緑内障道場
診断・治療の一手ご指南

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雑誌『臨床眼科』で好評を博した連載「熱血討論!緑内障道場 診断・治療の一手ご指南」を書籍化。連載で取り上げた24症例に加え、緑内障診療にあたっての心構えを説いた「門下生心得」や、診療に必須のキーワードや診療のコツなどを読みやすい語り口で紹介するコラム27本を追加。緑内障の「困った症例」への対処法を、百戦錬磨の”師匠”が手ほどきいたします。
編集 木内 良明
発行 2019年04月判型:B5頁:280
ISBN 978-4-260-03840-9
定価 9,900円 (本体9,000円+税)

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 この度,『臨床眼科』誌(医学書院)において24回にわたり連載された「熱血討論! 緑内障道場―診断・治療の一手ご指南」を書籍としてまとめることになりました.同連載は,日本臨床眼科学会,日本眼科手術学会などのインストラクションコースで活動している「関西緑内障道場」,「中四国緑内障アカデミー」のメンバーを中心に,対応に苦慮した実際の症例をご呈示いただき,緑内障診療のエキスパートにその対処法をレクチャーいただくものです.
 症例検討の様子を道場に模し,門下生(症例呈示者)が師匠(エキスパート)に指南を仰ぐのですが,各症例をご覧いただくとわかる通り,困った症例を携えて道場の門を叩いた門下生が,あるときには師匠となって悩める他の門下生に救いの手を差し伸べています.本道場では,誰もが門下生であるとともに,誰もが師匠でもあるのです.それぞれの貴重な経験を共有する場が,この「緑内障道場」です.
 そんな「緑内障道場」には,以下の3つの掟があります.

1.明るく楽しく緑内障を学ぶべし
2.道場内は建前ではなく本音で語るべし
3.患者から学ぶ姿勢を大切にすべし

 特に2つ目の“本音で語る”(うまくいかなかった症例についても率直に語る)ことが,本道場の特長の1つだと思います.目の前の患者さんをどのように治療すればよいか途方に暮れているのは,あなただけではありません.同じような経験は,他の誰かもしているのです.「緑内障道場」には,それを乗り越えるためのヒントが,あちらこちらにちりばめられています.
 連載を書籍としてまとめるにあたり,情報のアップデートを図ったのはもちろんのこと,「門下生心得10か条」をあらたに付け加えました.また,連載時には誌面の都合で触れることができなかった緑内障診療のちょっとしたコツ,確認しておきたいキーワードを27本のコラムとして追加しています.連載をご愛読くださった先生方にも,きっとお役立ていただけるものと思います.
 本書をご覧いただき,みなさんの“困った”が1つでも多く解決されることを願っていますが,もし本書をご覧いただいても“困った”が解決されなかった際は,ぜひとも本道場までお知らせください.“道場破り”はいつでも大歓迎です.

 2019年2月
 緑内障道場 師範 木内良明

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緑内障道場 門下生心得
 門下生心得10か条
  心得その1 基本の基本,プロフェッショナルの流儀
  心得その2 緑内障の専門医は孤高のピッチャーである
  心得その3 よいお医者さん
  心得その4 一日ずつ,人生最高の日にしよう
  心得その5 負けない心を鍛える
  心得その6 あなたはそこに
  心得その7 「様子見ようや」ではなく「今でしょ」
  心得その8 基本を守る
  心得その9 予想外のこと 自然災害
  心得その10 10年後の自分

診断基礎
 症例01 緑内障でしょうか? 乳頭低形成でしょうか?
       視神経乳頭の診かた
 症例02 緑内障を疑いますが視野検査に明らかな異常はありません!
       視野検査の診かた
 症例03 病型診断に迷っています.隅角検査のポイントをご指南ください!
 症例04 診断に迷っています.眼底OCTの診かたをご指南ください!
       緑内障と診断された乳頭低形成
 症例05 若年男性が急性緑内障発作で来院しました!
       緑内障発作の診断と治療
 症例06 治療方針を立てる際,眼圧日内変動をどのように
       解釈・活用すればよいでしょうか?

