研修設計は,看護師としての成長にもなる(政岡祐輝)
連載
2018.03.26
院内研修の作り方・考え方
臨床現場で行われる研修会や勉強会をより効果・効率・魅力的な内容にするために,インストラクショナルデザインを用いた研修設計をご紹介します。初めて教育委員を任された「はじめさん」,頼れるベテラン看護師「ゆう先輩」と一緒に,教育を専門に学んでいなくても自信を持って教えられるスキルを学びましょう。
【第12回(最終回)】研修設計は,看護師としての成長にもなる
政岡 祐輝(国立循環器病研究センター副看護師長/熊本大学教授システム学研究センター連携研究員)
(前回よりつづく)
システム的アプローチを根付かせるには
(教育担当師長) はじめさん,1年間研修担当お疲れさま。はじめさんがかかわってくれた研修を受講したスタッフは,なんだか最近楽しそうに働いているわ。
(はじめさん) 師長さん,ありがとうございます。大変でしたが,研修中の受講生のいきいきした顔に元気をもらいました。一方で,毎回しっかり評価してきたので課題も山積みです。来年度も,ぜひ教育委員を継続させてください!
(教育担当師長) もちろんよ。来年度は,はじめさんが教わったことを周りにも教えながら研修を企画してね。
学習とは,「自ら進んでわからないことに挑戦しようと思う自発的な行為」であり,「モノや人や事柄と出会い,対話し,他の人の思考や感情との出会いを楽しむ行為」1)とも言われています。
効果的で魅力的な研修を提供していれば,スタッフの現場での意識や行動の変容とともに,スタッフがいきいきと働く姿が見られるようになります。組織にとって意義のあることですし,研修設計担当者自身のモチベーションアップにもなります。とはいえ,効果的で魅力的な研修を作り上げるのは大変なことですよね。本連載で紹介してきたインストラクショナルデザイン(ID)を知ったからといって,一筋縄にいくものではありません。IDの根幹は,システム的アプローチを回すこと。簡単に言うと,研修設計のPDCAサイクルを回すことです。ここでは,分析(Analysis),設計(Design),開発(Develop),実施(Implement),評価(Evaluate)の頭文字を取った図のADDIEモデルが参考になります2)。
図 ADDIEモデル(文献2より改変) |
院内研修の担当者の多くは,病棟で看護実践を主務とする看護師です。患者優先であり,研修設計は時間外の活動というのが実情ではないでしょうか。そこで,前回(第3262号)示したように研修は必要なものだけに絞り,最初からいきなり理想の高いものをめざさないことです。ADDIEモデルを回して,前回より今回,今回より次回と,少しずつ改善していけると良いでしょう。システム的アプローチが根付けば高い効果が得られ,きっと魅力的な研修となるはずです。どうやって研修を行うか,どんなスライドを使うかなどの実施方法の考案にばかり時間を費やすのではなく,明確な目標の設定,評価方法の検討に十分な時間をかけ,それから実施方法を考えることがポイントです。そして,設定したゴールを達成できたかを常に評価しながら徐々に改善させていくことが何より重要です。
研修の設計で自身も成長する
皆さんが,学生時代から現在まで受けてきた授業や研修は,学習効果や効率が高いと感じられるものでしたか...
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院内研修の作り方・考え方(終了)
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