映画『人生,ただいま修行中』監督インタビュー(ニコラ・フィリベール)
2019.11.25
【interview】
「看護師は人間的に豊かな職業。看護ほど,他者との濃密な関係を築く仕事はほかにない」
ニコラ・フィリベール氏(『人生,ただいま修行中』監督/撮影/編集)に聞く
“現代ドキュメンタリー作家の最高峰”とも言われる映画監督が,最新作で選んだ舞台は看護学校だった。『人生,ただいま修行中』は,仏パリ郊外の看護学校で学ぶ40人の学生に150日間にわたって密着取材を行い,その成長を描いたドキュメンタリーだ。世界的な名匠がなぜ,看護教育の現場を題材に選んだのか。11年ぶりに来日したニコラ・フィリベール氏に話を聞いた。
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『人生,ただいま修行中』(原題:De chaque instant,2018年・仏) |
仏パリ郊外の看護学校。年齢・性別・出身の異なる40人の学生たち。採血や抜糸,ギプスを外すことなど全てが初めての体験であり,実習の日々に悩みを抱えながらも一人前の看護師になるために奮闘する――。第71回ロカルノ国際映画祭公式出品,第44回セザール賞最優秀ドキュメンタリー賞ノミネート,第24回リミュエール賞ドキュメンタリー部門ノミネート。日本では2019年11月より全国で絶賛公開中(配給=ロングライド)。
©Archipel 35, France 3 Cinéma, Longride -2018 |
――看護を題材に選んだ経緯から教えてください。
フィリベール 美術館や小学校など,これまでにさまざまな題材で作品を発表してきた。その中には,私がテーマを選ぶのではなく,あたかもテーマ自体が私に近づいてくるような経験もありました。
今回もそうです。私は2016年に救命救急室に運ばれ,肺塞栓症と診断され集中治療室で加療を受けました。快復後しばらくしてから,看護の世界を作品の舞台とすることを思い立ったという経緯です。
看護師にオマージュを捧げたい
――医師ではなく看護師,しかも教育現場を選んだのはなぜですか?
フィリベール 患者にとっては,看護師は医師よりも身近な存在です。そして,医師と同じくらい重大な責任を負っている。にもかかわらず,欧州では社会的評価が高くありません。ですから,私は看護師の皆さんにオマージュを捧げたいと思ったのです。
病院ではなく看護学校を舞台に選んだのは,修行中の身である看護学生に関心を持ったからです。看護師になることの大変さ,身につけるべき事項の複雑さ,努力の道のりを観客に伝えるには,看護学生の成長を描くほうがよいだろうという判断です。
――『音のない世界で』や『ぼくの好きな先生』など,以前から学びの場に焦点を当てた作品を発表されています。
フィリベール 学びの場は不安を伴う一方で,将来への希望であふれています。だからこそ日々がはかなくて美しいものであり,感動を呼び起こすと思うのです。私自身も撮影中は看護のことをゼロから学んでいる最中です。お互いが修行中の身であって,楽しんで撮ることができました。
――監督ご自身でカメラを回しているとのことですが,被写体とはどのように接するのでしょうか。
フィリベール 私の場合は現場に入り込んで,被写体となる人々と積極的にかかわります。かつて仏の精神科病院であるラ・ボルドを舞台に作品を撮ったときもそうでした(『すべての些細な事柄』,1996年)。病院に着いたら,午前中はカメラを脇に置いて,患者さんとお茶を飲んだり,散歩やカードゲームをしたりして過ごします。カメラを回すのはごく一部の時間でしかありません。私にとっては,人々との関係性を築くことのほうが重要なのです。
今回の作品で撮影に応じてくれた看護教員・学生とも友好関係を築くことができました。彼・彼女たちは映画に出演できたことを誇りに思ってくれています...
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