医学界新聞

取材記事

2021.01.25 週刊医学界新聞(看護号):第3405号より

 第40回日本看護科学学会学術集会(会長=聖路加国際大・萱間真美氏)が2020年12月12~13日,「看護科学のImplementation」をテーマに開催された。本紙では,米ラトガース大看護学部教授および聖路加国際大特別名誉教授で,現在は日本看護科学会誌の英文誌編集長も務めるL. Holzemer William氏による特別講演(座長=東大大学院・真田弘美氏)「Competencies for Becoming a Nurse Scientist」の模様を報告する。

 Holzemer氏は,看護科学者に必要なこととして,①指導と管理の能力,②看護科学に対する情熱の2点を紹介し,自身の見解を示した。

 看護教育促進のための米国組織,National League for Nursingの見解に沿えば,指導者(Mentor)は,学習者の学びを促すため,学習のニーズに焦点を当てて動機付けを行うことが重要な役割となる。したがって①「指導と管理の能力」については,まず指導者が学習者のことを知る必要があり,学習者のバックグラウンドに合った仕事を提供して有意義なフィードバックを頻繁に行うことが,モチベーション向上につながるという。さらに学習者の批判的思考と生涯学習者としての素質を育むためには,他領域の専門家との交流や学際的な場面で指導者自らがリーダーシップを取り,手本となるべきだと強調した。

 続けて,看護科学者に欠かせない②「看護科学に対する情熱」については次の3つのポイントを挙げた。1つ目は,自身の研究領域に関する知識を掘り下げ,その内容を詳細かつ明確に述べられるようになること。特にキャリアの初期段階では自身の研究プログラムへの注力が大切だと述べた。2つ目は,積極的に成果を公表し,論文が採択されたらすぐに次の論文の提出準備を行うサイクルを途切れさせないこと。さらにテレビ等のメディアにも出演し,看護科学の社会への貢献をより多くの人に伝えてほしいと語った。3つ目は,外部と交流し支援を受けること。他領域の専門家と積極的に知見を交換し,互いのプロジェクトに協力し合うことが重要だと訴えた。

 「看護科学をより進化させるために,領域や文化,国境の垣根を超えて,自身の専門性を生かしながら,進んでリーダーシップを取ってほしい」と呼び掛け,発表を締めくくった。

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