医学界新聞

2019.01.21



Medical Library 書評・新刊案内


ペースメーカー・ICD・CRT実践ハンドブック

Kenneth A. Ellenbogen,Karoly Kaszala 編
髙野 照夫,加藤 貴雄 監訳
伊原 正 訳

《評者》夜久 均(京都府立医大大学院教授・心臓血管外科学)

ハートカンファレンスに臨む多職種の知識補充に最適

 循環器疾患にはさまざまな病態があり,それに対するさまざまな治療がある。その中で中心を貫くキーワードは心不全であり,その病態解明,そして治療は循環器疾患に携わっている医療従事者にとって究極の目標となってくる。今回上梓された髙野照夫先生,加藤貴雄先生,伊原正先生が翻訳された実践的なハンドブックがカバーしている,ペースメーカー・ICD・CRTはまさに心不全の治療の一環である。

 そして,心不全の治療も含めて多くの循環器の治療の方針決定は,現在では内科医,外科医,リハビリテーション関連療法士,臨床工学技士,看護師などの多職種が集まるいわゆるハートチームカンファレンスでなされることが,循環器治療のさまざまなガイドラインでクラスIのレベルで推奨されている。つまり,内科医,外科医が,目の前に現れた患者に自分たちのできる治療をとりあえず行うのではなく,多職種でカンファレンスを行うことにより,患者の人生の時間軸の中で,どのような治療をどの時点で介入させていくのかを,透明性を持った形で決定することが非常に重要となっている。

 その場合,ハートチームカンファレンスが有効に機能するためには,全ての職種の者が,循環器の治療の動向をある程度把握しておく必要がある。ペースメーカー・ICD・CRTの治療に関しても,実際に治療を施す医師はその分野に精通した専門医であるが,カンファレンスに参加する者は,非常に専門的ではなくても,ある程度その治療について知識を持つ必要がある。この書籍は,ペースメーカー・ICD・CRTに関して,まさに必要かつ十分な記載になっており,またその基礎となる原理的な内容も含まれており,理解に非常に役立つ。そういった意味で,ハートチームカンファレンスに臨むペースメーカー・ICD・CRTの専門家以外の職種の者が,ディスカッションに参加するための知識の補充にはうってつけの一冊かと思う。

 ぜひ,循環器疾患の治療に携わっておられる多くの職種の方々が本書を手元に置かれ,より充実したハートチームカンファレンスの一助になることを期待する。

B5・頁544 定価:本体13,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03599-6


音声障害治療学

廣瀬 肇 編著
城本 修,生井 友紀子 著

《評者》深浦 順一(国際医療福祉大大学院教授・音声障害学/日本言語聴覚士協会会長)

音声治療を詳説する数少ない教科書

 このたび,音声障害の研究と臨床の基礎を築かれてきた廣瀬肇先生が『音声障害治療学』を上梓された。廣瀬先生は,音声治療を担当する言語聴覚士の育成にも長年力を尽くされてきた。本書においても,言語聴覚士として音声障害の治療・研究に長年取り組んでこられた城本修先生,生井友紀子先生が音声治療(行動学的治療)の理論と臨床について担当している。本書出版の意図が言語聴覚士の音声治療の普及とその技術向上にあることがうかがえる。

 本書の特徴は音声障害の治療に力点を置いていることである。音声障害の治療は,医学的治療と音声治療の両者の特徴と適応をよく理解して行う必要がある。医学的治療に関しては,多くの教科書で詳しく述べられているが,音声治療について詳述した教科書は少ない。本書では,廣瀬先生が医学的基礎・治療,評価から治療までの流れを簡潔に記述され,城本,生井両先生が記述した音声治療(行動学的治療)について多くのページが割かれている。

