MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
書評
2021.02.22 週刊医学界新聞(看護号):第3409号より
《評者》 勝原 裕美子 オフィスKATSUHARA代表
経済学者である著者の看護者への思いこもった一冊
本書は,私が愛読していた同タイトルの初版本を,著者の最新の知見や最近の看護政策に鑑みて大幅に改訂した第2版である。
看護管理に携わっていると,ヒト,モノ,カネをどのように調達して配分するかを考える毎日である。特に,2年に一度の診療報酬,3年に一度の介護報酬の改定は,組織の方向性を確認し,組織の意思決定が新たになされる大事であるため,そのデータの読み解きと予測は,事務部門とともに入念に行われる。政策誘導がどういう意図なのか,なぜ原資が乏しい中でこのような医療資源の配分がなされるのかといったことは,常日頃の情報網からキャッチし,いざ意思決定というときに慌てないように準備する。
さて,ここまでは,多くの管理者が経験していることだと思うが,もし本書を精読して看護サービスの経済,看護労働市場の経済を理解すれば,より大局的にそれらをとらえることができる。そして,より戦略的な意思決定に結び付けることができるであろう。
例えば,次のようなことは,直感的,経験的,常識的にわかっていることだけれども,説明しようとすると難しい。
・一般的に看護師の給料は高いといわれているが,生涯賃金でみたときには本当に高いといえるのだろうか。
・なぜ,賃金の引き上げが難しいのか。
・大学卒の看護師と専門学校卒の看護師の教育の差と給与の差をどう説明するのか。
・クリニカルラダーIのナースもIVのナースも診療報酬上は同じ「1(人)」と数えられることが,経済学的に何を意味するのか。
経済学といえば,難しい数式が出てきそうだが,本書では,それらが極力排除されている。代わりに,身近な例を添えながら,経済学用語は1つずつ丁寧でわかりやすく説明され,これらの問いに素人でもわかるような解説がされているのが,本書の特徴だ。
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