊椎圧迫骨折・骨粗鬆症
 5 腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症・すべり症
 6 化膿性脊椎炎

第5章 運動器系疾患――上肢
 1 鎖骨骨折・肩鎖関節脱臼
 2 肩関節脱臼
 3 肩関節周囲炎・腱板断裂
 4 上腕骨近位部骨折
 5 上腕骨骨幹部骨折
 6 肘関節骨折
 7 橈骨・尺骨骨折
 8 手関節骨折
 9 手根骨骨折・中手骨骨折
 10 母指手根中手関節症(CM関節症)

第6章 運動器系疾患――骨盤・下肢
 1 骨盤骨折
 2 股関節脱臼
 3 変形性股関節症・大腿骨頭壊死
 4 大腿骨近位部骨折
 5 大腿骨骨幹部骨折
 6 膝関節周囲骨折
 7 膝関節靱帯損傷・半月板損傷
 8 変形性膝関節症・特発性膝骨壊死
 9 下腿・足関節骨折
 10 踵骨・距骨骨折

第7章 運動器系疾患――その他
 1 骨転移
 2 関節リウマチ
 3 結晶誘発性関節炎(偽痛風,痛風)
 4 化膿性関節炎
 5 異所性骨化
 6 スポーツ障害(疲労骨折・肉離れ)

第8章 呼吸器・循環器系疾患
 1 肺炎
 2 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 3 肺がん(原発性,転移性)
 4 気胸
 5 心不全(肺水腫,胸水)
 6 大動脈瘤・大動脈解離
 7 深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症

Check Sheet
索引

Advanced Study
 ・CTのウィンドウレベルとウィンドウ幅
 ・石灰化
 ・大脳白質病変
 ・脳神経の種類
 ・脳幹の損傷による症状
 ・骨萎縮の分類
 ・大腿脛骨角(FTA)
 ・Trousseau症候群
 ・くも膜下出血を生じた脳動脈瘤に対する手術
 ・急性硬膜下血腫と急性硬膜外血腫
 ・定位放射線治療(ガンマナイフ)
 ・腰椎穿刺による髄液の評価
 ・LSVT
 ・認知症の種類と特徴
 ・治療可能な認知症,認知症と間違えやすい病態
 ・末梢神経系の脱髄疾患
 ・Apgarスコア
 ・在胎期間,出生体重による分類
 ・頸髄症による障害
 ・強直性脊椎骨増殖症
 ・骨粗鬆症の分類
 ・加齢による変化
 ・Modic変化
 ・Bankart病変とremplissage法
 ・橈骨神経麻痺
 ・三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷
 ・Volar tilt
 ・Heberden結節,Bouchard結節
 ・坐骨神経麻痺
 ・静脈血栓塞栓症(VTE)
 ・プレートと髄内釘
 ・膝の障害予防
 ・コンパートメント症候群
 ・Lauge-Hansen分類
 ・遠位脛腓靱帯の評価
 ・Böhler角
 ・Essex-Lopresti分類
 ・骨髄炎
 ・PET-CTと骨シンチグラフィー
 ・多彩な肺炎像
 ・がんのリハビリテーションの分類(Dietzの分類)
 ・画像の撮り方と心胸郭比

Topics
 ・腱板断裂の手術方法
 ・関節リウマチにおけるMRIの有用性
 ・Jones骨折検診

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学生はもちろん臨床家も必読の一冊
書評者:小林 毅(日本医療科学大教授・作業療法学)

 令和2年度(2020年度)の入学生から,改正された「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」(以下,「指定規則」)が適用となった。今回の改正では,臨床実習指導者の要件が改正されたことが大きな話題となっているが,カリキュラムの主な見直しとして,「安全かつ効果的な理学療法,作業療法を提供するために,画像評価を必修化」などが指摘されている1)。このように,安全かつ効果的に,対象者に理学療法・作業療法を提供することが求められている。

