健康長寿社会の実現に向け一丸に(第30回日本医学会総会2019中部開催)
2019.06.03
健康長寿社会の実現に向け一丸に
第30回日本医学会総会2019中部開催
第30回日本医学会総会2019中部の学術集会が2019年4月27~29日の3日間,齋藤英彦会頭(名大名誉教授)のもと,名古屋国際会議場(名古屋市)など3会場で開催された。テーマは「医学と医療の深化と広がり――健康長寿社会の実現をめざして」。本総会では,基本構想である4つの柱①医学と医療の新展開,②社会とともに生きる医療,③医療人の教育と生き方,④グローバル化する日本の医療に沿ったセッションが企画され,分野横断的な医学・医療の重要課題について議論が交わされた。
日医会長・横倉義武氏 | 日本医学会会長・門田守人氏 | 名大大学院・天野浩氏 |
今回から,若手研究者の参加を呼び掛けるために「日本医学会総会奨励賞」を新設。生理系・病理系,社会医学系,内科系,外科系に分け,各分野40歳以下の研究者を対象に公募を行い,学会当日には受賞者による研究内容の発表および表彰式が開催された。市民展示「健康未来EXPO 2019」は3月30日~4月7日までポートメッセなごや(名古屋市)で開かれ,30万人を超える来場者を記録した。
齋藤英彦会頭 |
会頭講演では「医学・医療と生老病死――不変の精神と技術革新」をテーマに齋藤英彦氏が,超高齢社会である日本の課題に平均寿命と健康寿命の差〔男性8.84年,女性12.35年(2016年のデータ)〕を挙げた。氏は,仏教の四苦「生老病死」を引き合いに,近年の生活環境,衛生・栄養状態の向上や医療の技術革新から「老病」の期間が延長したと分析。健康寿命延伸のため,特に「病む人」への全人的な理解と温かなサポートを医療者に求めた。 |
リアルワールドエビデンスが未来の医療を席巻
診療録,レセプト,DPCデータなどのリアルワールドデータ(RWD)を解析し,エビデンスを得ようとするリアルワールドエビデンス(RWE)構築の動きが近年活発化している。この潮流は,薬剤の効能や治療法等への正確な評価を目的とする臨床研究の被験者に対して,「リアルワールドを反映していない」「外的妥当性が低い」等の問題が生じることに端を発しており,RWEの構築に注目が集まる。
RWEとランダム化比較試験から得られるエビデンスは互いを補完するような関係であり(表),RWEは疾患レジストリや治療法に着目してデータの収集・研究を行うため,population basedの疫学研究とも目的が異なる。
表 リアルワールドエビデンスとClinical Trialの比較(植田氏提供)(クリックで拡大) |
学術プログラム「生活習慣病とリアルワールドエビデンス」(座長=琉球大大学院・植田真一郎氏,東大大学院・門脇孝氏)では,RWEの構築の進捗状況について議論が交わされた。
糖尿病標準診療テンプレートを用いることで,参加施設の糖尿病患者の診療データを自動的に収集する日本糖尿病学会の取り組み「J-DREAMS」を紹介したのは,研究代表者である植木浩二郎氏(国立国際医療研究センター)。2019年4月時点の参加施設は51施設,5万2000例が登録されていることを明かした。今後はJ-DREAMSで得られたデータを生かしつつ,個別化した糖尿病治療の実施へ向け,AIによるアルゴリズム解析なども視野に入れていると述べた。
高血圧患者のレセプトデータをもとに,大石充氏(鹿児島大大学院)は降圧薬の使用実態を発表した。解析によると,近年,降圧薬自体の処方は増加,使用薬剤はCa拮抗薬(CCB)もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が中心であり,利尿薬の使用頻度は高くないことが判明している。第一次選択薬に限れば,CCBの使用は徐々に増加し,2012年を境にARBに代わり最も使用されるようになった。また,合併症別の降圧薬使用ではガイドライン推奨の使用例との乖離が浮き彫りとなったことで,後方視的な研究だけではなく,臨床データとリンクさせたリア
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