医学界新聞

2019.11.04



第27回総合リハビリテーション賞決定


 第27回総合リハビリテーション賞の贈呈式が9月19日,医学書院(東京都文京区)にて行われた。本賞は,『総合リハビリテーション』誌編集顧問の上田敏氏が東大を退官する際(1993年)に金原一郎記念医学医療振興財団に寄付した基金を原資として発足。今回は2018年発行の同誌に掲載された投稿論文36編を選考対象とし,最も優れた論文に贈られた。

写真 渡邉良太氏
 受賞論文は,渡邉良太氏(津島市民病院/理学療法士)他による「フレイルから改善した地域在住高齢者の特徴――JAGES縦断研究」[総合リハビリテーション. 2018; 46(9): 853-62.]で,フレイルの状態から改善した地域在住高齢者の要因を,日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)プロジェクトのデータを用いた縦断コホート研究で明らかにしたもの。対象である65歳以上の地域在住高齢者を基本属性,身体・心理・社会的要因,生活習慣を含む23要因において男女別に分析したところ,フレイル改善に有意な関連を示したのは歩行時間30分/日以上(男女),手段的日常生活活動(IADL)自立(男女),友人と会う頻度月1回以上(男女),肉・魚摂取頻度週4回以上(女性)など15要因であった。渡邉氏らは,フレイルからの改善には,歩行時間や食物摂取頻度などの生活習慣のみならず,社会的要因に着目した介入が有用な可能性があると結論付けた。

 『総合リハビリテーション』誌編集委員を代表して橋本圭司氏(はしもとクリニック経堂)は,「超高齢社会に直面しているわが国において,フレイルの改善要因を探ることは極めて有意義であり,今後の研究や介入において貴重な資料となる」と講評した。受賞のあいさつで渡邉氏は,今後について「理学療法士が着目しやすい患者の身体的要因に加え,心理社会的要因にも着目することの重要性を理学療法の世界に浸透させる研究を続けたい」と抱負を語った。

 『総合リハビリテーション』誌では2019年にも,同年に掲載された投稿論文から第28回総合リハビリテーション賞を選定する。同賞の詳細については,同誌投稿規定を参照されたい。

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