診断確定後の治療方針
 症例07 眼圧コントロールは良好ですが,視野障害進行が否定できません!
       緑内障悪化の判定
 症例08 小児の高眼圧症への治療方針をご指南ください!
 症例09 経過観察? レーザー虹彩切開術? 水晶体再建術?
       原発閉塞隅角症
 症例10 本当に正常眼圧緑内障でしょうか?
       NTGの診断と治療
 症例11 眼圧再上昇症例への次の一手,ご指南ください!
       血管新生緑内障に対する抗VEGF治療
 症例12 超々高齢者への治療方針をご指南ください!
       落屑緑内障への対応

治療中の疑問
 症例13 自覚症状のない患者さんが点眼薬を使ってくれません!
       緑内障患者のアドヒアランス
 症例14 点眼治療を行い眼圧は低いのに視野障害が進行します!
 症例15 患者さんが妊娠しました!
 症例16 認知症患者への緑内障診療はどのように進めればよいでしょうか?
 症例17 チン小帯脆弱眼に緑内障手術を,緑内障末期眼には白内障手術を
       しなければならなくなりました!
 症例18 Laser gonioplastyは何に適応するのでしょうか?

合併症対策
 症例19 トラベクレクトミー後にデレンが発生しました!
 症例20 チューブシャント手術2年後に再度眼圧が上昇しました!
 症例21 経口アセタゾラミドをこのまま長期内服しても大丈夫でしょうか?
       糖尿病と炭酸脱水酵素阻害薬
 症例22 トラベクレクトミー後に低眼圧黄斑症を発症しました!
 症例23 術後,遷延性の角膜障害が発症しました!
       ドライアイ患者への緑内障手術
 症例24 トラベクレクトミー後,眼圧はよいのに脈絡膜剥離が出てきました!
       術後の浅前房と高眼圧

索引

コラム
 01 神経線維層欠損(NFLD)
 02 前視野緑内障(PPG)
 03 視野検査の信頼性評価,私のコツ
 04 隅角所見の分類
 05 OCTを用いた緑内障診断のポイント
 06 OCTアンギオグラフィ
 07 プラトー虹彩:診断と治療
 08 眼圧日内変動と術式選択の関係
 09 点眼治療の原則
 10 小児の緑内障
 11 点眼薬でコントロールできない閉塞隅角緑内障の治療
 12 正常眼圧緑内障(NTG)の目標眼圧設定
 13 未承認薬・適応外使用薬と研究倫理
 14 高齢患者の検査,私のコツ
 15 病状説明,私のコツ
 16 緑内障性視神経障害のリスクファクター
 17 妊婦への手術治療
 18 認知症患者の診察,私のコツ
 19 緑内障と白内障の同時手術
 20 隅角癒着解離術(GSL)
 21 低侵襲緑内障手術(MIGS)
 22 トラベクレクトミー後のデレン
 23 バルベルト®緑内障インプラント手術update
 24 硝子体術後の続発緑内障
 25 網膜皺襞をOCTで観察するコツ
 26 点眼薬と角膜上皮障害
 27 シリコーンオイルタンポナーデと緑内障

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緑内障上級者になるために格好の書籍
書評者: 山本 哲也 (岐阜大教授・眼科学)
 書籍タイトルが面白い。また,随分と変わった形式としたものである。そんな思いを抱きながら通読したところ,編集の木内良明教授(広島大)の采配が随所ににじみ出ていることに気が付いた。良書である。

 内容を簡単に紹介すると,緑内障の診断や管理に関する独立した24件の症例が取りあげられている。症例はよく練られていて,例えば,「本当に正常眼圧緑内障でしょうか?」とか「認知症患者への緑内障診療はどのように進めればよいでしょうか?」など,日常診療でよく悩む状況が設定されている。症例ごとに,必要にして十分な症例呈示がなされ,それに対しての基本お二人の緑内障専門の先生の丁寧なコメントが並び,その後の経過へと続き,最後に木内師範のまとめとなる。

