MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2017.03.13
Medical Library 書評・新刊案内
伊藤 壽一,大森 孝一 監修
楯谷 一郎 編
《評 者》村上 信五(名市大教授・耳鼻咽喉・頭頸部外科学)
機能的かつ実践的なマニュアル
本書は京大耳鼻咽喉科・頭頸部外科で,15年前から教室員や医学生,看護師などのメディカルスタッフを対象に行ってきたモーニングレクチャーやイブニングレクチャーの資料を基に作成されたものである。
“何事もまずは形から入る”とはよく言ったものである。本書はコンパクト! 縦18 cm×横11 cmで,iPhone 7 Plusよりは大きいがiPad Miniよりは小さい。白衣のポケットにも収まり,片手でページをめくることができる。厚さはiPadの2倍あるが,重さはiPadより軽く,ジャスト300 gである。光沢のある上質紙を使用しており,400ページ超ものコンテンツが収まっている。一目見ただけで,手に取って中身をのぞきたくなる。
本書作成の趣旨が「臨床現場で役立つ」であることからして,いわゆる教科書とは一線を画した機能的かつ実践的なマニュアルになっている。まず,表紙裏の見返し部分に各章の大項目が記載され,めくりの部分に連結しているため,必要な目次を探しやすい。構成としては,第1章「所見のとり方」では,耳,鼻,口腔,咽頭・喉頭,頸部の基本的な診察方法とチェックポイントがシェーマと写真を用いて簡潔に記載されている。また第2章「主訴からみた診療の流れ」では,耳鼻咽喉科・頭頸部外科疾患の主たる臨床症状を取り上げ,問診,視診,触診,検査(血液,生理,機能,画像)など「まずやるべきこと」をリストアップしている。そして,「診療の流れ」として診察・検査の手順をフローチャートで示し,最後に「想定される主な疾患」として鑑別すべき疾患を挙げている。まさに,患者が受診して診察を受け,診断がなされていく日常診療の過程が機能的かつ実践的に実施できるシステムになっている。
そして第3~7章では,耳,鼻副鼻腔,口腔・咽頭,喉頭,頭頸部領域の疾患において,行うべき諸検査の具体的な実施手技と所見の読み方について解説し,診断のポイントと治療方針が詳細に記載されている。加えて各領域における代表的手術の術式や周術期の管理も簡潔にまとめられているが,特に頭頸部癌では腫瘍摘出後の再建や放射線治療,化学療法の実際と全身管理,緩和医療に至るまで詳細な解説がなされている。患者を問診し,所見をとり,検査を通して診断し,治療を行うという一連の診療が,無駄なくシステマティックに行えるのが本書の特徴と言える。さらに第8章「耳鼻咽喉科と感染症」では,耳鼻咽喉科領域の感染症に対する主たる原因菌と抗菌薬の選択,周術期・術後の感染予防・対策を取り上げ,妊婦に対する薬剤処方の注意点についてもコラムで解説している。
そして末尾の付録では,①頭頸部癌,甲状腺癌のTNM分類,②耳鼻咽喉科専門研修プログラム,③各疾患のガイドライン・治療指針の検索リストが掲載されている。また,本書全体を通して要所でMemoや参考図書が記載されているので,さらに深く詳細を調べたいときに役立つ。
以上のように,本書には耳鼻咽喉科の全領域において,耳鼻咽喉科専門医に必要な知識と診療の必須事項がコンパクトに収載されている。まさに「臨床現場で役立つ」書であり,医学生や研修医はもちろん,耳鼻咽喉科専門医をめざす専攻医にとって必携の書と言える。
B6変型・頁432 定価:本体4,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02526-3


角田 博子,尾羽根 範員 著
《評 者》森本 忠興(徳島大名誉教授/NPO法人マンモグラフィ検診精度管理 中央委員会前理事長)
所見を拾い上げる「目」を養う書
このたび,角田博子先生・尾羽根範員先生の著書『乳がん超音波検診――精査の要・不要,コツを伝授します』が医学書院より刊行された。マンモグラフィ検診の精度管理にかかわってきた者として,本書は超音波検診の精度管理の著書として大変に期待するものである。本書に対する推薦文を述べる。
マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(精中委)は,1997年の設立以来,マンモグラフィ精度管理について長年にわたり携わってきた。2013年3月より,超音波関連3学会からの要請により,将来を見越して超音波検査の検診・精密検査に関する精度管理システムづくりも精中委管轄で行うこととなり,名称も日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機構)と変更した。超音波検査の精度管理については,2004年に日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)が『乳房超音波診断ガイドライン』(南江堂)を出版し,改訂が重ねられ普及に努められてきた。このガイドラインの中に超音波検診の項目があり,角田博子先生・尾羽根範員先生がその責任者を務められ,超音波検診の要精検基準の作成に携わってきている。
本書の第I章においては,癌検診の基本が述べられている。対策型検診・任意型検診の違い,癌検診の利益・不利益,不利益の種類,過剰診断,マンモグラフィと超音波検査の総合判定などである。
本書の第II章では,超音波検診の要精検基準に従い,所見を拾い上げる「目」を養うための判別のコツ・ポイントが詳細に述べられ,さらに実際の症例が提示・解説されている。初心者や熟練者にも良いメッセージとなリ,役立つものと思われる。
2015年,Lancet誌に発表されたJ-STARTの結果から,40歳代の女性に対するマンモグラフィ・超音波併用群では乳癌発見率が1.5倍高い。特にI期の浸潤癌が約2倍の検出,0期の非浸潤癌は同率の検出(27%前後)などの結果...
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