医学界新聞

2019.04.29



Medical Library 書評・新刊案内


シュロスバーグの臨床感染症学

岩田 健太郎 監訳

《評者》青木 眞(感染症コンサルタント)

現場の今を生きる専門家による価値ある大著

 一見,そのボリュームに圧倒されるが,すごみを感じるのは実は各章を丁寧に読み込んだときである。余計なことは書かれておらず,しかし臨床的に大切なことが満載である。「簡にして要を得たり」とはこの本なのだろう。評者も見開き2ページを消化するのに30分もかかることがあった。

 ある意味,網羅的な知識は誰でも書けるが,昔から変わらず現場で重要なこと,新しいが現場に大きなインパクトを与えるテクノロジーのみを抽出できるのは,その領域の「今」を生きている専門家しかいない。恐らく本書の価値は各章が,そのような「現場の今を生きる専門家」により分担されている点にある。今回は通り一遍の書評を書く代わりに,多くの優れた記述を紹介したい。

 1章(不明熱):p.4~6の表1.2(不明熱のカテゴリー別の病歴,診察所見の手掛かり)とp.7の表1.3(不明熱の非特異的検査)はわかりやすい。バイタルサインと共に,このような安価で日常的に用いられる非特異的検査の中に鍵となる情報が隠されているし臨床医の腕の見せどころである。

 18章(ブドウ球菌とレンサ球菌のトキシックショックおよび川崎病):p.105の本文より「免疫グロブリン静注療法の製剤はスーパー抗原毒素の中和能が(中略)製造ロットによっても違うことがある。そのため,最初の治療に反応が得られなかったケースでは,再治療で別の製剤を用いることを考慮してもよい」。

 29章(急性気管支炎と慢性呼吸器疾患の急性増悪):p.158の本文より「気管支喘息の急性増悪に対する現在の治療選択肢は限られてお...

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