医学界新聞

寄稿

2017.05.15



【視点】

日本医学教育評価機構が国際認証を受ける

奈良 信雄(日本医学教育評価機構(JACME)常勤理事/順天堂大学特任教授)


 「2023年以降,国際基準で認定された医学部以外の出身者には米国で医師になる申請資格を与えない」。2010年9月の,米国の外国人医師卒後教育委員会(ECFMG)による通告,いわゆる“2023年問題”は,日本の医学教育界に衝撃を与えた1)。それから6年半がたった2017年3月18日,日本医学教育評価機構(JACME)が世界医学教育連盟(WFME)から国際評価機関としての認証を受けた。

“2023年問題”の解決へ新たなスタート

 2010年のECFMG通告を受け,わが国の医学部も早急の対応を迫られた。全国医学部長病院長会議に「医学教育の質保証検討委員会」を発足させ,さらに文科省の大学改革推進委託事業を受けて調査研究を行い,医学教育評価制度の確立を検討することになった。

 ECFMGの通告に適合するには,WFMEが認証した公的な評価機関が,国際基準に基づいて医学部の教育を評価し認定することが求められる。そこで,医学教育を評価するための体制,評価法,評価基準,評価者養成,認定法等について検討を重ねた。策定した評価法,評価基準に基づき,2013年から2017年1月までに合計18医学部が文科省事業の試行として医学教育評価を受けた。

 政府と全医学部によって認知された公的な機関が評価を実施する必要性から,2015年12月1日にはJACMEが一般社団法人として発足し,国内の全医学部が正会員として参加している。

 JACMEによる医学教育評価制度は,2016年9月の東京医大評価においてWFME委員の査察を経て,このたびWFMEから世界で7番目の認証を受けるに至った。認証期間は10年である。

 JACMEがWFMEの認証を受けたことで,2017年4月からは医学教育分野別評価の正式実施が始まる。受審校は評価基準2)に基づいて自己点検評価を行い,報告書をJACMEに提出する。JACMEの評価委員は自己点検評価報告書を精査した後で5日間の実地調査を行い,受審校の医学教育を評価する。優れた点,特色ある取り組みを評価し,改善が必要な事項があれば指摘する。評価に基づき,7年間の認定か,改善の指摘事項が多い場合には3年間の期限付き認定が行われる。認定を受けた医学部は,米国の国際医学教育研究推進機構(FAIMER)に登録され,それをもって卒業生はECFMGに申請できる仕組みとなっている。

 JACMEによる医学教育評価はECFMGの通告に適合することが最終目的ではない。むしろ,この機会を利用して,日本の医学教育全体のレベルアップを図ることこそが重要だととらえている。日本の医学・医療のレベルは世界に冠たるものである。しかし,日本の医学部教育を国際基準から振り返ると,改善すべき課題は残されている。学習成果基盤型教育,統合型教育,診療参加型臨床実習,学生の自己学習,学生の評価,海外交流,PDCAサイクルによる継続的改良などが挙げられる。

 これらの課題を克服することで,わが国の医学部教育をより一層向上させ,今後のグローバル化にも対応していくことで,国内のみならず国際社会からも信頼を得ることが期待される。

参考文献
1)奈良信雄.2023年問題を受け,日本医学教育評価機構発足.週刊医学界新聞.3166;2016.
2)日本医学教育評価機構.医学教育分野別評価基準日本版V2.11:世界医学教育連盟(WFME)グローバルスタンダード2015年版準拠.2017.


奈良 信雄
1975年東医歯大医学部卒。放医研,トロント大オンタリオ癌研究所研究員などを経て,94年東医歯大教授。2017年4月より現職。

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