『どもる体』の著者,伊藤亜紗氏が第42回サントリー学芸賞受賞
取材記事
2021.01.11 週刊医学界新聞(レジデント号):第3403号より
美学者であり,障害をもつ方の体を中心に研究を続ける伊藤亜紗氏(東工大)が第42回サントリー学芸賞[社会・風俗]部門を受賞し,贈呈式が12月15日,東京會舘(東京都千代田区)にて行われた。受賞者8人のうち5人が女性で,過半数を超えるのは賞史上初めて。氏の受賞は,『記憶する体』(春秋社)をはじめとする一連の著書〔『どもる体』(医学書院),『ヴァレリーの芸術哲学,あるいは身体の解剖』(水声社)等〕が対象となった。
今回,[社会・風俗]部門で伊藤氏が選出された理由について,選考委員の玄田有史氏(東大)は,伊藤さんの仕事から,障害など,どうしようもない困難と折り合いをつけている人間への肯定,愛おしさを感じる。その在り方は,同じく困難や理不尽さが満ちている[社会・風俗]で生きることの肯定につながる,と述べた。
伊藤氏の受賞のスピーチも,確かにそうした肯定を強く感じるものだった。
新型コロナウイルス感染症第1波のピークとなった3~4月,世間で流言飛語が飛び交う様子に伊藤氏は「言葉に根が張らない」感じを受け,神経症気味になっていたという。その状況を知った全盲の友人から声を掛けられ,Zoomで障害をもつ友人などと集まる機会を得た。画面越しに彼らの体から発せられる言葉,そしてその発し方や態度を氏は「五臓六腑に染み渡った」と表現した。コロナ禍では,特に「ふれる/さわる」ことについて大きな制限が課されている。一方,彼ら障害をもつ人は,視覚がなくても人を見るなど,障害をもたない人とは異なる形で,本質を保ったまま,どう接触するか,自分の体で考えてきた人たちである。その上で氏は,「彼らから学ぶ気持ちで,研究者として,そうした体の言葉を大切にしていきたい」と述べ,スピーチを締めくくった。
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