 いずれの症例も日常的なものであるだけに,示唆に富むコメントを含んだ24の症例検討が実臨床に役立つことは間違いない。また,私にはコメントされた先生方の思考回路がよく理解でき,読後感の良い読み物であった。面白かったのは,一部の症例においてお二人のコメントが全く異なる見解を出していたことである。どこであるかは読んでのお楽しみということにしておくが,それだけ緑内障が奥深いということだろう。

 時間の取れない方は本書を飛ばし読みするかもしれないが,それは推奨しない。緑内障の師範をめざすのであれば,最初にある症例呈示の部分を,多数添付されている所見と共にじっくり読んでほしい。10分くらいかけて症例を理解し,自分ならどうするか回答を用意してからコメント以下を読むようにしたい。そうすると,よく理解でき,また,序文にある「1.明るく楽しく緑内障を学ぶべし,2.道場内は建前ではなく本音で語るべし,3.患者から学ぶ姿勢を大切にすべし」の3つの掟にもかなうことになる。

 しいて欠点を挙げるとすると,眼底や隅角図の中に小さくて所見が読みにくいものが少しあるということであろうか。また,緑内障診療の経験がごく少ないとこの本の機微に触れることは難しいと思われる。

 まとめると,本書は緑内障上級者になるために格好の書籍ということになる。本書にあるような症例を1例1例理解し,またそのバリエーションを実臨床で診ていくことが,緑内障師範への近道である。熟読に足る書籍として本書を推薦したい。
「緑内障道場」のここが面白い
書評者: 杉山 和久 (金沢大教授・眼科学)
 本書を読んでまず感じたことは,「緑内障道場」はまさに「症例から学ぶ緑内障」の書であることです。本書は,日常の緑内障診療で遭遇するさまざまな症例を体系的に提示して,その解決方法を指南役のエキスパートの先生の経験やエビデンスに基づいて解説する方式で,各症例の最後に師範(木内良明教授)からの一言(コメント)でまとめられています。これは,私の緑内障の研究方法である「症例から学び研究する緑内障学」に通ずるものを感じます。

 緑内障外来は緑内障を勉強する教室(道場)であり,緑内障症例である患者さんこそが,緑内障を教えてくれる先生という思想を,私は本書から感じ取りました。患者さんの病態をどう解釈し,治療方針を立てるかについて,指南役のエキスパートの先生方(主に関西緑内障道場,中四国緑内障アカデミーのインストラクターの先生)が解説しますが,これがなかなかユニークで読んでいて面白いです。師範の一言も「緑内障の俳句」があり,ほっと一息つきます。さらに,この書に提示された症例の中には多くの研究のseeds(種)があります。症例から発生した疑問点を解決するための研究のヒントが満載です。

 本書を読んで感じることは,緑内障の対応に苦慮した典型症例を「サイエンスの目」で観察していること,ここにさまざまな疑問点が生じます。そしてそれを眼科学という学問の「眼」で考察し,現在のエビデンスに基づいた対処法を提示してます。これがまさに学問としての緑内障学でしょう。そして,私はここに記載されているさまざまな症例から,研究の「芽」,すなわちseeds(種)が生じて,新たな研究へと発展していくことを念じてやみません。これこそが私の診療の哲学である「サイエンスの目,眼,芽」であるからです。

 本書は緑内障外来で経験するさまざまな事象が体系的にまとめられているので,通読して面白い本だと思います。私もこの書を手にして,一気に読んでしまいました。それぐらい面白く勉強になる本です。これを,これから緑内障を勉強する人だけでなく,緑内障外来で悩んでいる人,緑内障を研究している人にも推薦したいと思います。

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