 また,本書では機能性音声障害という声帯に器質的病変や運動障害を有しない音声障害,すなわち発声法や発声習慣に問題を有する音声障害に対する音声治療を中心に記述されている。音声治療の基本は運動学習であり,運動学習理論に基づくものである。本書の中でも述べられているように,運動学習が維持されるには週3~5日の訓練が必要とされているが,現実の臨床では週1~2回となっており,時間的に十分な音声治療が実施されているとはいえないのが現状である。効果的な音声治療を実施するには,音声障害のタイプや重症度によって異なるが,週3~5回は実施することの必要性が示唆されている。本書に記述された音声治療の内容は,機能性音声障害以外の運動障害性構音障害や全身的状態の変化による音声障害(男性化音声,加齢性音声障害など),喉頭手術の治療前後にも適応できる内容となっている。

 音声障害を主な対象とし,実際に音声治療を実施している言語聴覚士は少ない。しかし,高齢社会を迎え,加齢性音声障害の数は急増している。高齢者の社会参加の促進が叫ばれている本邦において重要な課題である。また,従来その取り組みの重要性が叫ばれている生活習慣による音声障害(声帯結節,ポリープ様声帯など)の予防,運動障害性構音障害における音声の問題という観点からの音声治療も今後言語聴覚士が取り組むべき課題である。

 多くの言語聴覚士が本書を読んで,音声障害で苦しむ方々の治療に取り組んでいただくことを強く希望する。

B5・頁208 定価:本体5,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03540-8


DSM-5
児童・青年期診断面接ポケットマニュアル

Robert J. Hilt,Abraham M. Nussbaum 原著
髙橋 三郎 監訳a
染矢 俊幸,江川 純 訳

《評者》塩入 俊樹(岐阜大大学院教授・精神病理学)

だまされたと思って第3章の36ページだけ読んでください!

 この本の帯には,「子どものこころを診る医療者,必携!」と大きく書いてある。言うまでもなく帯には,限られた小さなスペースの中で,その本を最大限にアピールするような練った言葉や印象に残る短文がつづられている。本書を読んで,この帯に書かれた一文は,ある意味正しく,ある意味正しくないと,私は思った。つまり,この本の内容は,「全てのこころを診る医療者に必携!」なのである。

 このことを証明するために,私はこの本を隅から隅まで読むことを要求しない。この書評のタイトルにあるように,「だまされたと思って第3章の36ページだけ読んでください!」である。300ページを優に超える本書の中のたった36ページ余りを読んだだけで(30分もあれば十分である),この本の価値を十分理解できるし,これまでの知識がきちんと整理されること請け合いである。

 では,この36ページには,いったい何が書かれているのであろうか。第3章の表題は,「共通する臨床的懸念」である。原文が“Common Clinical Concerns”なので,少し堅苦しい和訳となっているが,つまりは,「よくみられる主訴」と言ってよい。筆者らは,本章の冒頭で,「すべての子どもと青年は個性的であるが,若い人達が臨床的関与を求める最も多い理由として一握りの共通の懸念がある」と述べ,子どもが懸念を抱く様式(=症状)は共通していると結論付けている。具体的には,①学業不振,②発達遅延,③秩序破壊的または攻撃的行動,④引きこもりまたは悲哀気分,⑤易怒性または気分の易変性,⑥不安性または回避的行動,⑦頻回で過剰な身体愁訴,⑧睡眠の問題,⑨自傷と自殺念慮,⑩物質乱用,⑪食行動の異常,⑫産後の母親の精神保健,の12である。ここでは,小児期や青年期にはまれとされる,神経認知障害,ギャンブル障害,パラフィリア障害,パーソナリティ障害および性機能不全は外されているが,これだけでも,実は成人期においても十分に通用する。さらに本書では,これらの12の症状について,それぞれ表が作成されている。その中には,「第一に考慮すべきこと」と「よくみられる診断の可能性」という項目があり,それぞれにスクリーニング用の質問例まで記載され,とても具体的ですぐに臨床応用可能となっている。たった36ページにこの内容をまとめた筆者らの力量と熱意がうかがわれる。