 さて,本書は,序文に記されているように「リハビリテーション治療を効果的かつ効率的に,しかも安全に進めるため」に重要な役割を持つ画像評価について解説している。特に目を引くのは,冒頭に「正常解剖」の画像を掲載し,後に解説されている各疾患・外傷などの画像と比較することで理解が深まる構成となっていることである。また,「中枢神経系疾患」「運動器系疾患」「呼吸器・循環器系疾患」とリハビリテーションに関連が深い疾患・外傷を多彩に網羅している点にも注目すべきである。本書を通読すれば,リハビリテーション診療で接することの多い疾患とその画像を理解し,リハビリテーションにおける予後予測やリスク管理などを確実に進められるようになるだろう。また,随所に挿入されるコラム「Advanced Study」と「Topics」は,臨床へのヒントを与えてくれる重要なアクセントとなっているところも見逃せないポイントである。

 私事で恐縮だが,私の学生時代には「画像評価」といった授業はなかったと思う。就職した大学病院のカンファレンスや勉強会で,研修医と一緒に画像の見方を学んでいた。何も知識のない作業療法士に,教授が初歩から教えてくれたことを懐かしく思い出す。

 教員として,学生に少しでも画像評価に触れてもらえるように授業の準備を進める中で,基本的な画像の原理から臨床で必要な解釈まで参考となるような書籍を探していたが,これという一冊は見当たらなかった。多くの知人に参考書を問い合わせ,苦労して資料を集める中で本書の発刊を知り,手に取ったときにはまさに「目からうろこ」で,「なぜ,もう少し早く……」と思ったほどだった。

 序文には「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の学生や初学者向けに」とも記されているが,学生の参考になるだけではなく,臨床の現場で悪戦苦闘する若き作業療法士,理学療法士や言語聴覚士,彼らを指導する先輩セラピスト,また養成教育に携わる教員にとっても幅広く活用できる内容である。ぜひ,座右に置き,事あるごとに開いて,活用してほしい。

●参考文献
1)厚労省.理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会 報告書.2018.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000193257.html


新たな画像評価入門のためのバイブルとして必読の書
書評者:眞渕 敏(社会医療法人祐生会みどりヶ丘病院リハビリテーション部)

 今,学生や療法士に必要とされる画像評価とは何でしょうか。種々の疾病のさまざまな画像を見る中で,その画像の中に隠されている疑問を紐解く鍵を見つけるのは容易なことではありません。

 2017年10月に改正された「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」の科目に医用画像の評価が含まれることになり,画像所見を評価する教育が行われるようになりました。しかし,それまで理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の教育課程において,「画像評価」の科目を対象とした教育は皆無であったと言っても過言ではないと思います。リハビリテーション医療の臨床現場において画像評価は必須です。障害像を捉え,効率的かつ効果的で安全な治療を進めるためには,適切なリハビリテーション診断と治療計画が求められることから,画像評価は重要な役割を持っており,必要不可欠な位置付けにあります。

 本書を手に取り一読すると,画像評価からこんなにも多くの隠された情報が得られるのかと感慨深い思いに駆られます。また,隠された疑問を紐解く鍵を見つけることができた瞬間でもありました。

 第1章では,なぜリハビリテーション医療に画像評価が必要かが説き起こされ,第2章では,読影に必要な解剖学をベースに正常画像が解説されています。第3~7章では,疾患別に疾患の基本・画像の見方・予後との関係・リスク管理・治療の進め方が,簡潔にわかりやすく述べられています。本書には,編者でリハビリテーション専門医である宮越浩一先生と共著者の諸先生方が臨床から得た知見が,療法士への熱いメッセージとして凝縮されています。まさに画像評価の真髄を享受できる一冊となっています。

 一読後,若かりし頃の苦い思い出が浮かびました。ICUカンファレンスで某教授から胸部の画像読影の指名があり所見を述べるなり一刀両断,「この患者の障害と病態を理解しているのか,画像1枚を甘く見るな,予後はお前の専門の理学療法に……,出直してこい」と叱責され,画像評価の重要性と臨床に取り組む姿勢を学ぶ大きな転機となりました。

 本書を熟読することで,画像の一枚一枚が「患者の声なき声」として,何かを伝えようとしていることを真摯に受け止めることができ,病態を思い浮かべながら最適かつ最良の治療に反映することが可能となるでしょう。学生や臨床経験豊富な療法士に留まらず医療従事者まで多くの方に自信を持ってお薦めいたします。

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