医学界新聞

2019.07.22



第24回日本緩和医療学会開催


 第24回日本緩和医療学会学術大会(大会長=阪大大学院・荒尾晴惠氏)が6月21~22日,「緩和ケアのArt & Science」をテーマにパシフィコ横浜(横浜市)で開催された。緩和医療の進展に人材育成の面から寄与した「がんプロフェッショナル養成プラン(以下,がんプロ)」は第3期を迎えた。がんプロの成果と展望を議論したシンポジウム「がん医療を担う人材の育成におけるがんプロフェッショナル養成プランの役割」(座長=岡山大大学院・松岡順治氏,兵庫県立大・川崎優子氏)の模様を紹介する。


 2006年のがん対策基本法制定により,がん医療に携わる医療人材の育成が進んだ。2007年度よりがん専門医療人養成の教育拠点構築を目的に,全国18拠点95大学にて開始されたがんプロは,2016年度の第2期終了までの10年間に5000人を超えるがん専門医療職を育成してきた。第3期の現在は「多様な新ニーズに対応する『がん専門医療人材』養成プラン」が実施されており,ゲノム医療従事者や希少がん・小児がんに対応できる医療人材およびライフステージに応じたがん対策を推進する人材養成をめざす。

がんプロが専門家養成に貢献

荒尾晴惠大会長
 事業開始時からがんプロにかかわる全国がんプロ協議会会長の松浦成昭氏(大阪国際がんセンター)は,がんプロのあゆみと成果を報告した。がんプロ修了生約5000人のうち約900人が放射線治療専門医,がん看護専門看護師などの専門資格を取得。氏は,人材不足が指摘されていたがん医療領域の人材育成に貢献したと総括し,がん診療連携拠点病院で働くがんプロ修了生によるがん医療のさらなる質向上と均てん化の推進に期待を寄せた。一方,がんプロの知名度向上,養成数の目標達成に至っていないがん専門薬剤師や緩和医療専門医の増加,継続した予算確保などを今後の課題として挙げた。

 東京医歯大の緩和ケア病棟立ち上げ時から第2期がんプロに携わる三宅智氏(東京医歯大大学院)は同大の教育体制を紹介し,医師の緩和ケア教育におけるがんプロの役割を解説した。がんプロ養成課程の意義について氏は,がんに関する最先端の情報を得て,がん診療やがん研究の全体像を俯瞰できる点にあると評価。加えて,がんと緩和ケアを治療面で結び付けるには,緩和ケアに関する卒前,卒後,そして大学院と一貫した教育システムの構築や,各診療科・研究分野同士の連携が重要であると主張した。

 内布敦子氏(兵庫県立大)は,がんプロによるがん看護教育の発展について振り返った。がんプロ開始時は104人だったがん看護専門看護師数は2019年に833人となり,がん領域のスペシャリスト増員にがんプロが大きく貢献したと報告した。がんプロの実施により①医学教育との連携,②他職種との連携,③看護領域内での連携,④患者・看護師間の交流推進につながったと考察。中でも①医学教育との連携は,看護学と医学の異なるパラダイムを超越した理解に寄与していると語った。今後は「両者の協働のもと,患者の視点を考慮した医療を提供することに目を向けてほしい」と参加者に求めた。

 がんプロ1期生としてがん看護専門看護師の資格を取得し,現在教員としてがんプロに携わる市原香織氏(阪大大学院)は,自身の経験を交え,がんプロ修了者の活躍の場を紹介した。緩和医療において看護師は,チーム内役割の調整や,患者教育,市民への啓発活動などの役割を担う。看護師はがん医療全体をとらえながら,自身の専門性と緩和医療が結び付く学習体験や実践が重要だと氏は考察。がん体験者や家族の視点を学ぶことも必要と訴えた。

 総合討論では,専門資格を有する看護師の給与体系の見直しや,管理者への登用を求める意見が挙がった。

シンポジウムの模様

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