 さらに,第4章「子どもの15分間診断面接」と第5章「子どもの30分間診断面接」では,実臨床での有用性を考えた診断面接のノウハウをわかりやすく述べている。「百聞は一見に如かず」,まずは36ページだけ,ぜひ読破していただきたい。

B6変型・頁368 定価:本体4,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03602-3


トワイクロス先生の緩和ケア
QOLを高める症状マネジメントとエンドオブライフ・ケア

Robert Twycross,Andrew Wilcock 編
武田 文和,的場 元弘 監訳

《評者》恒藤 暁(京大病院緩和医療科長)

緩和ケアの奥義を極める

 英オックスフォード大緩和ケア講座の初代主任教授であったトワイクロス先生が1984年に執筆し,武田文和先生が翻訳された『末期癌患者の診療マニュアル』(医学書院,1987年)が出版されてから30年以上が経過した。当時,緩和ケアの実践に関する日本語の書物はほとんどなく,むさぼるように読んで診療に当たったことを思い出す。過去30年においてわが国での緩和ケアの知識と技術の普及には目覚ましいものがあるが,患者に対する心構えについての教示を受ける機会は乏しく,物足りなさを感じていたところに本書が世に出たことは時宜にかなっていると感じる。

 トワイクロス先生はセント・クリストファー・ホスピスの研究所の所長として招聘され,がん患者の痛みの治療法などの研究に励み,その後,「WHO方式がん疼痛治療法」(1986年)の作成会議の専門家委員として中心的な働きをされた。監訳者のお一人である武田文和先生とは,それ以来の深い親交があり,お二人は「WHO方式がん疼痛治療法」の普及活動と医療用麻薬の管理規制の改善に取り組まれている。本書は,トワイクロス先生の50年にわたる緩和ケアの臨床・研究・教育の経験を通して得られた英知の集大成といえるであろう。

 本書を通して,緩和ケアの概要,倫理,コミュニケーション,心理的ケア,スピリチュアルケア,死別ケア,症状マネジメント,緊急事態,アドバンス・ケア・プランニング,エンドオブライフ・ケア,小児緩和ケア,非がん疾患(循環器疾患,呼吸器疾患,神経疾患)のケア,医学教育カリキュラム,エッセンシャルドラッグなどの緩和ケアにおける不可欠な領域を見渡すことが可能である。

 緩和ケア従事者だけでなく,全ての医療従事者が本書を手にして,トワイクロス先生の緩和ケアの奥義を極めていただきたいと心から願っている。

A5・頁440 定価:本体3,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03550-7


《標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚障害学 別巻》
がんのリハビリテーション

辻 哲也 編
高倉 保幸,髙島 千敬,安藤 牧子 編集協力

《評者》内山 靖(名古屋大大学院医学系研究科リハビリテーション療法学理学療法学講座・教授)

多職種連携・チーム医療の本質が具現化されたテキスト

 リハビリテーション科医,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の編集体制によって,2018年4月に『がんのリハビリテーション』が発刊されました。がん対策基本法が2006年6月に成立し,がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が求められました。2007年から,がんのリハビリテーション研修ワークショップ(CAREER)が開始され,医師,看護師,リハビリテーション専門職によるチーム医療の普及啓発が進められています。

 本書は7章272ページと比較的コンパクトですが,病期ごとの実践を念頭に置きつつ代表的ながん種の症状やリスク管理を踏まえて,運動耐容能,摂食嚥下,浮腫に対する具体的な対応に言及し,さらに心のケアについて取り上げた充実した内容となっています。

 数年の間にがんのリハビリテーションに関する複数の書籍が編集・出版されていますので,この機会にあらためて読み比べてみました。本書では,従来の各職種の専門性からみた知識や役割を並列的に整理するのではなく,対象者の病期と症状を基軸として,そこに多くの専門家がいかにかかわるのかについて,職種を主語にすることなく記載が進められている点は特筆されます。多職種連携・チーム医療の本質が見事に具現化...

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