医学界新聞

2019.12.02



Medical Library 書評・新刊案内


がん化学療法レジメン管理マニュアル 第3版

濱 敏弘 監修
青山 剛,東 加奈子,池末 裕明,内田 まやこ,佐藤 淳也,高田 慎也 編

《評者》河原 昌美(愛知学院大薬学部教授・臨床薬剤学)

臨床現場の薬剤師の仕事を強力にサポート

 がん化学療法の進化は著しく,多くの新薬が発売され,おびただしい数の新しい臨床試験結果が報告される。これらの膨大な情報を適切に整理して実臨床に使うことは容易ではなく,本書は臨床現場の薬剤師の仕事を強力にサポートしてくれる内容になっている。罹患率が高く,遭遇する可能性が高い9つのがん種を選択し,標準治療として頻用される77種類のレジメンと,支持療法薬として用いられる4種類の薬剤を加えた81種類のレジメンが掲載されている。乳がんのアロマターゼ阻害薬の3種類のレジメンは同時比較して記載,肺がんのチロシンキナーゼ阻害薬に関しても相違が一目でわかるように工夫されている。新規抗がん薬が多く登場している大腸がん,肺がんは,副作用対策の末梢神経障害,下痢,悪心・嘔吐対策を詳細に紹介し,免疫チェックポイント阻害薬では,患者の訴えから疑われる副作用と対策をアセスメントできるように,一覧表が掲載されている。

 レジメン監査時にチェックすべき項目(検査値,併用薬,支持療法薬)と減量・中止・再開に関する基準はもちろんであるが,薬剤師目線で,調製法,溶解後の安定性,内服抗がん薬の簡易懸濁に関する情報も載せられている。特筆すべきは「レジメンと副作用対策」として,抗がん薬と支持療法薬を含めた投与スケジュールとともに,頻発する副作用の発生時期とその対策が表にまとめられていることだ。抗がん薬投与開始からの経過と対応を一目で判断できるため,薬歴を見るように違和感がなく現在の状態を確認できる。レジメンごとに「副作用マネジメント」として発現率,評価と観察のポイントと具体的な支持療法薬の投与法から患者ごとの調節の仕方など,痒いところに手が届くように紹介される。その上,おそらく執筆者らの貴重な経験に基づいた実践的な「薬学的ケア」の事例紹介と解説が付記される。これらの事例は,薬剤師の視点からの介入が何であるかを,解説を通してわかりやすく示してくれている。参考になる情報や引用文献も数多く掲載され,多くの書籍やガイドライン,インターネットを駆使して探し出さなければならない情報を,いとも簡単に手に入れることができる。これは,臨床でがん患者さんに対応する薬剤師にとって魔法のような本だと思う。

 本書は,レジメンの「監査」ではなく「管理」マニュアルであり,がん化学療法中の全ての出来事に関して,薬剤師がなすべきことを詳細に適切に紹介してくれている。編者は,第一線で活躍するがん専門薬剤師たちであり,執筆者の面々の日頃の血と汗と涙の結晶が凝縮されているだろうことを感じる。この本の通りに実践すると,がん化学療法に初めて接する薬剤師でも間違いのない患者管理ができる,価値あるマニュアルであることは間違いない。

 最後に,大学の先生方や保険薬局の薬剤師の先生方にも,がん化学療法に対する薬剤師のかかわり方を知る良書となると考える。

B6変型・頁638 定価:本体4,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03837-9


緑内障道場
診断・治療の一手ご指南

木内 良明 編

《評者》山本 哲也(岐阜大教授・眼科学)

緑内障上級者になるために格好の書籍

 書籍タイトルが面白い。また,随分と変わった形式としたものである。そんな思いを抱きながら通読したところ,編者の木内良明教授(広島大)の采配が随所ににじみ出ていることに気が付いた。良書である。

 内容を簡単に紹介すると,緑内障の診断や管理に関する独立した24件の症例が取り上げられている。症例はよく練られていて,例えば,「本当に正常眼圧緑内障でしょうか?」とか「認知症患者への緑内障診療はどのように進めればよいでしょうか?」など,日常診療でよく悩む状況が設定されている。症例ごとに,必要にして十分な症例呈示がなされ,それに対しての基本お二人の緑内障専門の先生の丁寧なコメントが並び,その後の経過へと続き,最後に木内師範のまとめとなる。

 いずれの症例も日常的なものであるだけに,示唆に富むコメントを含んだ24の症例検討が実臨床に役立つことは間違いない。また,私にはコメントされた先生方の思考回路がよく理解でき,読後感の良い読み物であった。面白かったのは,一部の症例においてお二人のコメントが全く異なる見解を出していたことである。どこであるかは読んでのお楽しみということにしておくが,それだけ緑内障が奥深いということだろう。

 時間の取れない方は本書を飛ばし読みするかもしれない

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