医学界新聞

2017.04.10



金原一郎記念医学医療振興財団助成金


第1回生体の科学賞授賞式

小松英彦氏
 第1回生体の科学賞授賞式が3月13日,医学書院(東京都文京区)にて開かれた。本賞は,金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=東大名誉教授・野々村禎昭氏)の基金をもとに,2016年度に創設。基礎医学医療研究領域における独自性と発展性のあるテーマに対して,研究費用全般への支援を目的に,1件500万円の助成を行うものである。記念すべき第1回は,小松英彦氏(自然科学研究機構生理学研究所)による「充填知覚研究に基づく階層的知覚情報処理機構の解明」の研究が受賞した。

 近年,失明の原因第1位となっている緑内障では,自覚症状の欠如が早期発見,早期治療の壁と考えられている。その背景の一つには,視野が欠損している部分を知覚的に補う「充填知覚」がある。小松氏らの研究は,充填知覚の神経メカニズムの解明を目的とし,先行研究から導かれた新仮説を電気生理学的手法を用いて検証する。これにより,緑内障などで生じる視野欠損と自覚症状の関係について,根本的な理解が深まるものと期待される。

 選考について野々村氏は,「応募者のレベルが高く,全91通からの選考は困難なもので,研究の独創性を新しい観点から追究しているという点を評価して授賞者を決定した。成果が一区切りしたところで,本賞の名前の由来となった『生体の科学』誌に執筆してもらえればと考えている」と講評した。受賞のあいさつに立った小松氏は,「近年の電気生理学の発展により本研究が可能になった。助成をもらったことで,研究の励みとなる」と語った。

第31回研究交流助成金・第31回留学生受入助成金贈呈式

 金原一郎記念医学医療振興財団は3月10日,医学書院にて第61回助成金贈呈式を開催した。同財団は基礎医学の振興を目的に,年に2回,助成金を交付している。下期である今回は,海外で行われる基礎医学医療に関する学会等への出席を助成する研究交流助成金と,基礎医学医療研究を目的に日本へ留学する大学院生等を助成する留学生受入助成金が交付された。今回の助成対象者は32人で,対象者を代表して贈呈式には大野由夏氏(明海大),他3人が出席した。

 開会に際し,金原優同財団常務理事(医学書院代表取締役社長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された同財団の概要を紹介。「本助成の審査に通ったということは,研究の成果が認められたということ。助成金を有効に使い,さらに優れた研究に励んでいただきたい」と語った。

 交付対象者を代表して大野氏があいさつに立った。氏らは,健常者に冷温交互刺激を与えると,冷刺激時に温痛覚,温刺激時に冷痛覚が生まれるなどの錯感覚(thermal pain illusion;TPI)が生じることを発見し,TPIの有無と内因性疼痛調節機構の1つ,conditioned pain modulation(CPM)の関連や個人差も見いだした。本研究の進展は,疼痛発症機序の解明や慢性疼痛の診断,疼痛のテーラーメード治療につながるものとして,氏は,「世界の疼痛研究の第一人者と議論し,新たな足掛かりをつかみたい」と抱負を述べた。

*「生体の科学賞」などの同財団助成金の詳細については,同財団助成事業募集要項を参照されたい。


●金原一郎記念医学医療振興財団

第31回研究交流助成金・留学生受入助成金交付対象者

No. 氏名 所属機関(略称) 助成対象
1 アヌプラタップ トマール 理研/脳科研セ/神経回路・行動生理学研究チーム 春季海馬研究会議
2 石塚 匠 宮崎大/医学部/機能制御学講座/物質科学分野 第6回四重鎖核酸国際学会
3 WULAER BOLATI 名大/医療薬学 神経科学学会 2017年 年会
4 大野 由夏 明海大/歯/病態診断治療学講座/歯科麻酔学分野 第10回欧州疼痛学会
5 表 紀仁 名大/呼吸器内科学講座 アメリカ呼吸器学会年次総会
6 金澤 裕樹 徳大/医歯薬/医用画像情報科学分野 第25回国際磁気共鳴医学会学

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