「臨床研究法」施行に備えよう(藤原康弘)
寄稿
2018.01.15
【寄稿】
「臨床研究法」施行に備えよう
藤原 康弘(国立がん研究センター 企画戦略局長 兼 中央病院副院長(研究担当))
「臨床研究法」1)が2017年4月に公布され,18年4月までの施行が予定されている。厚生科学審議会臨床研究部会(以下,部会)2)による施行規則(省令)の内容検討は17年11月30日に区切りがつき,今後はパブリックコメントを経て施行に向かう。本稿では,現時点で判明している臨床研究法の概要と省令に盛り込まれる事項を解説する。
対象となる特定臨床研究とは
臨床研究法の対象となる主たる臨床研究は,「特定臨床研究」と呼ばれる。特定臨床研究とは,以下のいずれかに該当する臨床研究を言う(第1回部会)。
①医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下,薬機法)における未承認あるいは適応外の医薬品等(医薬品,医療機器,再生医療等製品)を用いて,その有効性または安全性を明らかにする研究(臨床研究)で,治験以外のもの
②医薬品等製造販売業者またはその特殊関係者から資金の提供を受けて実施される臨床研究 |
治験や手術,手技の臨床研究は対象とされず,体外診断薬も対象にならない。なお,「特定臨床研究」という用語は,医療法上の臨床研究中核病院の認定要件にも出てくるが,臨床研究法での定義とは異なるため,今後用語整理がなされる。また,省令・通知において,努力義務の対象がどう扱われるかに注目が必要である。
臨床研究実施基準は?
特定臨床研究の実施には,法の定める臨床研究実施基準に従うことが求められている(以下で解説する認定臨床研究審査委員会で審査される)。実施基準は次の6つが省令で定められる。
①臨床研究の実施体制[研究責任医師の責務,実施医療機関の管理者等の責務,研究計画書の内容,疾病等(有害事象)発生時の手順書など]
②実施医療機関の構造設備(救急医療に必要な施設または設備) ③臨床研究の実施状況の確認(モニタリングと監査) ④研究対象者に対する補償措置 ⑤臨床研究に対する関与(利益相反管理) ⑥その他臨床研究の実施に必要な事項(認定臨床研究審査委員会への意見への対応,臨床試験登録,総括報告書作成,苦情および問い合わせを受け付けるための窓口の設置や手順の策定など) |
現行の治験や「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(以下,倫理指針)」下で臨床研究を実施している医療機関であれば,基準をクリアすることに大きな問題はないと思われる。
「認定臨床研究審査委員会」の審査が必要
特定臨床研究の実施手続きは,まず認定臨床研究審査委員会に,研究計画書(プロトコール)から主に抜粋した形で作成される「実施計画」や研究計画書,同意・説明文書,利益相反管理に関する情報等を提出し,審査を受ける。なお,臨床研究の倫理指針では,研究責任者から研究実施許可を求められた機関の長が「施設の研究倫理審査委員会(IRB)」に諮問し,審査を受ける流れであったが,特定臨床研究では研究責任者が「認定臨床研究審査委員会」(セントラルIRBと理解するとわかりやすい)に申請し,「認定臨床研究審査委員会」による審査・意見を受け,指摘を反映した実施計画を研究責任者が厚労大臣[実際には地方厚生(支)局になる]に提出という流れとなる。なお,研究責任者は,認定臨床研究審査委員会の意見を聞いた後に,実施医療機関の管理者(臨床研究法では「長」ではなく「管理者」と表記されている)に「実施の承認」を得ることとされているが,厚生局への提出の前後,どの時期に得るかは現時点では不詳である。
認定臨床研究審査委員会の構成は,以下などが要件となっている。
①5名以上の委員で,「医学又は医療の専門家」,「臨床研究の対象者の保護及び医学又は医療分野における人権の尊重に関して理解のある法律に関する専門家又は生命倫理に関する識見を有する者」,「一般の立場の者」から構成
②男性および女性がそれぞれ1名以上 ③同一医療機関(当該医療機関と密接な関係を有す |
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