MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2018.07.02
Medical Library 書評・新刊案内
《標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚障害学 別巻》
脳画像
前田 眞治 執筆
《評 者》吉野 眞理子(筑波大大学院教授・言語病理学)
初学者にうってつけの脳画像の入門書
評者は,筑波大東京キャンパスにある人間総合科学研究科生涯発達専攻リハビリテーションコースという社会人を対象とした大学院に勤務し,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のほか,看護師・保健師,社会福祉士・精神保健福祉士・ソーシャルワーカー,障害者職業カウンセラー,特別支援学校教員など,リハビリテーションにかかわる幅広い分野で働く社会人大学院生の教育に携わっている。その中で「高次脳機能障害リハビリテーション」という授業を担当しているが,バックグラウンドの異なる学生たちに脳の構造と機能をわかりやすく講義することに苦労している。高次脳機能障害を理解する上で,脳画像は欠かせないが,手頃な参考書が少ないのも悩みの一つである。「リハビリテーションに必要な脳画像の見かたをやさしく解説した入門書」と銘打った本書は,まさに初学者にうってつけの一冊である。
本書の特色は,単に画像の読み方を解説するのではなく,背景にあるメカニズムを説き起こすことにより,なぜこのように見えるのかが理解できるように工夫されている点である。第3章「1 各スライスの見極め方」では,各スライス面の目印となる特徴が提示され,重要な部位がいろいろな撮像法でどう見えるかが対比できるように配置されている。随所にわかりやすい図版があるのも親切である。さらに,血管支配領域とブロードマン領野が水平断の各レベルでどのように配置されるかも図示される。リハビリテーション分野で関心の高い運動野・感覚野の見極め方,言語野の見極め方もわかりやすい図を駆使して示される。
脳画像は,脳の各部位の機能を理解していると,読み解くことへの興味が湧く。第4章「脳の機能局在」では,脳の各部位が担う機能と損傷された場合に出現する可能性のある症状,それらの検査法がコンパクトに示されている。画像から症状を推定して臨床に役立てる,逆に症状から画像を探るという過程を積み上げることで,高次脳機能障害への理解が深まる。疾患別の各論では,症例ごとにCT,MRIの各種画像が並べて示され,モダリティや撮像法の違いによって,また病期の違いによって,所見がどう異なって見えるのかが解説されている。脳血管障害に加えて,頭部外傷,脳腫瘍,認知症,神経難病などの疾患も網羅され,豊富な実例とともに解説されているのは類書にない特色である。
これから脳画像を学ぶ学生のみならず,臨床に出てから座右に置いて参照するにも役立つであろう。最近脳機能に対する関心が高まっている特別支援教育領域の教員や研究者にも推薦したい。
B5・頁176 定価:本体3,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03250-6


吉村 知哲,田村 和夫 監修
川上 和宜,松尾 宏一,林 稔展,大橋 養賢,小笠原 信敬 編
《評 者》中島 貴子(聖マリアンナ医大教授・臨床腫瘍学)
「抗がん薬以外の原因を考慮すべき」疾患・病態,症例を記載
従来の殺細胞性抗がん薬に加え,分子標的治療薬,さらに近年では免疫チェックポイント阻害薬も数多くのがん種で使用可能となっている。それぞれの単剤での使用だけでなく,併用療法ではカテゴリーを超えた薬剤同士の組み合わせが治療成績のさらなる向上を可能としている。しかしそれは同時に多様な副作用に対応しなければならないことを意味する。
副作用管理に関する書物は多く存在する。がん薬物療法に従事し始めたばかりのころは,その類をたくさん購入し,外来・病棟での診療中に大変お世話になった。しかし実際の医療現場には書物だけでなく先輩の医師がいて,問診,病態のアセスメント,原因の特定と対策など,豊富な経験に基づいたアドバイスに多く助けられたものである。今ではがん薬物療法の領域ではチーム医療が急速に進み,そのような役割はむしろ薬剤師や看護師などのメディカルスタッフがこなしている場合も多いのではないだろうか?
本書の最大の特徴は,「抗がん薬以外の原因を考慮すべき疾患・病態」にまで目が向けられていることであろう。症例提示においても,「抗がん薬の副作用が疑われた症例」と,「抗がん薬以外の原因が疑われた症例」の両者が示されているのは大変珍しい。「がん」を診察するのではなく,「がんを有する患者」を診察することの重要性が,本書においては一貫して伝わってくる。副作用に関する「辞書」を超え,チーム内で症例カンファランスをしているような感覚を与えてくれる。
もう一つの本書の特徴は,「執筆者が全て薬剤師である」ということではなかろうか? 原因薬剤の特徴だけでなく,詳細な病状聴取のコツや,前述した副作用以外の可能性についての考察など,経験を積んだ腫瘍内科医が読んでも改めて自身の診療の不足を再確認させられる内容を薬剤師が執筆している。日本のがん薬物療法におけ...
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