医学界新聞

寄稿

2018.07.02



【視点】

日本小児科学会発の予防接種教育ツール活用を

齋藤 昭彦(新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野 教授)


 皆さんご存じの通り,国内の予防接種を取り巻く環境はこの10年で大きな変化を遂げた。海外からのワクチンを中心に,多くの新しいワクチンが導入され,一部は定期接種化されて疾患の疫学を変えている1)。そして,ワクチンで予防できる病気が減少している。

 ワクチンで予防できる病気から子どもたちを守るには,特に乳幼児期に,多くのワクチンを複数回接種する必要がある。その接種を確実に受けるためには,保護者の予防接種に関する正しい理解が必要だ。ワクチンで予防できる病気が減少することでワクチンの効果が見えにくくなる一方,インターネット上にはワクチンに関するさまざまな情報が氾濫している。誤った情報によってワクチンに疑問を持つ保護者が増えることで,今後Vaccine Hesitancy(ワクチン拒否)の運動の増加が予想される。その対策として,前もって正しい情報を用いた継続的な予防接種教育が重要になる。

 予防接種教育先進国の米国では,米疾病予防管理センター(CDC)が発行するVIS(Vaccine Information Statement)2)を接種前の全ての被接種者に配布することが法律で義務付けられている。そこには,ワクチンの効果,副反応などが平易な表現でまとめられているが,文字だけの記載であり,決して評判が良いとは言えない。そこで,VIS以外にも,その情報に基づいた予防接種の教育活動がさまざまな方面で行われている。信頼できるリソースが根幹にあるからこ...

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